最果てのヴェローニャ②
迷宮都市ヴェローニャ。
かつて猛威を振った疫病の患者を時の王は捕獲し、この最果てのヴェローニャに連行したという。荒れ野へ捨てられた彼らは、灼熱の太陽を避けるため、土地を削り、地下都市を築き上げた。
王への怨念か、生への執着か、あるいは――病魔に侵され、忌み嫌われ、それでも自分達は生きていたのだという痕跡を残す為か、彼等は地下都市を広げ続けた。全貌を把握している人間は居ないと謳われるほど広がった地下都市は、いつしか迷宮都市と呼び名わされるようになった。
とはいえ、これは本当に大昔の話だ。
とうの昔に彼等を追放した王政は滅び、疫病は去り、そして迷宮都市だけが残った。
棄てられた人々が築いた迷宮都市へは、自然とある種の人々が集まるようになる。犯罪者、宗教戦争で敗れた異端者、少数民族の流浪の民、彼等は手を取り合い――というほど美しい話でもないだろうが、運命共同体の様に迷宮都市を広げ続けた。
悪意が悪意を招くように。憎しみが憎しみを生むように。絶望が離れがたいほど寄り添い合うように。既に横に広がり切っていた迷宮を、彼らは下へ広げ続けた。もっと広く、もっと深く、もっと暗い場所へ――終の果てに、彼らは世界の底を抜いた。
迷宮の最奥で一体何が起こったのか、正確な事を知っている者は居ない。という事になっている。とにかくある時、迷宮の最奥から今まで人類が目にした事の無いような怪物が溢れ出した。
亜人と呼ばれる動物と人間の混血種のような生き物、醜悪で巨大な蟲、軟体の不定形生物、物語の中でのみ語られていた悪鬼や巨人、そして、死者たち。
人は、冥界に続く迷宮を慌てて塞ごうとはした。だが、一度溢れ出した災厄を再び仕舞うことが出来ないことは神話の御代から決まっている。
人が迷宮を崩せども崩せども、中から怪物達は迷宮を作り直し、世界へ溢れ出して行った。多くの者が殺され、土地を怪物達に奪われて、ようやく人は手を取り合い迷宮の封印に乗り出した――




