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第31話 宇宙


プリン、最高ぉ...。

マジで食ってみろ。飛ぶぞ、これ。


そう。この、とろけるような口どけとカスタードのコク、そして何と言っても、このカラメルのほろ苦さとのバランスがあまりにも絶妙すぎる。



これが、幻のプリン...。



何だろう。今、俺の目の前には宇宙。

宇宙と書いてコスモ。

そう。果てしなく神秘的な宇宙が眼前に広がっている光景。


ブラックホールが見えているのは気のせいだろうか。いや、気のせいではあるまい。


事実、本当に良いものは、過度な装飾がなく、シンプルでありながらも圧倒的な満足感をもたらしてくれると言うが、まさにこれはそれを体現したような至高のプリン。


そしてだ。これが一汗かいたの後のプリンということもあって、なお美味しい。美味しすぎる。


そう。実は俺はあの生放送の時の自分の不甲斐なさを反省して、万が一のこういった場面、そして大人気アイドルとのCMに備え、秘密裏に自宅でダンスの自主練習に励んでいた。


だが、まさか、こんなにも早くに俺に汚名を挽回するチャンスが訪れるとはな。


まさに感無量。


ダンスも無事に修学旅行生達と共に踊りきり、この最高のプリンの美味しさとも相まって、俺の瞳からは一筋の涙が溢れおちる。


美味い。


冗談抜きで身体が震える美味さ。


そして、一口、二口、三口と吸い込まれるようにプリンを味わっていると、あっという間に容器の上にはもう何もない。


「......」


自然と無意識に俺の視線は高崎アナの手に持つプリンの方に...。


「これ。本当に美味しいですね。って、嘘。フフッ、柳楽さん。もう食べちゃったんですか?」

「はい...」


僕のプリン、もうなくなっちゃった...。


「あ、じゃあ私の分も食べますか。フフッ、はい。あーん」


そして、気がつけば俺の前には、自分のプリンを一口分掬って、スプーンで差し出してくる笑顔の高崎アナの姿。


「......」


え、何だこれは。

ちょっと頭が混乱してきた。


高崎アナが俺にあーん?


いや、さすがにそれは...と思いながらも


このプリンの味を既に知ってしまった俺の脳は、目の前のそのプリンという名の宝石に対して、理性よりも本能が優先してしまう。


そう。今ここにいるのは、無意識に彼女に向かって目を瞑りながら口を開けてしまっている俺。


「......」


あれ?こない?


そして、目を開けると、そこにはさっきまで俺の口に向かってスプーンを差し出してきていた彼女が、そのスプーンを自らの小さな口に含んでクスクスと笑っている光景。


「あー、おいし」


あ、プリン...。


「フフッ、嘘です。嘘です。はい。どうぞ」


そして、気がつけばまた、俺の前には、俺に向かって一口分のプリンを掬って、そのスプーンをニコニコと楽しそうに口元に差し出してくる彼女。


「......」


プリン...。


「フフッ、もう。今回は本当にあげますから。はい、あーん」


そう言って、彼女は自らのスプーンをさらに俺の口元に。


当然、目の前に差し出された最高のプリンに俺がもう抗えるわけもなく...



「プリン。最高ぉ...」

プリン。最高ぉ...。



あれ?今、もしかして俺は心の声が口から...?

いや、気のせいか。そんなことよりも、本当に最高だ。このプリンは。


「フフッ、可愛い...。はい、もう一口あげます!」


やった。もう一口。


「......」


あれ、こない。


「あー、おいし」


そして、デジャヴだろうか...。

また、俺の目には、さっきまで俺の口に向かってあらためてスプーンを差し出してきていたはずの彼女が、そのスプーンを自らの口に含んでクスクスと悪戯な笑みを俺に向かって浮かべている光景。


「フフッ。本当にごめんなさい、つい。はい。お詫びにこれが最後の一口です」


でも、次の瞬間にはまた、俺に向かって、そう言ってプリンを恵んでくれる天使の姿が目の前に。


「え、いや、でも最後の一口はさすがに...」


そう。最後の一口はさすがに申し訳ない。

さすがにそこは俺も理性が働く。


「ふふ、じゃあいりませんか?」


そして、いりませんか?と言われてしまえば...。


「......」


言われてしまえば...



「いただきたい...です」



そう。目の前にプリンを掲げられた俺の口は、結局は本能に負けてそう答えてしまう。


「フフッ、では。はいどうぞ。あーん」


やった。



「やっぱ、最高ぉ...」

やっぱ、最高ぉ...



いや、本当に。マジで何でこんなに美味いんだ。このプリンはよぉ...。


「ありがとうございました...」

「いえいえ、でも本当に美味しかったですね」

「はい。本当に最高でした」


そう。本当に最高だった。

そして、きっと、次のオフにはまた俺は一人でここにいる気がする。いや、99%いるだろうな。


「......」


あれ、でも、そういえばプリンに夢中になりすぎて、おかしくなっていたけれど...。


少し冷静になって考えてみたら俺、あの天下の高崎アナから「あーん」なんてしてもらって...


そう。あの、お嫁さんにしたい女子アナランキングが今年も一位の彼女から...


「......」


いや、やばいな。

あらためて思い出してきたけど、色んな意味で飛ぶぞ、これ...。


「......」


あれ?そういや、そもそもの話、俺は今ここで何をしていたんだっけ?


「......」



あ、撮影中だった...。



「......」




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― 新着の感想 ―
汚名は返上ですよね。舞い上がってたのかな。
『だが、まさか、こんなにも早くに俺に汚名を挽回するチャンスが訪れるとはな。』 美味しいプリン食べた幸せで脳までプリンになってたんだろうな~ 本人の希望通り、スイーツ大好きのクッソ可愛い生き物ってイメー…
(公共の電波にイチャイチャ間接キッス乗せるのは)まずいですよ!
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