シンが魔法を習う
3月25日の朝。
「こんにちはーー。」本部前に、女の子が挨拶に来た。
「あ・。ジロー こんにちは 」とシンが顔を出した。
「で、今日は、座学で魔法の基礎を説明するよ。」
この星には、3つの太陽が巴に回っている。一つは光の太陽、2つ目は魔素を放つ黄色い太陽、3つ目は精霊の青い太陽がある。魔素は物体の相互結びつきより、さらに深いところで影響している。たとえば石は強い力で砂が固まってできているが、それより強い結びつきが魔素だ。例えば、丸い石を四角に変えるのも魔素を四角に構成しなおすことで実現できる。その魔素を自由に操るのが魔法だ。そして魔素は、この星の理の基礎となっており、この星に住む生き物は、全てその魔素の影響を受けている。すなわち、この星の生き物は魔法が使える。
しかし、シンら12000人の転移者は、魔素の影響を十分受けていないので、魔法は使えない。
ただし、シンは特別に魔法を使えるようにしたとのこと。
精霊の太陽は、また後ほど説明があるらしい。
「ジロー、頼みがあるのだが?」とシン。
「で、願いとは?」
「ユキ姫に、治癒系統の魔法を与えてやってくれないか?。兵たちもよく働いてくれるのだが、怪我をすることがあって、骨折などすると働き手が減ってしまう。なかなか治りにくいこともあって。できればお願いしたい。」
「わかった。では、神託ということで、今晩ユキ姫にその旨を伝えるよ。」
その夜、ユキ姫に神託があった。
“シンとその方に、魔法を使う能力を与える。精進するように!”と。
あくる日。
「シン様。昨晩神託がありました。魔法が使えるそうです。」
「それは良かった。昨日ジローにお願いしたのだが、早速叶えてくれたのだな。」
「魔法って、なに?? 」
以前のユキ姫の世界では、魔法の概念や言葉がなかったのかな?
「うぉん まじめにやれよ!。」
27日昼前に、ジローが再びやってきた。
「こんにちわー。」今日も元気なジロー。
「うぉん さあ、練習しようぜ。」
「お昼がまだなら、一緒に如何? お口に合うかどうかわかりませんが? 」とユキ姫がジローに尋ねる。
「いやー、ありがとう。ご相伴にあずかるよ。」
3人とマサムネとアランが加わって、楽しく昼食を囲った。
朝早く、アジのような魚が取れたので、刺身になって出てきた。
「ジローさんは、どこからどのようにして、ここに来られるのですか?」と堅物のマサムネは空気を読まない。
「それは、魔法ですよ。 うーんと遠いところに家があるのだけれど、ここにきたい!と魔法で!。」とジロー
「は・は・は 何とも想像できませんな。」とマサムネ。
「うぉん! もう、黙っていろよ、堅物。」
昼食が済んで、シンとユキ姫は、もう一度、座学をお浚いした。
「月が2つあるね。太陽の光が反射して届くのと、わずかな量だがダークフォースを降らせるのだ。」
「闇の力は、人や魔物に暗い部分を育てる。これは神が決めたことなのだが、心には若干の闇が必要らしい。このダークフォースを制御するのが精霊ということになっている。」
「ポチは、聖獣だと聞いていますが、精霊に関するものなのですか?」とユキ姫。
「そうなんだ。 必要とする場面がくれば、彼女はその役目をやるよ。まあ、今のところ無いかな?」
「さて、魔法の練習だけど、まず魔素を身体の中に取り込んで制御する、小さな例からやっていこう。」
「魔素の源である太陽イオに向かって、手をかざす。そうすると、手のひらからじわりじわりと、何かがしみ込んでくる感じがする。これをしばらく行う。
身体の臍の位置にその何かが溜まっていることを感じることができる。」とジローが教える。
なかなか、直ぐには結果がでない。
「直ぐにはできないよー。 2、3日かかるかな。 できたと思ったら知らせてね。 じゃあまたね。」
って、ジローは帰って行った。
「うぉん いちゃついてるんじゃないよ。まじめにやれよ!」とポチ。
シンとユキは、午後一杯空を見上げては、溜息をついていた。
「シン様、何をしておられるのですか?」って、マサムネが怪訝そうに問うてきた。
「あ・ いやジローがこれをやれって。理由を聞いたら魔力を高める稽古だって。」
「魔力?? 」まあ良いか。シン様はちょっと変だから。でもユキ姫まで一緒に??。
ということで、暇を作っては、2人で空を見上げていた。
3月30日、3日後にジローがやってきた。
「うん、うん。OKだよ。少し魔素が溜まっているようだね。後はイメージを頭に浮かべて、例えば、“水よ出よ! ぱぴぷぺぽ”って唱えると、魔素が働いて、周囲の水分を集めて、コップを満たすことができる。」
どうして “ぱぴぷぺぽ”なんだ??
ジローの言うには、誤って魔法行使にならないようにするためだって。確かに、日常で“ぱぴぷぺぽ”は滅多に無いか。その他にもストッパーがかかるようになっているらしい。昔4代目のけいこ様が土魔法の規模を間違っって大きな湖を作ったそうだ。その反省から、末尾に“ぱぴぷぺぽ”を入れることにしたとのこと。




