小さな庭で
最後に少しだけ……
色とりどりの花が咲き乱れる私の小さな庭。
「母様〜、丸くて可愛い虫いるぅ」
私に似た顔の青い瞳の娘が庭をかけている。
大人にとっては小さな庭でも彼女にとっては未知の草花や生き物が住まう初めてがいっぱいの庭。
「久しぶりにここへ来たけれど、エリカもライラックも相変わらず元気そうで良かったわ」
ガーデンテラスの白い椅子に腰掛けて、髪を短くし騎士の姿のリラが言う。
「久しぶりに会ったリラは騎士団長らしくなっていて驚いたよ」
リラは嫁に行くのが嫌で2年前にカルミア王子を説得し、姫の位を降りて臣下へ下り騎士になった。
この問題は当初、王族や貴族でもの凄く揉めるかと思ったけれど、リラの性格から彼女を無理に嫁がせる方が王族として厄介な問題を引き起こされると皆理解したためリラは騎士にすんなり治まった。
「それにハナモモさんとも上手くやっているようで良かった」
私はお茶を入れながらリラの隣に座る美しい黒い瞳と豊かな胸をした牛族の女性に言った。
牛族の女性ハナモモさんは以前私の誘拐事件の時に会った同じ誘拐被害者の女性。
残忍な獣人達に襲われたハナモモさんは男性恐怖症になった。それでその場から彼女を助け出しその後ハナモモさんを保護したリラに恋に落ちるのは当然の事の成り行きだったらしく、今は2人城の近くの屋敷に同棲中なのだ。
リラはハナモモさんと付き合い出す前私に
『ハナモモはわたしのタイプの女性だけどエリカから乗り換えるわけじゃないから。わたしそんなに尻軽じゃないし…ただ…ハナモモは傷ついていて放っては置けないっていうか…わたし…彼女を守ってやりたいの』
と、私のことを気遣ってくれた。お城で暮らしている間ずっと私に好意を寄せてくれたリラ。だけど私はその気持ちに応えることは出来なかった。私はリラの事を親友だと思っていて彼女には幸せになって欲しいと願っているから、ハナモモさんがリラを好きになってくれて本当に良かったと思っている。
「それでエリカのそのお腹の膨らみは、もう2人目を生むの?」
リラがお茶を啜りながら言う。
「いや、もうって言ってもライラックを産んでから2年が経つし、そろそろ良いかなあって」
娘のライラックはリラが名付けてくれた。
アベリアは生まれた赤ちゃんに感動しすぎたのと、難産で体が動かせず出産後意識が朦朧としている私を見て彼にしては珍しくパニックを起こしていたらしい。
『本当に出産の時って男は頼りにならないわね』
って、アベリアの動揺ぶりをリラが話してくれた。
「お産婆さんに相談したら2人目は1人目よりも産みやすくなっていて、1人目を産んだ経験を体が覚えている今頃がいいんじゃないかって言われたの。あと、2人目は予定日よりも早く産む方法があるらしくて、赤ちゃんが大きくなり過ぎる前に産めるみたい」
リラは私の説明にあまり納得はしてくれなかったみたいだけれど
「ま、次もわたしが付いていてあげるからエリカは安心して赤ちゃんを産みなさい」
と出産を楽しみにしてくれた様だった。
「ところでアベリアはいつ帰って来るの?」
「昨日伝書が届いて予定よりも早く怪物討伐が進んでいるから2・3日中には帰宅できるみたい」
アベリアは今フヨウ隊長の傭兵部隊に再入して国の周辺に出没する怪物退治している。
アベリアの肩書きは『女神様からの使いエリカの守護役』で城からは騎士扱いでお給金を貰っているが、城の中に住む私は危険が全く無い。
4年前にアベリアと城に住みだしてから暇を持て余している彼に、フヨウ隊長からアベリアへ怪物退治へ同行して欲しいとお願いされた。フヨウ隊長が言うにはアベリアは強いし賢く戦の経験値も高いからと。
アベリアは城の中で私の側でやることが無くとっても退屈していて、本当は直ぐにフヨウ隊長の誘いに乗りたかったみたいだけれど、私には何も言わなかった。お城で私を1人きりにするのを心配して始めはその話を断っていたらしい。
ある時、黙り込んで空中を見つめてるアベリアの様子が気になって話しかけたら、最初はなかなか口を割らなかったが私がしつこく問い詰たら話してくれた。私は使用人さんやメイドさん、北の療養所で治癒した騎士さんなどお城の中に顔見知りが増えていたので、以前程寂しくもないし危なくもないからアベリアには私のことに気兼ねなく安心して討伐退治に行く様に進めたら
「そんな騎士や使用人と仲良くなっているなんて…エリカを俺から奪う奴がいるかもしれない…不安だ!
エリカから離れて城から出て行けるわけがない!」
と、アベリアが嫉妬を隠さず言うものだから思い切って私は彼と結婚したのだ。一応この世界でも契約がモノを言う。結婚という形をとる事により私達はこの世界で周囲に認められた夫婦になった。アベリアはわたしが彼のお嫁さんになった事で一先ず他所の男が私を彼から取らないと落ち着いたみたい。
私達が結婚する事をレンギョウさんはじめお城の人達は喜んで支度してくれた。
アベリアに甘やかされ愛される結婚生活は心身共に満たされ、偶に夫が仕事で家を開ける時にアベリアとの幸せを再度確認する様に噛み締めている。
私はリラとハナモモさんとお茶を飲みお喋りして、庭先を駆け巡っている娘を見て微笑んだ。
私は人族だからここの住民達よりは短命でいつかアベリア達を置いて死神様に会うけれど、その時が来るまでこの幸福に存分に浸っていたいと思う。
ここまで読んでいただき有難うございました。
これにて奴隷さんと隠棲生活は完結とさせていただきます。
作者にとっては4作目の小説ですがこの作品で初めて感想を頂けましたし、思っていた以上に沢山の方に読んでいただけてとても嬉しかったです。
本当に有難うございました。




