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47 傭兵、過去と戯れる

 問うココへと振り向くこともなく、ギルドに向かう男を凝視しながらこたえる。


「知り合い、と言うか……、でも、なんで?」


 疑問を膨らませ凝視しているキックス。

 首を捻るココだが、それらを無視して男はギルドの門を開く。

 中ではダグラスと共に傭兵の面接をしているエクシブの姿。

 男はそんな彼らのやり取りを有無を言わずに割り込んだ。


「久しいな、エクシブ」


 ふと、目の前の傭兵から声の方へと振り返ったエクシブは驚く。


「ル、ルーク! なんでここに!?」


 エクシブの言葉にギルド中の視線が男に集まった。

 スラヴ=パラス=ルーク。

 十兵団、第五団長。

 またの名を──。


「しゅ、瞬斬の騎士!」


 誰かが言う。

 特に気にした風でもなくルークはエクシブに近付き口を開いた。


「将軍から、伝言だ」


「たまには、帰ってこい、馬鹿ガキ。だそうだ」

「……はっ?」


 団長位の者が、わざわざ直接来たのだから、どんな重要な伝言と気を張っていたエクシブは間の抜けた声で聞き返した。


「お前が、ここにいると、聞いて来た。ふらふらし過ぎだ。捜す方の、身になれ」


 まったくもって話を聞かないルークにエクシブは呆れ顔でこたえた。


「手紙があるだろ。大陸中にあるギルドに送れば良いんだから」


 傭兵にとってギルド程重要な場所はない。傭兵はどこかの団体に必ず所属していないといけない。つまり何処にいても号令がかかれば集まらねばならないのだ。

 エクシブのような単独行動が長い者にとっては手紙の確認は日課となるのも当然なのである。

 そんな便利な物があるにも関わらずたった一言の為にやって来たルーク。エクシブが呆れるのも頷ける。

 回答を待つエクシブにルークぽつりと言う。


「……面倒だ」

「明らかに来る方が面倒だろ!」


 エクシブは即返すが、それを不満げな表情で見るルーク。


「──おまえっ」


 その様子に、更に何かを言おうとしたエクシブだったが、寸でのところでくすくす笑うダグラスに止められた。


「くく、昔に戻ったようだ」


 その言葉に、思わず苦笑する二人。


「確かに。昔は、こんなことばかり、言いあってた」

「将軍がいたらきっと剣を抜かされていたな」


 その光景を想像し、思わず笑い出す三人だったが。


「あ、あのー。おれはどうすれば?」

「んっ? あっ! すまんすまん、続けるからちょっと待ってくれ」


 面接中の男に問われ、わたわたとするダグラスとエクシブ。

 それを見てルークは外へ出ようと扉に向いたとき、エクシブが声をかけた。


「ルーク、もう行くのか?」


 ゆっくりと向き直り頷く。


「先に、戻っている。冬には、また会うだろう」


 言い終わり歩きだそうした瞬間、何かを思い出し告げた。


「山越えは、薦めない。最近、質の悪い者が、集まっている。行くなら、気を付けろ」


 そして静かにギルドを去っていったルーク。


「山越えは、気を付けろ……か」


 団長位が言うほどのこと、エクシブは肝に命じ面接者へと向き直った。


「さて、待たせたな。続きを始めよう」


 エクシブが面接を仕切り直しルークが外へ出た頃、一人の傭兵が全力疾走でギルドに向かっていた。

 エクシブと手合わせをし、力の差を見せつけられた赤髪の少年ジャンクである。

 ココはその姿を確認してにやりと笑う。


「ふむ、やっと来たかよ」


 ジャンクは行列を無視してギルドの門を乱暴に開けると、開口一番に叫んだ。


「なんで、オレに、声が、かから、ないんだよ、グラ、ン=エクシブ!」


 突然のことに驚くまわりを気にせず、ギルド長の前まで来ると、カウンターを両手で叩きつけるように大きな音をたてて言う。


「グラン=エクシブが一人じゃ辛いときは雇うって約束を忘れたのか!」

「いや、そんな約束は……」


 ジャンクの訴えにエクシブは戸惑うが──。


 にやにやと笑う狐の顔が浮かんでエクシブは頭を抱えると、ゆっくり首を動かし、抱えた手の隙間からダグラスを見て言う。


「こいつは別件でオレが連れていく。双子にも伝えてくれ」


 その言葉にダグラスは驚く。


「旦那、それはつまり……」


 言いかけたダグラスを止めエクシブはジャンクに言う。


「一先ずそれは後にしよう。えーっとジャンクだったか、オレの連れはわかるだろ?」」

「グラン=エクシブと一緒に居て、ギルドにおれを連れてきた……」

「そうだ。とりあえず外にいる連れのところで待っていろ」

「いや、待っていろって言われても……」


 困惑するジャンクにエクシブはため息をつき、ゆっくりと伝える。


「お前の雇い主になるのはそっちだ。ただ態度に気を付けろ、最悪喰われるからな」

「えっ!? 喰われ?」

「いいから行ってろ」


 喰われるに何を想像したのか、顔を紅潮させ聞き直すジャンクだが、エクシブは一言命令し出口を指差した。

 何度も首を捻りながらギルドを出るジャンク。

 一部始終を聞いていた面接者がエクシブに問う。


「あ、あの。喰われるって言うのは」


 するとエクシブの変わりにダグラスがこたえる。


「言葉通りだよ。まあ、命が惜しけりゃお嬢に逆らうなってことさ」


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