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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
四日目
60/109

05-06 知念はなの思惑。

 その日の一時限目、知念はなは誰もいない教室の中で教科書やノートを広げて自習をしていた。

 この倉石市立中央は、一応進学校ということになっているし、授業の進み方も中学とは比較にならないくらいに早い。予習や復習をしっかりとついていけないようになっていた。

 それに加えて、このゲームである。

 ゲームに関連して、知念はもう何日もまともに授業を受けていない。

 一日寮内の部屋でのびていた昨日はともかくとして、一昨日などもスキル『ぼっち王』を使用して教室内に潜伏してはいたのだが、授業以外のことに気を取られていて、内容まではおぼえていない。

 このままでは、ゲームが終わった途端に落ちこぼれる可能性も十分にあり得たし、まだまだ高校生活がはじまったばかりの今の時点からそうなるのも避けたかった。

 結局、こうして開いている時間をあてて地道に学習していくしかないのだった。


 そうこうするうちに一時限目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、それからしばらくして、同じクラスの生徒たちがぞろぞろと教室内に入ってきた。

 ……なんだって、今頃……。

 と、知念は、怪訝に思う。

 今朝の、昇降口の騒ぎが原因であれば、校内で放送とかがあって、このクラスだけに留まらない影響があるはずであったが……知念の知る限り、学校側はそんな措置を取っていなかったはずだ。

 昨日、学校に来なかった知念は、この一年D組の教室が立ち入り禁止になっていた事情を知らない。

 人が増えるにつれて、教室内はガヤガヤとした普段の活気を取り戻していった。

 そんな様子をみながら、知念は、

「……まあ、いいか」

 とか、思う。

 わからないことは、わからない。

 考えてもわからないのなら、考えるだけ無駄だ。

 あるいはこれから、その謎を知る機会があるのかも知れない。

 が、今の知念にとって、その情報を探ることは、優先順位を考えると比較的下位に位置する。

 それよりも、ゲームの趨勢を左右するような情報を探ることの方を優先すべきだろう。


 知念は、改めて騒がしくなってきた教室内を見渡す。


 知念の席は、最前列。廊下側から三番目の席だった。

 知念からみてすぐ右が、浜路透理の席。すぐ左が、委員長の三峰刹那の席になる。

 そして、知念のうしろの席は矢尻知道であった。

 ちなみに、最前列の一番右端は西城沙名であり、一番左端、窓側は内膳英知の席となる。

 内膳と三峰の間は、井崎巴という女子が座っていた。

 基本、この学校では、男子と女子が交互に座るようになっているのであるが、それ以外の席順は入学したばかりの頃のホームルームのときにくじ引きで決めている。

 決まった当初は、知念自身も「最前列の、やや中央より」というこの席を好きにはなれなかったものだが、今ではもう慣れてしまった。


 背後を見渡して、知念は、それまで注目してこなかったある生徒のところで視線を止める。

 木ノ下紬。

 今までは重視してこなかったが、スキル『スカウター』の機能によって確認すると、あの三峰に匹敵するくらい、数多くのスキルを所持している。

「おそらく、初日のテストプレイのときに、今朝も昇降口を吹き飛ばした例のスキルで周囲の生徒たちを蹴散らしでもしたんだろうな」

 と、知念は思った。

 その証拠に、現在木ノ下が所持しているスキルは、木ノ下の席の前後左右に居た男子生徒たちのものばかりだった。

 テストプレイのとき、知念は自分のスキル『ぼっち王』を駆使して、あのとき一番安全な場所、スキル『エアタンク』を展開した三峰刹那の真うしろに移動して、そこで高見の見物を決め込んでいたものだが、教室のうしろの方で爆発音がしたのは記憶している。

 あのときは、木ノ下のスキル『パニックボム』もレベルが低かったからあの程度の被害で済んだのだろう。

 しかし、今の木ノ下は、改めていうまでもなく軽視できない存在になっていた。


 が……。

 しばらく考えた末、知念は木ノ下のことをしばらく放置しておこう、と、そう考え直す。


 多くのスキルを持っているから……ではなくて、ただひとつのスキル『パニックボム』の破壊力を、知念は恐れた。

 その名称から察するに、スキルの持ち主の精神が不安定な状態になったときにでも、自動発動するのではないか。

 だとすれば、下手に触らない方が無難な相手であった。


 いや、あるいは……。

 知念は、人知れず、にやりと笑う。

 あるいは、さり気なく木ノ下を操って、別の生徒たちを襲わせる……という手もある。

 知念がスキル『ぼっち王』を発動したまま、他の生徒たちがぶつかり合うようにしむけることは、以前から検討していた手段でもあった。

 スキル『パニックボム』の性質を考えると、これはその手段を使うのに格好の相手なのではないか。


 次に、知念は別の生徒に目をむけた。

 昨日、新たにスキル『シーフ』を奪取した、林道鈴。

 林道鈴の席は、前から二番目の列の、一番窓側。内膳英知のうしろに位置していた。

 小柄で無害そうな、のほほんとした表情の林道であったが、知念のスキル『スカウター』は、彼女がすでにふたつのスキルを取得していることを証明していた。

「……この子がねえ」

 と、知念は感心をする。

 林道が最初から持っていたスキル『パラライズ』のレベルはまだ一桁であったが、『シーフ』のレベルは、いつの間にか七十を越えている。

 ……昨日の今日で、ここまでレベルアップしているとは。

 というのが、知念があきれた理由だった。

 あるいは、『シーフ』という名称からして、なにかを……たとえば、他人の経験値などを奪うスキルなのかも知れないな。

 と、知念はそんな想像もしてみる。


 それから、知念はもう一人、昨日まではさほど注目していなかった生徒に視線をやる。

 芦辺素直。

 芦辺は、教室のかなりうしろの席に座っていた。

 芦辺のスキル『自動筆記』というものが、実際にどんな機能を持つスキルなのか知念には想像できなかったが、初日に配られたプリントが正確だとすれば、一度は渡来に奪われた(盗まれた?)ものを、昨夜、取り返した形となっている。

 立て続けにあのアナウンスが聞こえてきたことから考えても、この芦辺と林道とが、そのときに手を組んでいたのはまず間違いのないことだろう。

 第一、あのぼややんとした林道が単独で誰からスキルを奪取できるとも思えない。


 しばらく考えたあと、

「……この二人は、できるだけはやく引き離すべきだな」

 と、知念は結論する。

 できれば、両者からスキルを奪う形で。

 林道が持っているふたつのスキルについては、なんとなくその機能が推察できるのだが、芦辺のスキル『自動筆記』についてはまるで見当がつかない。

 さて、どちらから先にスキルを奪うのか……と考えれば、これは芦辺の『自動筆記』をまず最初に狙うべきだろう。

 林道の方は、なにかの間違えで反撃を受ける可能性すらあるのだが、芦辺のスキルは不意をつけばどのようにでもなりそうな気がした。

 芦辺自身が、男子にしては貧弱な体型で襲うのにも心理的な抵抗がない、ということもあったのだが……それ以前に、早めに林道から知恵袋を奪っておきたかった。

 林道が持っているスキルは、現在のところまだふたつだけなのであるが……背後で芦辺が糸を引いているとなると、早めに無力化しておいた方がいい。

 

「……まず、芦辺。

 次に、林道」

 知念はなは、「対処すべき生徒のリスト」の優先順位を、そう決定する。

 だからといって、今すぐこの場で……などと大胆なまねをするつもりはなかったが。

 なにせこの教室には、三峰刹那や自称魔法少女の四人組、それに「あの」内膳英知がいるのだ。

 この場で下手な真似をして、そうした強敵たちに囲まれでもしたら目も当てられない。

「三番目に、内膳英知」

 内膳のスキル『デリンジャー』の有効性は、知念自身がその身で体験している。

 今は、知念自身もスキル『見取り稽古』によってその『デリンジャー』のコピーを持っている身ではあるのだが、『見取り稽古』によって取得したスキルの常としてレベルをあげることができない。

 内膳の『デリンジャー』も、それも、レベルアップが可能な本物の『デリンジャー』も、できるだけ早めに入手しておきたかった。


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