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(073) 事情は人それぞれ

◇◇◇ 病院 ◇◇◇


午前8時。乃々(ののか)の病室。


オレはいつものようにノノンこと

乃々佳の所へと面会に来てる。

病院の面会時間は10~16時。

昨日知ったのだが、ノノンの面会は

24時間いつでもOKだという。


そんなことってある?

この病室といい。

茂木(もぎ)乃々(ののか)という人物が何者なのか

知るのが怖くなって来た。


とはいいつつも、フルネームでネット検索

してはみたものの特に引っかからない。

てっきり財閥の娘か何かだと

予想したが違っていた。

となると、大物議員の隠し子だったり

するのだろうか?

謎は深まるばかり。


そもそも自分が何者かも分かってない。

依然として7月より前の記憶が戻ってない。


もしかしてオレとノノンは、7月初旬で

黒の組織の情報を握ってしまったがゆえ

毒薬を飲まされたんじゃ?

本来は死ぬはずがオレは記憶を失い、

ノノンは昏睡状態になった。

これだ。これしか考えられない。


って、ことはだ!

オレは高校生探偵だったりするのかな?

ハハハ。アニメの見過ぎだ。


「カイが学校やめるってさ。

 ウザい奴だけど、居なくなると

 思うと寂しくなるな。

 夏休みの間までは寮にいるって」


昨日の事である。オレの部屋にカイが来て、

学校を退学すると告げられた。

lineで事前に聞いてはいたものの、

いつもの冗談だと信じていなかった。


退学する理由は、父親の会社が倒産して

失業したからだという。

ここ3カ月間給与が出てなかったらしく、

倒産したので退職金もないらしい。

家計は火の車で、貯金を切り崩して

なんとか生活してるんだってさ。

なのでカイいわく、実家に戻り就職する

のだという。


そんな話を聞かされたら、

『せめて高校は卒業しとけよ』

とは言えない。


思えばオレに関わりのある人達は

みな不幸になってる。

ノノンもその1人なのだろう。

オレは不幸をバラまく疫病神なのかもな。


「ジムでカイと待ち合わせしてるんだ。

 一旦出て行くな。

 また夜に戻ってくるよ」


◇◇◇ 市街地 ◇◇◇


オレは、堀北さんが通うジムへと

向かっている。

今日のミッションは、

堀北さんの様子を見るのと、堀北さんから

金沢さの住所を聞きだすこと。


よくよく考えたら篠崎さんも住所を

知ってる可能性がある。

善は急げ、オレは歩きスマフォで

篠崎さんにLineしてみた。


Line<金沢さんから連絡あった?

Line>ダメ。既読にならない。

   電話してもつながらないし

   きっと電源落としてる。


Line<金沢さんに直接会おうと思ってる。

   住所って知ってる?

Line>ごめん。

   住所も固定電話も知らない。

Line<OK。

   別の人に聞いてみる。


ということで、篠崎さんから

住所を聞きだすことが出来なかった。

ふとピアノのことも聞いてみた。


Line<ピアノは練習してる?

   またストリートピアノやろうよ。


そうだよ。カイも戻って来たんだし。

動画編集の件でなら金沢さんと気まずく

なく会話できそうだ。


Line>明日コンクールに出場します。

   言わないつもりでしたけど。

   このタイミングでLineが

   来たからお伝えしておきます。


ピアノのコンクール出るんだ。

それは良かった。応援したいな。

乃々佳にも報告しとくか。


Line<応援しに行くよ。

   場所と時間を教えて。


◇◇◇ 車内 ◇◇◇


東京都内の高速道路を走る

1台のワンボックスカー。

2人のアイドルを乗せた車は

次の現場へと向かっているところであった。

アイミーと凛々(りりか)である。


2人は、お互いを干渉しないよう

スマフォを眺め、車内は静寂(せいじゃく)に包まれていた。

そんな中、アイミーが言葉を切り出す。


「聞いていい?

 私と仕事するのやじゃないの?」

「どうして!?

 愛美梨(えみり)と仕事するの好きよ。

 特にテレビね。笑えるもの。

 テレビのあなたは良いキャラしてる」


あれ?

トゲのある回答が来ると構えていたのに

あまりにもフレンドリーな話しぶりに

アイミーは驚く。


「嫌われてると思ってたけど」

「そりゃ、嫌いな時もあれば、

 楽しい時もあるわよ。

 ずっと一緒に居るんだから。

 愛美梨だってあるでしょ」


凛々華もアイミーに聞けないでいた事がある。


「移籍のこと。

 応援してくれるんだよね?」


それに関しは、アイミーは複雑な感情を持っている。

役者になりたいという夢が実現しようとしてる。

友達として素直に祝福してやりたい。

だけど。


「凛々華の夢は知ってる。

 でも今の活動でファンを増やして一緒に夢を

 実現させるんじゃなかったの?

 まさか事務所を変えるだなんて。

 私一人頑張ってたのがバカみたいじゃない」

「感謝してるよ。

 愛美梨のガンバリがあったから

 私は移籍できた。

 だから今度は私が女優として有名になって

 エルピースが伝説のアイドルになるよう

 頑張りたいって思ってる」


だから来月のコンサートも真剣に取り組んでいるし、

全力でやり切りたいという思いのようだ。

ファンにとって伝説にしたい。

それはアイミーも同じ。

凛々華が抜けるならエルピースは

最後のコンサートになるだろうから。


凛々華自身も一生の思い出に残るものにしたい

と願っていたことをアイミーが知ったのである。


「いやいやモードなのかと思ってました。

 そんなに(あつ)い思いがあるなら言ってよ。

 移籍だって相談してくれても良くない?」

「相談したら応援してくれた?」


「そりゃ引き留めるに決まってるわよ」

「ほらぁ。だから、しなかったの」


アイミーは、やっと昔の凛々華が戻って来た

ような感覚を覚える。

最近トゲトゲしかったのは、アイミーが

引きずらいないよう、わざと悪役を演じて

たのではないかと、そんな気がしてきたのである。


「移籍したらもう一緒に仕事、

 できないかもなんだよ。

 凛々華はやじゃないの?」

「いやに決まってるでしょ。

 一緒に活動できるならしたいわよ。

 うちの事務所では無理じゃありません?」


何事にも絶対ということはない。

だけど、このまま頑張って確実に夢を

実現できるかというと、なんともいえない。

凛々華は、移籍することで確実をゲットしたのだ。


「わかったわよ。応援します。

 なら私も武道館でアイドル卒業する」

「凛々華までアイドルやめる必要ないでしょ。

 ソロアイドルとして十分やって

 いけると思うけど」


「伝説のコンサートにするんでしょ?

 私にだって夢はあるんだから。

 解散コンサートにしよ?」


どちらかというと、アイミーの方が行き当たり

ばったりである。

アイドルで、どんなに人気があっても

卒業後に成功する人は少ない。

凛々華に触発され、それを承知の上で自分も

挑戦してみたいという考えに変わったのだ。


「わかりました。

 私も愛美梨を応援する。

 解散後は、お互いそれぞれの道で

 頑張りましょう」


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