第三章:見える数――算数というパズルの解き方(小1~小3編)
小学校に入って、算数の授業が始まった。
けれど裕太にとって、数字はただの記号だった。
「“1”って、なんで1なの? 頭の中に何も浮かばない……」
裕太は、目に見えないものをそのまま理解するのが苦手だった。
“なんとなく”ではなく、“はっきりした形”がないと、つかめないのだ。
計算カードを前に、裕太の手は止まっていた。
■ 数は「触れるもの」にする
真依は言った。
「紙の上で考えなくていいよ。まずは触ってみよう」
高野は積み木を持ってきた。
【例題①】
積み木を10個並べる
→ これが「10」
「じゃあ、ここから3個取るよ」
裕太は実際に3つ外した。
「残りはいくつ?」
「……7!」
「これが“10−3”」
裕太は目を丸くした。
「バラバラに考えなくていいんだ。取るだけで分かる」
【例題②】
積み木を5個置く
→ そこに3個足す
「全部でいくつ?」
「……8!」
「これが“5+3”」
裕太はつぶやいた。
「数字じゃなくて、動きで考えればいいんだ」
手を動かすと、不思議と頭の中も整理されていく。
それが、裕太にとって一番分かりやすいやり方だった。
■ 文章問題は「分ける」
それでも、文章題になると止まった。
「……長いと分からない」
頭の中に全部入れようとすると、すぐにいっぱいになる。
真依は紙を3つに区切った。
「一気に考えなくていいよ。分けよう」
■ 算数ステップ
① 何が分かっている?
② 何を求める?
③ どの計算をする?
■ 実際にやってみる
【例題③】
りんごが5こあります。
3こもらいました。
ぜんぶで何こになりましたか。
「① 何が分かってる?」
「5こと、3こ」
「② 何を聞かれてる?」
「ぜんぶで何こ」
「③ どうする?」
「……たす」
5+3=8
「あ、これだけ?」
「そう。文章は分ければ簡単になる」
■ ひき算も同じ
【例題④】
あめが10こあります。
4こ食べました。
のこりはいくつですか。
「① 何がある?」
「10こ」
「② 何が起きた?」
「4こ食べた」
「③ どうする?」
「……ひく」
10−4=6
「できた……」
裕太の声が少し明るくなる。
■ ミスは「ヒント」
それでも、計算は間違えることがあった。
「……また間違えた」
そのとき高野は言った。
「いいね、それ」
「え?」
「どこでつまずいたか分かるチャンスだ」
【例題⑤(よくあるミス)】
13−5=12(まちがい)
「どこがおかしい?」
「……わかんない」
「じゃあ、さっきみたいにやってみよう」
13個並べて、5個取る。
「残りは?」
「……8」
「あ、ちがう」
「そう。これは“10をくずす”のを忘れてる」
高野はノートに書いた。
【ミスノート】
・10をくずし忘れる
→ 赤で「ここ注意!」
裕太は少し笑った。
「これ、自分の攻略本みたい」
■ 算数は「ルール」でできている
裕太は、“なんとなく計算する”ことが苦手だった。
でも、“どういうルールで動くか”が分かると、一気に理解できた。
その日の夜。
裕太は言った。
「算数って、パズルみたい」
高野は静かに言った。
「できないんじゃない」
「やり方が分かれば、できる」
数字は、ただの記号じゃない。
動かせるもの。
分けられるもの。
組み立てられるもの。
教室は変わらない。
でも、見方を変えれば、世界は変わる。
裕太は、自分のやり方で、
数字の世界も歩けるようになっていった。




