その後 その2 木内楓の場合 ①
急にアクセス数が増えてビビってます。
最近、何かがおかしいです。
私、木内 楓は今まで目立たず生きてきました。
これからもそれは変わることなくいくはずだったんですが…
なんでこんなことになっているのでしょう?
私には見てると面白い友達のカップルがいます。
癒しの美羽ちゃんと魔王渋谷くんのカップルです。
最近はやり取りが漫才じみてます。面白すぎです。
そんな二人と、ちょっと距離が近くなり過ぎたせいですかね。
本来、私との人生とはまったく交わるはずのない人との縁が出来てしまったのは。
私、なんかスゴイ人に好かれているようです…。
きっかけは些細なことだったんですよ。
むしろそんなことで?って思っちゃうような事でした。
ある日、美羽ちゃんと大学構内でバッタリ会って、久しぶりにケーキでも食べに行こうという話になったんです。そして、ケーキ屋さんに入ってマッタリしていると美羽ちゃんに渋谷くんから連絡が入ったのです。
美羽ちゃんいわく、美羽ちゃんパワーなるものがきれたから充電したいとか…。
仕事が忙しく一週間ぐらい会えていなかったようです。
相変わらず美羽ちゃん命ですね〜。
残念なイケメンの名を欲しいままにしてます。
そして、マテの出来ない渋谷くんはやっと仕事がひと段落ついたようで、急いでケーキ屋さんにやって来ました。
問題はその時、どうやって来たかです。
そうです、あのイケメン運転手新庄さんに送られて来たのです。
そりゃそうですよね、専属運転手さんですもん。
ケーキ屋さんに渋谷くんが来ると、周りの女性陣の顔付きが変わりました。
そう、あれは狩人の顔です。
渋谷くんは私達の席に来て、美羽ちゃんの隣に座りました。
あの〜、お姉さま方、私まで睨むのはお止めください。私は関係ないですよ〜。
でも、気持ちはわかります。
最近の美羽ちゃんはサナギが蝶になるようにとっても綺麗になってるのですよ。
なので、お邪魔虫の私を睨んでくるのでしょう。
えー、えー、わかってますよ。私がいるのが目障りなのは。
でも、言わせてもらいますが、邪魔しに来たのは渋谷くんですから。
怖くて本人には言えないですけど。
さて、魔王も来た事だし、視線もブリザードだし、私は帰ろうかな〜と思っていると、なんと新庄さんが中に入って来ました。
ひえ〜、お姉さま方の視線が熱かったり、冷たかったりで風邪をひきそうです。
美羽ちゃんも何かを感じ取ったようで、私にお手洗いに付き合ってと言ってきました。
あっ、一時退却ですね。戦略的撤退ですか?
そんなバカなことを考えている間に二人で抜けて来ました。
「ふー、なんか周りの視線が一気に集中したね〜。」
とノンビリ美羽ちゃんが言ってます。サスガ魔王といる事はあります、慣れてますね。
「美羽ちゃん、私はちょっと、いやかなり身の危険を感じたよ。」
いつもは注目されないので、たまにこんな流れ玉的に視線が集まると緊張します。
「でも、新庄さんが中に入って来るなんて珍しいよ。いつもは車で待機してるし。なんか急用でもできたのかな?」
ふむふむ、いつもは待機なんですね。もしかして、仕事で呼び出しとか…。久しぶりに美羽ちゃんに会えたのにそれだと完全に魔王は暴れますね。被害がでますよ。
んじゃ、こんなところで避難してる場合じゃないですね。
早く生け贄(美羽ちゃん)を返さないと…。
そんな物騒な考えが通じたのか美羽ちゃんがこちらを見ました。
「とりあえず、一呼吸おいたから席に戻ろうか?楓ちゃんもゴメンね。とばっちりで。」
うん、やっぱり美羽ちゃんは優しい。お手洗い休憩は私の為だったのね。
さすが魔王の対極、癒しの女神ですね。
私達が席に戻るとそこは…………戦場でした。
いや〜なんだろうこの空間は。
さっきまで私達が座っていたところに新庄さんも座っているのは、まあわかります。
でも、その周りにたぶん魔王に戦いを挑んで撃沈した屍と、それにもめげずに突撃をかます勇者がいるのですよ。
要は、見目麗しい自信に溢れる狩人、じゃなくてお姉さまが狩りに勤しんでいるのですよ。
さっきまで私達が居たのにですよ。
では、魔王と勇者(お姉さま)の戦いの様子を見てみましょう。
「ねえ、暇 ならご一緒しましょ。ちょうど、私達も二人で暇してたの。」
「……………。」
「……………。」
「あら、無口なのね。でも、おしゃべりな男よりいいわ。ねえ、いいとこ知ってるのよ。行きましょう。」
「……………。」
「……………。」
……………………ひ〜〜。なんて勇者なんでしょう!
あのブリザード攻撃を好意的に受け止めるなんて!しかも、新庄さんも合わせてダブルブリザードですよ!
えーー、美羽ちゃんそこに飛び込むの?!
ここにも勇者がいたとは。私はちょっと、と思っていたら、意外と力強い美羽ちゃんに引っ張られて連れて行かれました。美羽ちゃん強すぎだよ、いろんな意味で…。
私達の姿、いや美羽ちゃんの姿を見た魔王は直ぐに王子へと変貌しました。
今までの仏頂面が嘘のようにキラキラ王子に変身です。
それを見ていたハンターが威嚇してきます。いや、お邪魔虫はあなた達ですから。
「こんな子達より、私達と遊びましょうよ。そっちの子はそれなりだけど、もう一人の子は分厚い眼鏡でちょっと合わないんじゃないかしら?」
ん、分厚い眼鏡って私のことですね。まあ、ホントのことなんでどうでもいいですけど、問題は美羽ちゃんに向けた言葉ですね。それなりって…。
ほらっ、一際周りの空気が冷たくなった。魔王再来ですね。
いっそ、一思いに止めを刺して下さいまし。
「……さっきから、無視してるの気づきませんか?俺、頭の悪い人嫌いなんですよね。それになんで赤の他人に最愛の恋人をバカにされなきゃいけないのでしょうか?」
「奏多、こんなところで騒いだらお店に迷惑になるよ。それに、楓ちゃんを悪く言う人と会話しなくていいよ。」
美羽ちゃん…貴方も魔王の影響を受けているのでしょうか。
結構辛辣ですよね?
ハンターを無視する形で店を出ようとしたら、彼女らが牙を剥いてきたようです。
うーん、明らかに手に水の入ったコップを持って構えてますね。
やっちゃいますか、負け犬の超定番の行動を。
そうですね、美羽ちゃんを狙っているようですね。
うん、私はこの後用事もないし攻撃を受けときますか。
数秒の間に結論を出した私はグットタイミングで美羽ちゃんの後ろに回りました。
何故なら、ハンターは卑怯なことに後ろから美羽ちゃんを狙っていたのです。
バッシャーー〜。
うー、やっぱり氷入りは冷たいですね。
でも、この後デートするであろう美羽ちゃんにはこんな目にあってほしくないですし。
言ってもわからない人だから、言葉ではとまらなかったでしょうしね。
「!楓ちゃん!大丈夫?!」
美羽ちゃんが後ろを振り向いてビックリしています。
そりゃあ、いきなり後ろに回ったと思ったら水浸しになってるんですからビックリだよね。
「ちょっと冷たいけど大丈夫。さて、お姉さま方、これはあまりにもヒドイ扱いですね。イイ男に釣り合わない女が連れだとこんなことを毎回してるんですか?どうしましょう、私近くの交番に行ってお巡りさんにお話ししたい気分になってきちゃいました。」
眼鏡も水浸しになので、取ってお姉さま方の方を見ました。
ん、ナンデスカ。
変なモノを見た顔は。
あれっ、美羽ちゃんもですか?
「か、楓ちゃん!えっと、初めて眼鏡取ったところ見たんだけど………めっちゃカワイイ。」
なんで美羽ちゃんが照れてるんでしょう。
それに私の顔はいたって平凡です。
そんなやり取りをしてたら急に抱き上げられました。
えっ、えっ、何ですか?
これはいわゆるお姫様ダッコ!
恐る恐るダッコしてくれている人をみると………うわっ!新庄さんじゃないですか。
「こんなに濡れてしまっては風邪をひいてしまいますよ。さあ、車までお連れいたしますね」
うっとりしてしまうぐらいの笑顔でそんな事を言っております。
「うわー、あの行動で新庄に気に入られたな。頑張れ木内!」
おーい、今聞き捨てならない言葉を聞きましたよ。
やめて下さい。私は目立たず生きていきたいんです〜。




