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第26話 冒険者組合

 その施設は酒場と統合されたような施設で、ついでにと言った勢いで食べ物も提供されている。腸詰の炭火焼や度数の低いエールのような酒、ドノイスのスペアリブ煮込み、薄焼きにした小麦粉に野菜や肉を挿んだトルティーヤのような軽食等をつまみながらその施設の関係者「冒険者」達は舌鼓を打っている。


 室内はすでに暗く、夏が近いのでワイルドに篝火を光源にしたオープンテラスさながらの様相を見せる。様々な魔族や人間が机を囲み、互いの自慢話に花を咲かせていた。


 「この場所だけお祭りみたいになってますね」


 「酔っ払いに近づくと絡まれるからあまり近づかないようにするのだわ。コイツ等酔ってると貴族も何も関係なしになってくるから面倒なのよ」


 「経験がありそうだね」


 「勿論地獄を見せてやったのだわ」


 フフン、と鼻を鳴らし胸を張るベローズ。篝火はパチパチと爆ぜ火の粉は天に昇る、空にはすでに2つの月が煌々とスクリス全体を照らし冒険者達の笑い声は賑やかに村の中に消えてゆく。


 「それはそうと登録を済ませるのよ。酒場部分にはあまり用事が無いのだわ」


 冒険者組合。その建物は頑丈な作りになっており、職員の寝泊まりするスペースや飲食可能な広場、解体場等が一体化したした建物でその幅広い運用方法から雇用の塊の施設としてスクリス周辺に知られる施設である。


 そしてこれは恐らくだが魔物に攻め込まれた際、最終的に砦として機能する役目を持っていると見れる。それほどに頑健で物々しい作りになっているのだ。


 「ベローズ様、いらっしゃいませ……そちらの方々は?」


 「組合長自らの出迎え感謝なのだわ、この2人はわらわの運命共同体。これから冒険者として活躍する2人なのよ」


 「ニーアゲイラだよ、よろしくねおっちゃん」


 「エモト・シオンです。よろしくおねがいします」


 受付のカウンターに両肘をかけ、手を組みながら眼光鋭く組合長はシオンとニーアを交互に見つめながら何かを考えている。外のお祭り状態に比べ薄暗く、閑散とした室内にその態度が重苦しい雰囲気を醸し出した。


 「ベローズ様、恐らくは冒険者として登録をしたいと察する事が出来るのですが……そちらのシオンさんに関しては無理をなさらない方がよろしいのでは?女性を差別するワケではなく、あまりにも細すぎるかと存じ上げます」


 「問題無いのだわ、シオンはわらわと同程度の働きはするし男の子なのかしら」


 「……男、の子……?それは、失礼いたしました……それでは早速登録ですね、少々お待ちください」


 組合長はカウンターの下から羊皮紙を一枚取り出し、インク壺のようなものと一緒にベローズの前にせり出した。その羊皮紙には何らかの文字が書かれており、所々に削った跡が散見される。


 「ニーアは文字が書けるかしら?」


 「あー、そこまでの学は無いね。頼むよ」


 その言葉を聞き取りベローズはサラサラと羊皮紙に何らかの文字を書き入れる。


 「こっちがシオンの名前、そしてこっちがニーアの名前なのだわ。その内ある程度の文字もわらわが教えるからちゃんと覚えるのかしら」


 名前を書き写した羊皮紙を組合長に差し出し、次はその羊皮紙を受け取った組合長が口を開く。


 「ありがとうございます、これでシオンさんとニーアさんは冒険者として登録が出来ました。しかしハッキリ言いますとスクリスで何かしらの特典が付いたり優遇、保証の類はほぼありません。せいぜいがこの組合内だけで、依頼達成後金銭のやり取りが発生する程度のモノです、よろしいですか?」


 シオンとニーアはコクリと無言で頷いた、それを確認して組合長は続ける。


 「罰則は特にありません、しかし同時に規則、昇給の類もありません。その理由は無理をせず命を第一に考えた結果そうなっただけです、しかし明確な犯罪を犯した場合似顔絵と名称が各地に手配され2度と登録不可となり追われる身となります。ベローズ様の紹介なのでそこらは心配していませんがね」


 「どんな事が犯罪になるんでしょうか?」


 「スクリス内での殺人、強盗、放火、詐欺諸々ですね。しかし気を付けてください、一旦スクリス外に出てしまえばこの被害に遭ったとして証明出来る物が無ければ加害者は捕まえる事が出来ません。長い間それらは報告されていません、ですがそれらはいつ起こるのか予想が出来ませんから」


 組合長はシオンに対し丁寧に説明をする。フムフムとシオンとニーアはそれに頷きながら真剣に話を聞き入れている。


 「結局はスクリスの人数が減るようなマネをしなければ良いだけなのだわ。例えば外の酔っ払いが絡んで来たら殺さない程度にボコボコにしたら良いかしら」


 「ベローズ様、出来る限り数日内で完治する程度に収めていただければ幸いです。気絶した者の顔面につま先蹴りはいささかやりすぎかと……」


 「目玉も鼻も潰れていないのだから問題ないなのよ」


 至極当然とした堂々たる態度のベローズに組合長は恐る恐るツッコミを入れる。その豪然たるベローズの態度は吸血族が故か貴族が故か。外見のみではその純然たる武闘派ぶりは推測が難しい。シオンはその餌食になった者に心の中で合掌し「こんな時はご冥福をお祈りします?」と明後日の方向の感想を抱く、割と面の皮は厚い。


 「話が逸れましたね。ではどんな事柄が金銭になるかご説明いたします。まず単純に魔物を討伐し、その討伐部位を組合に証明として届ける事ですね、これは基本的にベローズ様が行われております」


 「わらわは夜に動くのが基本なのよ、だから昼間の依頼を受けるのが難しいからその形を取っているのだわ。夜間に見敵必殺はわらわ達吸血族の得意分野なのかしら」


 「そして次にドノイス等、食肉になる魔物を討伐、そしてそれを組合にまで持って来る事ですね、それ以外には村の雑用で日銭稼ぎが主になるかと存じます。あちらにその依頼が書かれた紙片が張り付けられている板がございます」


 その方法はベローズがルワンで行っていた行動そのもので、魔物討伐と食料確保を兼任している効率の良い方法である。そしてシオンとニーアは依頼の張り付けられた板の方を向いたが文字が読めずにそれを断念した。


 その後、細かい話を組合長に聞き、ベローズがたとえ話で捕捉する形を取る事でより良く情報を吸収し終えた。


 この日より3人の冒険者としての生活がひっそりと始まる。


ランクとかは無いですw


組合の営業形態はスクリスの村の商人やこの地域の領主によって支えられています。基本的に危険を伴うなんでも屋ですねw

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