【 1 】
―― これで三度目の穴くぐりかぁ……。
二度目と同じようにまた異世界への門を通り抜けた僕は再び空き地に降り立つ。
あれれっ、なんか太陽の位置がさっきより下がったような?
急いで腕時計を見てみる。
表示されている時刻は【 AM 8 : 02 】だった。…………エ?
これはおかしいぞ。だって一つ目の並行世界、そして二つ目の並行世界で合わせて最低でももう三時間は経過しているはずだ。現にたった今体験してきたトシさんの世界では午前十一時の鐘が鳴っていたし。
―― レッツ、シンキングタイム。
【 AM 8 : 02 】、この時間、確かこれはたぶん僕が一番最初に穴をくぐった時の時刻だ。
もしかするとあの穴をくぐる度に時間は強制的にそこにリセットされてしまうのかもしれない。
だからついさっきまでもっと高かった太陽がまだ低い位置にあって、僕の腕時計の時間も元の時刻に戻ったんじゃないだろうか? 確証は無いけど、なんだかそんな気がする。
でも今はそんなことをごちゃごちゃ考えるよりもとりあえずこの空き地を出てみよう。
今度はどんな僕が、そしてどんな真柴さんがいるのかな。
さっきまで絶望しか感じなかった気持ちが少しだけ軽くなっている。僕の心の中で何かが吹っ切れてきたのかもしれない。
そんな自分をちょっこっとだけ見直しながら僕はこの世界の僕を探しに行った。
いやもちろん、ここが僕本来の世界であることを一番に願ってはいるけれども。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
…………あー、ここの僕は凄かった。とにかくとにかく凄かった。
何がどう凄いって、
も う こ れ は 僕 じ ゃ な い で す
って言いたいぐらいぐらい凄かった。
僕との共通点は ≪ 無 ≫ と断言してもいいくらいのありえない僕だった。
だって髪型はツンツンヘアーでしかもなんと金髪。まるでスーパーサ〇ヤ人みたいだ。そして僕のトレードマークともいえる眼鏡をかけていない。この世界の僕って視力がいいのかもしれないな。
芽羊中学の通学路をうろうろと行ったり来たりしている途中で見つけたこの世界の僕は喧嘩をしていた。喧嘩といっても口喧嘩だけど。しかも相手はなんと真柴さんだ。
この世界の真柴さんはなんだっけ、ボブっていうんだったかな、とにかく肩の上で横に真っ直ぐに切り揃えた髪型に赤いカチューシャをつけている。
「カツ! あんた今日も学校サボる気でしょ! そんなこと風紀委員のこのあたしが絶対に許さないわよ!」
真柴さんはぷんぷんと怒りながら金髪の僕をピッと指差した。
うーん、僕が今まで見た中で一番元気な真柴さんだ。身体の内面から元気印のオーラが溢れ出ている感じ。はつらつとしていてとても可愛いです。その真柴さんが素行の悪そうな僕に厳しく注意をしている真っ最中のようです。
そしてそんな元気いっぱいの真柴さんにすかさず怒鳴り返しているこの世界の僕。
「うっせーぞヒナ! サボろうがサボるまいが俺の勝手だ! 俺にぎゃあぎゃあ命令すんじゃねぇ!」
「そうやってあんたが悪いことをしようとするからこのあたしが日々監視してあげてるのよ!? ぜーったいあんたをこのまま学校まで引っ張っていくわよ! 覚悟しなさいっ!」
「へっ、やれるもんならやってみろよ! お前みたいなうすのろに捕まるほど俺は間抜けじゃねぇっての!!」
「なんですってぇ――ッ!」
う、うわー……、なんか朝からすごくハイテンションだな、ここの二人は……。
しかもお互い名前で呼び合ってるし。真柴さんにカツ、なんて愛称で呼ばれているこっちの僕がすっごく羨ましい。
しかしカツの見かけは本当に凄いなぁ。
輝くような金色の頭にだぶだぶのシャツだもん。あれ、絶対に芽羊の指定シャツじゃないよ。
それに目つきも鋭いし口も悪いし荒々しいしまるで無頼漢みたいだ。
……これ、本当に僕?




