デーモン・コアの修行
「井上さん、明日八王子入りしてもらうんですけど、なんか準備ありますか?」
唐突に新井から尋ねられた。
「え、俺も行くの?」
「何言ってるんですか。台本に書いてあったでしょう。一応化外部隊のリーダーはあなたなんだから。」
俺は閉口した。
「化外部隊は放射線耐性があるけど、俺は普通の人間だよ!?放射能まみれの、そんなところ行ったら死んじゃうよ!」
ここで金子が口を挟んだ。
「いや、もう死んでるじゃないですか。死体は丁重に冷凍保存していますよ。井上さんの肉体はスタンドなんでしょ?」
笑いながら茶化してきた。
「いや、それはまあそうなんだけどさあ。スタンドなのにセックスも射精もできるし・・」
「都合のいいことばかり言って、わがままだなぁ。」
新井が嘯く。
「そもそも放射線て何か知ってるんですか?」
「そりゃ、原子の中の超ちっちゃい玉っころが放出してバカデカエネルギーを生むことだろ?」
やれやれ、と言った感じで金子は呆れ顔をした。
「じゃあ修行でもしますか。こっち来てください。」
金子と新井に連れられて施設の地下室に赴いた。重厚なコンクリートと鉛でできた扉の先に入れられ、外から閉められた。
「お、おい。何をするんだよ!」
「井上さんのために高額な費用をかけて修行ができるスペースを作りました。真ん中に一体ロボットがいるでしょう。そのロボットがプルトニウムにベリリウムを被せた塊に挟んだマイナスドライバーをランダムに上下します。やり方によってはアルファ線やガンマ線、ベータ線が発生します。」
部屋の中のスピーカーから金子の声がきこえる。
「おい!これデーモン・コアじゃねえかよ!滑って落としちゃう死亡フラグ立ってるよ!」
「ご安心ください。室内をエタノールの霧で満たします。放射線が可視化できますよ!間違っても酔っ払って見逃さないようにしてください。」
「なんだそりゃ!聞いたことないぞ!」
「勉強不足ですね。これだから私文は・・」
新井の嘲り声が聞こえた。
「あなた、女神の光を断ち切ったとか自慢してたじゃんか。放射線くらい余裕でしょ?ちなみにベータ線はジグザグに、ガンマ線はランダムに飛んでくるから気をつけてね。」
「あーもうクソ!」
デーモン・コア君はロボットのくせに物憂げにドライバーを上げ下げしていた。途中、ギリギリまで近づけ、また離す。その都度微量な放射線が飛んできたが、俺はバニシングで難なく撃ち落とした。アルファ線、ベータ線はだいたい軌道がわかるが、ガンマ線は無茶苦茶だった。来ると思ったら来ない。来ないと思ったら急に軌道を変える。サーチングを駆使し、放射線を先読みする。それだけでは足りないので、デーモン・コア君の動きを先読みする。しばらくはそれで良かった。が、突然デーモン・コア君がしまった、という顔をした。こいつ表情出せるのかよ、と思うまもなく、青い光が部屋中に広がった。ヤバい、こいつ滑ってベリリウムの玉くっつけやがったな。臨界した!終わった、と感じたが、俺は全集中の呼吸でできる限りの放射線を撃ち落とした。が、次々と粒子が迫りくる。コンマ0.00000000・・秒の判断なんて無理だよ!と思っていたら「バニシングを全身に張る」という技ができるようになっていた。迫りくる光を体表から1センチくらいのところで全てシャットダウンできる。死ぬ気になれば何でもできるんだなぁ、としみじみ感じた。まあもう死んでるんだけど。心に余裕ができデーモン・コア君の方をみると、何事もなかったかのように淡々とベリリウムの蓋を手で持ち上げて臨界を終わらせていた。
「井上さん、なんか凄い技ができるようになりましたね。でも、最初の方は何発か被爆してましたので、一応検査をお願いします。もっとも、スタンドの身体ですけどね!」
「井上さん、良かったですね!明日無事に八王子入りできますよ!」
金子は多少気遣ってくれたが、新井は終始ニヤニヤしていた。
デーモン・コア君は、「え、僕何か悪いことしました?」みたいな表情をしていて無性に腹が立った。




