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第11話 獣成

 一見のどかな風景が続く、チチチと小鳥が一鳴きして草むらから飛び去った。陽気は暖かで風がさわさわと木の葉を揺らす。


 「ぜぁっ!」


 ニーアのナタの一閃で小汚い魔物、フェブリの首が飛ぶ。首の離れた胴体は地面に力無く倒れピクピクと痙攣しながら、その動きに合わせて血液が噴出する。


 これで都合5体のフェブリに遭遇し、それを難なく駆除した。その内の1体がシオンが仕留めた数となる。ニーアは血液が付着したナタを振り、乱雑にそこらに生えてる草で血を拭う。


 「ニーアさん、このフェブリなんですが、多くないですか?」


 「いいや、結構少ない方だよ。多い時は10匹以上が固まって行動してるんだよ、それだけなら手こずる事は無いんだけど革鎧や弓を装備してるのが居たら少しだけ警戒するね」


 現在の時間は昼を過ぎ、数時間が経った頃。隣の村にまで交易を行うため塩の壺2つを抱えながら移動している最中だ。荷物が少ないために荷車を使う事は無く、天秤棒のようなものに壺を括り付けて2人で持ち運びをしている。


 最初こそシオンは魔物に急に襲われたら壺を落として割れてしまうかも、とは思ったがそんな事は全くなかった。ニーアの鼻で遠くにいるフェブリの位置を察知し、落ち着いて壺を地面に置き、奇襲気味に先制する。それを繰り返しながら隣の村までの道を進んでいた。


 「んー、もうちょっとで隣村だけど、少しだけ急いだ方がいいかも」


 「どうしてですか?」


 「ほら、シオンに出会ったときに運命だって言ったじゃない、アレに似た感じがするんだよ、急げってさ」


 よく分からないままにシオンは塩の壺を担ぎ上げ、ニーアの言う通り急ぎの調子に合わせて走る。ニーアのこの感と言うべき行動と言動はまま起こる、村での生活がまだ数日間だがシオンはその内数回を見聞きしていた。故にシオンはよく分からないままにニーアが言うのならきっとそうなのだろうと思い、走る。




 「シオン、息を整えて。見えて来たよ、この事だったんだね」


 結論で言うならばニーアのカン、予感は的中していた。交易を行おうとしていた隣村が魔物、フェブリの一団に襲われていたのだ。幸いなことに村の防壁は堅固で、いたる所に武器が食い込んだ跡や矢が刺さった個所があるが、村の中にまでは侵入されていなかった。


 「息は大丈夫ですがフェブリの数が……30はいませんか」


 「持っている武器は石器だね、防具はナシ、特殊な個体も居ないようだ。シオン、よく見てごらん。フェブリ共は村の方向に集中してる、つまり私達には気が付いていないんだ」


 「奇襲、ですね」


 「ご名答。攻められてる村を助けないとあの一団に金属製の武器、革製の防具が渡る事になるんだ、すると近い内に私達の村にも大きな被害が出る、たちまちジリ貧になるのはもう説明したね?」


 「大丈夫です、怖いけど僕だってやれますよ」


 「死ぬ覚悟をしたらダメだよ、生きる覚悟をしないとね」


 ニカッとニーアが頼もしく笑う、シオンも理解をしているのだ、この魔物の一団を見過ごし、やり過ごした所で結局はどこかで戦いになる事を。なので出来るだけ有利な状況で戦い、数を減らすのが最善策と言える。


 シオンは自分の体に手を当てて確認する、防具は少しだけ余りのある革鎧だが相手は石器、革鎧の性能も確認済みでどうやれば切断されたり貫かれたりするかはニーアとの勉強により理解をしている。


 革鎧をナメてはいけない。単純に腕に巻いただけの皮ベルトのような物でも金属製の刃物ですら切断することは困難なのだ。刃物とは当てた後に「引いて」切る物であって、ただ力任せに振り下ろしただけではそうそう切断出来るような物ではない。


 「シオン、行くよ」


 ニーアの小声の号令にゆっくりと茂み伝いに魔物の一団の背後を取る、運の良い事にまだ気づかれてはいない。奇襲とは声を出さずに、気付かれず、一気呵成に背後を、もしくはあり得ない位置から襲い掛かるモノ。


 功を奏す。


 ギュッと口を一文字に結びソロリと打って出る、2人共に剣ナタを片手に魔物の一団の最後尾、木製の弓矢を持った個体を狙う。


 この時シオンは日本に居た時にも味わったことの無い感覚になっていた。心臓の鼓動が消え去ったかのように静かに、どうしたら魔物、フェブリを効率よく一撃で倒せるかを冷徹に考え、そして思った通りに体が自由に動く感覚。時間がゆっくりとスローモーションのように流れているように感じた。


 2人の剣ナタは最後尾のフェブリ2匹の首を同時に飛ばした。肉に刃物が食い込む感触、骨が切断された手ごたえ、それに構っているヒマもなく次の標的に狙いを定める。首を落とし血を噴き出したフェブリが倒れるより早くシオンは、ニーアは新たな獲物の首筋に剣ナタを打ち込む事に成功した。


 そこで異変に気が付いたフェブリが後方、シオンとニーアの位置を振り返る。一瞬だけ何が起きているのかサッパリ理解出来ない表情を浮かべ、背後を取られていると理解し焦って跳ねた。それを見た周りのフェブリが反応し振り返る。


 「ギャァイッ!」「ジィギッ!」「ギジャッ!!」


 混乱がフェブリの一団を包み込んだ。フェブリ側の思考はこうだろう、今まで一方的に攻めていたのに何故背後に……。硬直し、腰を抜かし、思考が追い付かず、混乱は一瞬だけ戦いの時間を止めた。


 そのスキを狙っていたワケではないが好機と捉えニーアは切り札を開放する。




 うゥぉおおおおおアアアーッ!!




 混乱の色が強い魔物の一団は更に凍り付いた。天に向かい咆哮するとフェブリは体から魂が抜けたように直立する。同時にニーアの腕が、体が、足が肥大化し、群青色の二足歩行の狼のような姿になった。


 「獣成」先祖返りのようなモノで、より魔物のような、獣のような姿に自在に変わる事が出来る。その際筋力の大幅な増加、強力な爪、牙、金属製の武器をも通さない体毛がその者に備わる。


 日本で、地球で表すところの狼男、ウェアウルフ、ライカンスロープ、それが「獣成」紛う事無き化け物の力をニーアは纏った。


 硬直したフェブリの頭をニーアが鷲掴みし、まるでトマトを握り潰すかのように簡単に、他愛もなく、無慈悲に、頭を砕いた。その体を、頭の潰れたフェブリを持ち上げ、事も無げに集団のド真ん中に投げ込む。砲弾が着弾した時のような轟音と共に血が、肉が、内臓が飛び散り、数匹のフェブリが吹き飛んだ。


 夕日の朱、夕暮れ空の朱、大地を染める赤。




 殺戮が幕を開ける。




実は半分ほどタイトル回収w


シオンはこのニーアの姿を知っています、うかつに目を輝かせ「カッコイイ……!」と言ってしまったためにprprされてしまいましたw

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