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転性剣士商売  作者: 明之 想
第一章
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第十四話  救出


 でかい!

 3メートル以上ある。

 体高も2メートルくらい。

 成体か!?


 叡竜(えいりゅう)の成体が人を襲っている。

 しかも、数匹いるぞ!


 もっと、はやく!!

 

 よし、2倍速だ!


 幸い魔法はほとんど使っていない。

 たっぷり魔力は残っている。

 このあと、魔法攻撃も可能だろう。


 2倍速を使って、さらに速度を上げる。


 現場に到着する直前に2倍速の効力は切れた。

 でも、もう間近。

 水魔法で、水弾を3発用意する。

 訓練によって、今の俺は3発までは同時に用意することができるようになっている。


 叡竜は2、3と4匹か。

 人は・・・4人いるな。


 右手に二人の男性。

 一人は剣で、一人は棒で2匹の叡竜に対応している。

 苦戦はしているが、まだ持つかな。

 怪我は・・・、負っているようだ。

 長くは持たないか。


 左手には、男と女一人ずつ。

 二人とも短剣だけ。

 まずい、男がやられた。

 叡竜の爪で引き裂かれたぞ。

 女性の方も。

 やられる!?


 少し遠いが。

 時間が無い!


「水弾!!」


 まず、1発を女性に襲いかかろうとしている叡竜の横腹に。


「!&%$!?」


 咆哮が響き渡る。

 腹に直撃だ!!


 でも、倒れない!?

 さらに猛り狂って、再び女性に襲いかかろうとする。

 さすがに、一撃では無理か。


 だが、もう適距離だ。

 今度はピンポイントで狙えるぞ。


 頭に照準を定め。


「水弾!」


 的中!

 叡竜が声もなく沈んだ。


 やった!

 今度は倒れたな。


 女性は・・・、無事。

 俺に気付いたか、驚いた表情だ。


 よし、残っている1発は、どいつだ。

 右手の方はまだ大丈夫か。


 左手は・・・。

 爪で切り裂かれた男、転がっている。

 そこに、叡竜が・・・。


 よし左手だ。

 その叡竜の左頭部に狙いを定め。


「水弾!」


 倒れた。

 こちらは一撃。

 頭なら一撃だな。


 次に右手。


 詠唱している余裕はない。

 虎徹を取り出し、駆け出す。


 その瞬間。

 叡竜の口から炎が!!


 炎が剣を持つ男へと放たれ、さらにもう1匹の叡竜からも炎が放たれた。

2つの炎に焼かれる。


「ぎゃぁぁぁ!!」


 つんざくような悲鳴。


 間に合わなかった!

 叡竜が炎を吐くとは聞いていたが、ここでか!

 くそぉ、間に合わなかった!!


 炎への恐怖を怒りが上回る!


 音が消えた・・・。


 右手の叡竜2匹。

 手前の1匹に向かって踏み込み、

 刃を下にして、鞘から虎徹を抜き放ち、

 そのまま下から叡竜の首を斬り上げる。

 

 手にかかる抵抗は・・・、無い!


 両断!!



 叡竜の首に止まることなく突き抜けた刀身を、返すやいなや奥にいたもう1匹の叡竜に突進。


 一瞬で間合いに入る。


 俺に気付き振り向いた叡竜が繰り出す一撃を右に避け。

 叡竜の首を、右上から斬り下ろす。



 一閃!!




 一瞬だったと思う。

 逆袈裟から袈裟斬りへと続ける要領で2匹を撃破。

 本当に数秒だったと思う。



 ・・・。

 なのに、救えなかった。


 2匹の叡竜の成体を水魔法で、残りの叡竜を虎徹の一撃で仕留めた。

 なのに、達成感も湧いてこない。


 人を救えなかった後悔は何より苦い。

 若くして両親を亡くしている俺にとっては、耐え難い。

 目の前の人を救えないことへの恐怖・・・。



 だけど・・・。


 落ち込んでいる場合じゃない。


 俺は学んだんだ。

 ケヘルさんを助けた直後の放心。

 同じ間違いを二度はしない。


 まずは、水魔法で男の火を消化。

 全力で消火!


 すぐに治癒魔法。

 治癒魔法は修練が足りていないので自信はないが、こちらも全力。

 全力で繰り返す。


 ・・・!

 よかったぁ!


 見た目ほどの火傷ではなかったのか、とりあえず外見上は治癒に成功したみたいだ。

 もう駄目かと思っていた・・・。

 ホント、よかった。


 いや、まだだ。

 まだ、一息ついている場合じゃない。


 次に、叡竜の爪にやられた男の怪我に治癒魔法を。

 こちらも思ったほど深い傷じゃない。

 すぐに回復した。


 残りの二人も、軽い怪我をしていたので、素早く治療。


 全てを終えた時には、俺の魔力はほとんど残っていなかった。


 足りてよかったぁ。


 2倍速、水魔法3発、治癒魔法数回。

 よかったぁ。

 本当に足りてよかったよ。



 っ!?

 周りの音が聞こえてくる。


 叡竜の炎に男が焼かれてからは、周りの音が聞こえなくなっていたのか。

 耳には入っていたのだろうけど、認識できていなかった。


 度が過ぎた集中。

 いや、冷静さを失っていただけだ。

 ・・・。

 こんなことでは、駄目だな。

 また、反省だ。



 さて、深呼吸。

 身体中に気を循環と。


 さらに、循環。


 息を吐いて・・・。



 よし、大丈夫。

 かなり落ち着いたかな。



 ということで。


「皆さん、大丈夫ですか?」


 あれっ、皆さん、どうしました?

 ポカンと口が開いたままですよ。


 変なこと言ったかな?

 ああ、そうか。

 全て治療を終えた後で、大丈夫ですかもないか。

 

 会話の第一歩を間違えると、次の言葉が出て来ないんだよね。

 まいったなぁ。


 なんて思っていると。


「「「「ありがとうございました」」」」


 いきなり4人でハモった。

 ズッコケそうになったよ。

 緊張感なんて吹き飛んだね。


 皆さんの開いていた口も塞がったようで・・・。

 よかった、よかった。


 で、それからは感謝の連続。

 口々、口々、口々にと、4人の口からお礼の言葉のオンパレード!


 いや、まあ、感謝されて悪い気はしないんですけどね。

 あまり言われると、ひいちゃいますよね。

 治療したとはいえ、怪我も防げなかったしね。


 そんな感じで一通り感謝された後。

 火傷を負った男性には馬車の中で休んでもらって。


 一応ね、それなりに治癒はしたと思うけど、俺の魔法による治療は心許無いものがあるので休んでもらいました。大丈夫だと言ってたから、まず大丈夫だとは思うけど。


 もちろん、残りの3人から経緯は聞きましたよ。


 この馬車はイズルクとレントを往復する定期運行馬車らしい。この世界のバスみたいなものかな。その馬車に乗り合って、レントに向かっていたところ急に馬が暴れだし、次の瞬間には馬車が横転していたそうだ。動転した乗客たちは、馬車からなんとか脱出を試みるも、その際に2人が叡竜の餌食になった。ここに及んで、叡竜に襲われたのだとやっと理解したらしい。そもそも、この結界街道では、魔物の襲撃に遭うことは稀で、ましてや叡竜がこの辺りに生息するという話も聞かない。まさか、叡竜が襲ってきただなんて夢にも思わなかったんだそうだ。とはいえ、叡竜なら結界の効果が無いのも頷けると。


 なんとか脱出に成功した乗客3人、馬車から放り出された御者。

 その4人が、馬車の外で見たのは、まさに絶望だったらしい。


 絶望という名に相応しい状況!


 1匹の叡竜ですら、この人数では対応することすら難しいのに、4匹もの叡竜!!


 死を覚悟したそうだ。

 とはいえ、何とか切り抜けることができないかと、立ち回っていたところに俺が現れた。


 そんな感じだそうです。




 そのあとは・・・。


 叡竜を超える衝撃だったそうです・・・。







主人公の肉体的特徴について。


所謂「両性具有」、「ふたなり」といったものではなく、

異世界におけるハンデ的な肉体的特徴だと思っていただければと思います。

主人公は、これからも男性的思考、行動をとっていきますので。



不快に思われた皆様。

今後もお付き合い下されば幸いです。

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