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不思議なことに、そのノートのテープはどう引っ張ってもビクともせず、カッターの刃を折り、まるで意思があるかのように頑なにノートを開かせようとしなかった。
刃が折れた段階でひとまず諦めてテープをよく見て見ることにした。すると凝視してわかったが、細く細かい字で書かれていて、それが字なのか絵なのか、あるいはもっとおぞましい何かなのか分からないものだった。
そしてテープもまた、フィルムとかではなく硬い鉄で薄いがガッチリと縛られていた。これではうまく刃が通らないのも頷けて、同時にこの中にはどのような内容があるのか分からない。
しかし開かないとなると今は諦めて置くしかない。
どうやらもう暗くなっていて、横にはまだまだ山積みの段ボールが俺を憂鬱にしながら台所へと向かった。
「やあ、捗っているかい?」
「いや全然」
また幻聴か。どうやら最近就活がうまくいっていないからかかなり疲れているんだろうな。
「あれは簡単には解けないよ。あれは特殊技法ですから」
「じゃあどうとればいい?」
と今度は幻覚の彼女が台所でスーツの上でエプロンをつけて料理しているのが見えた。俺そんなマニアックな趣味あったか?
「あれはわたしも知らない。だってつけたのうちの親だから」
「ま、幻覚に聞いても俺の思考だから分かるわけないか」
「……これでも食べて目を覚ましな」
そう言いオムライスにのせられたスプーンを取り、オムライスを一口サイズですくい取り俺の口の前に突き出した。
その幻の中のオムライスを一口食べる。どうやら食感と味覚まであり––––
「……まてまて、マジかよ」
明らかに食べたことない味だ。というよりすごく美味しい。これうちの親簡単に超えている。てかここまでくると、もう目は背けられそうにない。
「ああ大マジだ。目の前のわたしは幻覚でも幻聴でもないぞ」
と今度は持てとばかりに『だいぶ成長したあの頃の彼女』がオムライスを突き出した。




