100話 ごめんなさい誰ですか?
「それじゃあ解くよ」
「っ……」
瞬間、アニの杖から紫色の強い光が放たれて目が眩む。
「……」
目映いほどの光がハイネの胸元に集束していき大きく膨らむとそのまま音も立てずに弾け飛ぶ。
「ん……あれ、私……」
皆が皆次の展開を伺うように黙り込む中ふと、眠たそうに目を開いたハイネがベットから起き上がる。
「ハイネ! 起きたか! 身体は、変なとことか痛いとことかないか……?」
オレは慌てて労るようにハイネの身体を支える。
ずっと眠っていたんだから身体のどこかに異変があってもおかしくないし何より無理やり解いた呪いの副作用だってあるのかないのかはっきりしていない。
「セリムったら、何をそんなに慌てているの? それにしても私いつ眠ってしまったのかしら、ここはどこ?」
くすくすと口許を隠して笑うハイネに少しだけ、違和感を覚える。
何か、いつもとどこかが違う気がする。
「ここは病院だよ、ハイネさっきまで呪われて眠ってたんだよ」
「……」
「……ハイネ?」
ユーリから声をかけられればいつもなら有頂天なのに何故か警戒心の色を強く放つハイネに困った様子でユーリはもう一度名前を呼び掛ける。
「……あの、ごめんなさい、申し訳ないのだけれど、貴女はどなた?」
「……は、ハイネ? お前何言ってんだよ」
そして次に困惑するのはオレの番だった。
ハイネは、一体、何を言ってるんだ。
「それにしても知らない人ばかり、今日は何か祭事でもあったのかしら……そういえばセリム、貴方何か、いつもより大きくないかしら?」
「……ハイネ、今の自分の年齢、言えるか」
キョロキョロと周りの面々の顔を確認しながらおしとやかに話すその姿に、オレはよく見覚えがあった。
そう、それはあの日、このお嬢様がおてんばに生まれ変わる前までの箱入り娘だった時のハイネ。
オレは一応、確認までにとハイネに問いかける。
「何言ってるのよ、この間9歳の誕生日を迎えたところじゃない、貴方がお祝いしてくれるって言ってくれてたの、忘れて、ない……あれ……」
ハイネは柔らかく笑って答えるとすぐに自分の中の違和感にぶつかったように言葉を止める。
「……そうきたか」
そんなハイネを見てオレは呟きながら額に手を当てる。
断言できる、今ここにいるのは、オレと仲直りする前のハイネ、ユーリ達と出会う前のハイネだ。




