49 いまだに見つからない!
「え、居場所がわからない?」
「えぇ、アイヴィーの居場所は……」
途端顔を顰めるミラ。居場所が分からないんじゃ、どうしようもできないこの現状。すっかり夜の帳が下り、青い月が道中を照らす。
まさか、国王陛下直々にここはやって来たのに、まさかこうなるとは。夢にも思ってなかった。
「ですが、何回か同じ部屋なったことがあるんです」
「同じ部屋?」
「はい、その時は侍たちの住んでいた部屋……。そこに監禁されていました」
(え、嘘やろ。それはあかんて。監禁? やっば)
あまりにも最低すぎて、声に出すことができなかった。ただ呆然とその事実を聞いているのみ。だが、分かるとしたら、ミラの友人が“アイヴィー”ということは分かる。
蔦かな?
アイヴィーの花言葉、なんかあったはずなんだけど、忘れた。
(ともかく、その子を探すためにはどうするべきか……。下手に探偵の様に情報を聞き込み……なんてしたら、またミラが狙われかねないし)
先まで見越して行動しないと、行けなさそうな予感がする。つまりは慎重に……ということだ。
とりあえず、対策を考えないとどうもこうも出来なさそうだ。動くことができなかったら、その子を助けることもできない。その子を助けないと、ミラの母親が死ぬ。
(母親が死ぬ……ね。母親が死んだら、相当寂しい……いや、違う。家族が死んだら、悲しいんだ………)
俺はふと、前世を思い出す。前世で親を亡くしたこと、それが何よりの心の傷であった。
抽象的すぎて、よくわからないこの感情。まるで、ガラスが割れた様な……。そんな感覚。
ガラスが割れると、元に戻すことはできない。その当時の感情が、渦の様に巻き起こる。
心が、心臓が、ぎゅっと締め付けられる様な……。
だから、助けたいって………思ったのかもしれない——。
♢♢♢
夜中から朝方まで探すのは、至難の業だった。どこにいるか、それが分からない以上、下手に大声を出すわけにはいかない。近所迷惑になりかねない。
いや、それを言ってる場合か?
と思ったが、その侍たちがどこで聞いているかも分からない以上、下手に動くことも躊躇しないといけない。
(くそ、朝日が昇った……。早く見つけないといけないのに………)
ずっと起きていたせいか、眠気が襲ってくる。3人が起きる前にさっさとアンナさんと戻り、ミラとは一旦別れた。
こういう一夜漬けにも慣れているのか、アンナさんはずっと起きていた。とにかく、俺も起きないと……と思いながら顔を洗いに出かける。
(ハァ…、眠い)
顔をバシャバシャと洗ったは良いものの、眠気が消えることはない。おまけに体はだるいし、汗でぐっちょりだし。
ほんと、最悪だ。
(ハァ、こりゃ、また温泉に入らないとな)
おそらく今の時間帯は7時ぐらい。時計という道具がないため、正確な時間も日時も分からない。
とにかく、朝が昇った。というのはわかる。
♢♢♢
「朝風呂って結構いいなぁ」
全身に噴き出た汗が綺麗さっぱり流されていく。
だが、温泉内は広いため、俺一人だけというのもなかなか寂しい。
(ここって露天風呂とかあんのかなぁ……)
とかぼやきながら、俺は朝風呂を堪能した。
♢♢♢
あれから1時間入り、あの時が7時ならば、今は8時。普通に長風呂した。
お陰でのぼせてしまった。
(ハァ、あっつぅ……)
手でパタパタとさせ、部屋に戻るともう既に3人も起きていた。
「あ、おはよう! ヴィーゼさん!」
「朝風呂ですか? いいですね」
「遅いわよ、全く……。アンナもまだ寝てるし」
(え、あれから寝ちゃったの?)
あれだけ「何時間も起きてられます!」ていう余裕そうな顔していたのに……。
俺はというと、温泉に入ったからか、眠気は少しはマシになった。
「じゃあ、私たちも着替えよっか!」
「そうだね。ヴィーゼさんも着替えなくていいんですか?」
「あ、うん。そうだね」
いくら旅荘に支給されている服とはいえど、やはりぶかぶかだ。早く私服……と言っていいのか、普段の服に着替えよう。
もちろん、後ろを向いて。
「……毎回思うんですが……」
「……ん?」
「どうして、ヴィーゼさんって背中を向けながら着替えてるんですか? 同性なのに……」
(そうだよね!? そんなことしなくてもいいよね!? けど俺は、男。そう、前世は中年おっさんだった。いくら、いくら幼女になったとはいえど、女子の下着姿を見るなど……! いやでも待てよ? 合法だから………、いやいやいや!)
と、何故か天使? と悪魔? が戦っていた。
♢♢♢
しっかりと普段着に着替えたはいいが、ランスから意地悪をされた。
『同性なのに、恥ずかしいの?』
『ち、違うから!』
『えー? じゃあこっち見て着替えれるでしょ?』
『いや、マジでやめて!』
そんな光景を二人は哀れみな目で見られたのは、多分。大人(?)になっても忘れない。
だが、一刻も時間は迫っている。早く、見つけ出さないと———。
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