第9話 他者視点
side 楓
私の名前は木内 楓。
今回は私の友達の美羽ちゃんのお話をしたいと思います。
美羽ちゃんとは高校の時に知り合いました。
美羽ちゃんは本が好きな、優しい女の子です。
見た目は派手ではないですが、私が見た感じ磨けば光る原石タイプだと思います。
笑顔は癒されます!
しかし、美羽ちゃんを語るにははずせないお方がおります。
それが、魔王 渋谷 奏多君です。
渋谷くんは、頭が良く新入生代表の挨拶をし、見た目も極上のことから非常に女子にオモテになってました。
ただ、本人はまったくと言って良いほど相手にしていませんでしたが。
その渋谷くんが唯一態度が変わるのが美羽ちゃんでした。
美羽ちゃんの前では笑顔の大盤振る舞い。
美羽ちゃんがちょっとでも困っていると、何処からともなく現れ颯爽と助けていました。
そんな時でした。
クラスの男子で、渋谷くんがモテるのが気にくわない子が美羽ちゃんに近づいたのです。
渋谷くんのお気に入りを取れば、自分の気が済むと思ったのでしょう。
結果から言いますと、渋谷くんの行動は恐ろしく早かったです。
美羽ちゃんセンサーがきっと搭載されている渋谷くんは、その男子が美羽ちゃんの帰り道で声をかけた瞬間やって来て、美羽ちゃんに笑顔を見せてその男子を連れ去ったそうです。
何がその男子と渋谷くんの間に起きたか詳しくは知らないけど、その後その男子は渋谷くんを見ると速攻で逃げるようになりました。
クラスの男子は何が起きたか知っているらしく、美羽ちゃんには不必要に近づかなくなりました。
女子は美羽ちゃんに対する渋谷君のあまりの変わり様に、鑑賞対象に切り替えて楽しんでます。
美羽ちゃんに気づかれず、アピールが空回っている渋谷君のヘタレっぷりが堪らないそうです。
渋谷君の美羽ちゃんに対する分かりやすい態度がある日、パワーアップしました。
な、なんとお付き合いすることになったとか。
クラス全員祝福しました。
特に男子は万歳までしてましたよ。
後から聞いたところ、付き合う前に美羽ちゃんに軽くスルーされてた時は、渋谷君、クラスの男子に八つ当たりをしていたようです。
暴力ではなく、精神攻撃だったようです。
頭も良く、口も達者な渋谷君の精神攻撃…それは男子は万歳したくなりますね。
二年生になると渋谷君と美羽ちゃんはクラスが離れました。
すると、昼休みだけではなく、授業の合間の10分休憩すら美羽ちゃんに会いに来てました。
流石にそれはちょっとと言われたらしく、泣く泣く諦めていましたが、昼休みは例え5分でも毎日会いに来てました。
そんな姿が毎日続いた為、同級生はみんな渋谷君を生温かい目で見つめるようになりました。
顔は良いんですが、あそこまで美羽ちゃん馬鹿だと、同学年の女子はみんな鑑賞に切り替えたようです。
逆に美羽ちゃんべったりの渋谷君から守る動きも出たとか。
しかし私達が二年生の時、事件が起こりました。
な、なんと一年生の女子グループが美羽ちゃんに詰め寄っって、渋谷君のことで文句を言ったのです。
それを知った時我が学年は、激震が走りました。
なんであの状態を見て、美羽ちゃんに喧嘩を売れるんだろうと。
話の内容としては、レベルの低いものでした。
「奏多君にまとわりつかないで!」
「奏多先輩が迷惑してるの気づかないんですか!」
「奏多さまの優しさにつけこまないで!」
とか…はっきり言ってそれを聞いた我が学年は、こいつらに明日はないなと感じました。
そして、あっという間にその話は渋谷君の耳に入り、魔王が降臨しました。
あの時のことを思い出すと、今でも震えが起きます。
とりあえず、結果から言うとその子達は美羽ちゃんに土下座してましたよ。
美羽ちゃんはかなりビックリしてて、慌てて止めてました。
はー、やっぱり美羽ちゃんは優しいです。
ちなみにその後その一年生は渋谷君とすれ違うだけで、青くなってその場に固まってしまう始末。
だけど、渋谷君の計算違いとして、美羽ちゃんの優しさに触れたその子達が美羽ちゃんにかなり懐いていました。
とにかく、この事件以来渋谷君は魔王の名をほしいままにしてました。
何が言いたいかというと、美羽ちゃんと渋谷君が別れるなんて晴天の霹靂なのですよ。
あっちゃいけないんです。
もし、万が一あったとしたら………無理です!
万が一が起きちゃだめです!
美羽ちゃんには早く渋谷君と仲直りしてほしいです。
それが、私達、美羽ちゃん見守り隊の願いです。
ちなみに会員は高校の同級生ほぼ全員です!




