102話 動揺は隠せなくて当然ですね
「ハイネ、あんまり遠くまで行くなよー」
「私もうそんな子供じゃないのよ、セリムは心配し過ぎよ」
久しぶりの遊園地にはしゃぐハイネに声はかけたものの本人はあまり気にしていない様子で、その慣れない笑顔にオレもまた本調子ではなかった。
呪いとは、魔法が確立するより前によく使われていた技法だ。
力はピーキーで使ったものの精神を蝕み使われた対象者もまた蝕まれる。
その力はほとんど現代に至るまで残っておらずかけた本人ですらないアニが解呪出来たこと事態が奇跡だった。
呪いで消された記憶は紙面に書き連ねられていた文字を消ゴムで消したようなものでその文字をもう一度まったく同じように書き直すのは難しい。
それでも書き直せないことはない。
数少ない呪いの専門家はそう判断を下した。
文字をたとえ消ゴムで消しても上からまた炭で擦れば文字の名残は浮き出てくる。
それと変わらない。
消えた記憶をより深く刺激してやればもしかしたら少しずつでも記憶が戻るかもしれない。
だからこうして遊園地に皆で来るに至った。
このグループで集まるようになってから遊園地に来たことはないがハイネが9歳になる誕生日の日はこの遊園地、スノーランドで過ごしたとアダム様から聞いている。
そしてハイネの記憶は9歳より前しか存在しない、となると当然のようにハイネの最後の記憶はこのスノーランドでの出来事だった。
だからこそそれならまずは記憶の真っ先にあるここで、一番永くいるオレたちと1日を過ごすことで記憶を刺激する、そういう算段だ。
「おいハイネ、だから勝手に行くなって」
オレは勝手にずんずんと進んでいこうとするハイネにまた声をかける。
いつものハイネもおてんばが過ぎるがこのハイネはハイネで純粋すぎて曇りがないというかなんというか、とりあえずオレを含めたほぼ全員がいつものようには対応できていないというのが、今のところの事実ではあった。




