表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

第11話 side奏多

それは俺の二十歳の誕生日の一週間前に起こった。



この頃俺は親の会社の経営にも携わるようになってきて、仕事の付き合いでやたら忙しかった。

後、一週間で二十歳。

これで、美羽と婚約………ふっふっふ長かった。


しかしその前に美羽と話し合わなければ。

美羽の気持ちは俺の方を向いている!

言葉にはしていないが、行動が示している。


ただ、最近やたらと例の西尾の令嬢が俺にまとわりついてくる。

仕事の話で出かけて行った先に、偶然ですねと現れるのだ。

んな偶然あるか?仕事先だぞ。

絶対、西尾の親もからんでいる。

なんてしつこいんだ。


そんな面倒なやつらとのやり取りを吹き飛ばすには、やっぱり美羽パワーでしょ!

ちょうど、今日美羽から会いたいって連絡が来ていた。

美羽は俺が忙しいのを知っていてあまり会いたいとは自分から言ってくれない。

っていうか初めてじゃないか?

あ、あれ目から水分が…。


だけど、気になることもある。

なんだか、最近美羽が元気がない。

美羽が言うにはちょっと試験勉強のし過ぎで寝不足とのことだが。

勉強だったら俺が手取り足取り教えるのに…前にそう言ったら忙しい俺に教わるのは悪いと断られた。

いや、むしろ俺が美羽とずっと一緒にいる口実になると喜んでたんだが。


とりあえず、美羽に会いに行こう!

今日は珍しく美羽の大学の近くの公園で待ち合わせだ。

迎えに行くと言ったのだが、目立ちたくないと言われた。

俺としては虫よけ替わりに、校門で美羽とのラブラブぶりを披露したかったのだが。

しょうがない、美羽は恥ずかしがり屋さんだからな、うん。



公園に到着した。約束の10分前だったが美羽はもう待ち合わせ場所に来ていた。

やばい、遅れたか!


「美羽!」

美羽がこちらを見た。その顔は、何だか悲しそうな表情をしている。

ま、まさか俺が遅かったからか?!


「ごめん、待った?」

うわー、美羽を待たせるなんて俺のバカヤロウ!


「ううん、待ってないよ。時間通りだし。」

そう言うと美羽は微笑んでくれた。

うわー、やっぱ美羽の笑顔は癒される〜。

もう、連れ帰っても良いんじゃないかな?

ほらっ、もう少しで俺も二十歳だし、オトナの仲間入りだよ。


こんなとこで立ち話もいかがなものかと思い、ケーキ屋でもと、美羽を誘ったがちょっと話があるとのこと。でも、そう言った美羽の顔がとても辛そうだった。

俺は何かあったと確信を持った。

美羽が今までこんな態度を俺にとったことはない。

それに、無性に嫌な予感がする。



「ねえ、奏多。もう、リハビリ止めない?」



俺は息が止まりそうになった。

いや、実際上手く息ができない。


美羽が話している内容が頭に入ってこない。

えっ、俺がもう女子を苦手にしていないだって。

そりゃ、そうだよ。始めから苦手ではないから…。

全ては美羽を手に入れたかったから。


もしかして、それがばれたのか!

うわーん、ご、ごめん。で、でも俺、美羽に一緒にいて欲しくて…。

俺がそんなことを考えていると、一番聞きたくない言葉が聞こえてきた。


「奏多、私ね、好きな人がいるの。だから、もう、付き合っているフリは出来ないよ。」




トキが止まった。

俺は、今、夢を見ているのだろうか。

もし、これが現実だというなら、俺は!


美羽が行ってしまう。

でも、俺はそこから動けず、ただ呆然と立ち尽くしていた。


どうやって、家に帰ったか記憶にない。

気づけば自宅の部屋にいた。


美羽は俺になんて言った?

好きな人がいるって………。

嘘だろ。だって、俺は美羽とずっと一緒にいたんだ!

美羽だって俺といるとき、美羽自身だって気づいていないが力を抜いてリラックスしていた。


俺は考えた。

俺が美羽と会えない間に何かがあったと。

美羽にあんな顔をさせる事態が起こったんだと。

怒りで暴走しそうな感情を無理やり押さえ込んで、俺は俺が出来ることを考えた。



ダメだよ美羽。あんな顔でさよならなんて、俺が美羽を手放せるわけないだろう?



まず、美羽と同じ大学に通っている連中に連絡をとった。

日頃から、美羽に何かあったら連絡するように言っていたのだが、機能を果たしていない。

久しぶりにオシオキが必要か。


そんなことを考えているのが通じたのか、一人から気になることを聞いた。

一カ月くらい前に、校門近くであまり見かけない感じの女と美羽が一緒に歩いていたと。


ふむ、確かに一カ月前辺りから美羽の顔色が悪くなり出したんだよな。

一カ月前の俺を蹴り飛ばしてやりたい。

お前が何も手を打たないからこうなったんだと。

後悔してもしょうがない、今はヤレることをやろう。


ただ、情報はそれしかなく、覚えていることは、綺麗系なお嬢様タイプだったと。


…あー、なんかぶん殴りてぇ。

あれだな、原因はあれなんだな。


俺がそうこうしているうちに、新庄が美羽の所に行ってきたらしい。

おい、俺が美羽に会えないのに何してんの?

え、美羽が西尾の名前を出したって?

しかも婚約者だと〜〜?


俺の怒りは限界を超えた。

あのヤロウ、女だと思って手加減してたのが間違いだった。

徹底的に潰さないと気がすまない。

俺が怒りで暴走しそうになっていると、新庄が親に大方の理由を話し、俺の所に連れて来た。


「奏多、とりあえず暴力はやめろよ。」と父。

「でも、美羽さんを傷つけたんだからそれ相応の報いはね?」と母。


親は全面的に味方になってくれそうだから、二人に協力を依頼した。


全ては俺の誕生日だ。

その日に決着をつけてやる!

美羽、ごめんな。もうちょっとだけ我慢させるよ。

決着がついたらいっぱい謝るから………だから俺から離れないで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ