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二.衝 撃

「なんだって、“AIの変な提案の方が、逆に自分で考えるようになって創造性が刺激された”だと?」


 会議の末席にいた若手研究員からの報告に、開発チームのメンバーたちは耳を疑った。


「……はっ?」

「変な提案が、役に立つ……?」

「それって与作の、あれのことか?」

「いや、あれはただのバグだろう?」

「アンケート結果がバグってんじゃないのか?」


 数々の拒否反応に戸惑いながらも、若手研究員はアンケート結果の詳細を報告した。


「正直、僕も最初は単なる被験者の思い込みと思っていたんですが、類似した回答が約三〇%もありました」

「えっ……」

「もはや、誤差の域を超えています」

「……」


 予想外の数字に押し黙るメンバーたちをよそに、若手研究員はキッパリ言った。


「これは早急に追加調査すべき案件です」

 

 若手研究員の進言を受けて、新たに調査チームが結成され、詳しく分析したところ、以下の驚くべき事実が判明した。


 AIが優れた案だけでなく、ユニークな案や欠点だらけの案まで幅広く提示した場合、

 被験者は作業により多くの時間を費やし、結果として、より良い成果を生み出す傾向にある。

 

 さらに、


 質の低い提案や失敗作が「思考の固定化(※注1)」を壊すため、

「こんな方向もあるのか!」という気付きを与え、

 被験者の発想が一気に広がる


 という、まさかの効果まで確認された。


※注1:人はアイデアを考えるとき、最初に思いついた案に縛られやすく、一度「この方向でいこう」と決めると、それ以外の可能性を無意識に切り捨ててしまう心理的な現象ことを「思考の固定化」と呼びます。


 この調査結果を受けて、新たに緊急会議が招集された。

 会議の冒頭、主任研究員が書いたホワイトボードの文言に衝撃が走った。


『質の低いAIほど、人間の創造性を高める』


 会議室がザワついた。


「なんだ、その逆転の発想は……」

「AIがテキトーなほど、人間は賢くなる……?」

「そんな馬鹿な……いや、でもデータがそう言ってる……」

「確かに、被験者たちは口を揃えて“こんな方向もあるのか”と驚いていた」

「中には“むしろ、変な案が一番役に立ちました”と言う被験者もいましたね」


 開発チームのメンバーたちは顔を見合わせた。


「……これ、もしかして、与作は天才なのでは?」

「いや、ただのポンコツだろ」

「でも、創造性の喚起という点では結果は出てるし……」


 緊急会議での提言を受けた政府とプロジェクト上層部は数日間の協議の末、驚きの決断を下した。

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