表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《純SFハイファンタジー》星を穿つ槍と、黄金のオムライス――放浪の戦術師とポンコツ戦闘メイド――  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

第23話:伝説の始祖鳥の卵を追え!

 ワゴナー号が辿り着いたのは、地図にさえ載っていない雲上の秘境『太古のゆりかご』。

 そこは、ゼノンが汚した下界の毒が一切届かない、純粋な魔力と巨大な原生植物に支配された未開の聖域だった。エルナの里を完全に浄化し、世界に真の平和をもたらすための最後の鍵――食べれば万病を癒やし、魂を浄化するという『伝説の始祖鳥の卵』がここに眠っている。


「……端的に言って、酸素濃度が薄すぎる。ハンス、環境維持システムを最大にしろ」

「言われなくてもやってますよぉ! あぁ、私の優雅な南国バカンスが、なぜこんな巨大なシダ植物に囲まれたサバイバルに……!」


 ハンスが青い顔で端末を叩く横で、ヴァネッサが大剣を担いで鼻歌を歌う。


「いいじゃない、ハンス。冒険の醍醐味よ! この卵を手に入れたら、私はカイに『世界一高価な朝食』を作らせて、そのまま新婚旅行に突入するんだから!」

「……勝手に旅の目的を書き換えるな!!」


 一行が最奥の祭壇へと足を踏み入れた瞬間、黄金の翼が天を覆った。

 現れたのは、黄金の体毛に覆われた巨大な鳥型獣。伝説の始祖鳥その人――守護獣『ガルダ』である。


『人の子らよ。我が魂の欠片である「卵」を求めるならば、力ではなく、お前たちの「絆の深さ」を証明せよ』


「……。……マスター。ガルダの魔力波形を分析。……直接戦闘は非効率です。どうやら、この地には古の『供物(料理)』の儀式が必要なようです」


 ゼロの分析に、リゼがエプロンをバサリと翻した。


「望むところですわ! メイドの絆とは、主人の胃袋を掴んで離さない執着心のことですもの! お掃除ついでに、この神域をキッチンに変えてみせますわ!」


◇◆◇◆◇


 伝説の卵を譲り受けるための、前代未聞の『秘境料理対決』が始まった。

 目の前に並べられたのは、ダイヤモンドよりも硬い『金剛ナッツ』、熱を加えると魔力爆発を起こす『雷光ハーブ』、そして、触れる者の感情を写し鏡のように吸収する『虚無の湧き水』。


「……なるほど。食材そのものが、こちらの技術と連携を試しているというわけか。面白い。……全員、配置につけ!」


 カイの『論理眼タクティカル・アイ』が青白く発光する。視界には、食材から放たれる魔力の奔流が「最適解」の糸となって浮かび上がっていた。


「ピノ! ワゴナー号の魔導エンジンを最大解放、熱量を調理用にバイパスしろ! ヴァネッサ、お前の剣気で素材の『魔力抵抗』を削ぎ落とせ!」

「任せなさい! 愛の重さで素材ごと両断してやるわ!」


 ヴァネッサの軍刀が金剛ナッツを宙へ跳ね上げ、一瞬で外殻にヒビを入れる。そこへリゼが超音速の踏み込みを見せた。


「掃除の基本は、叩いて、砕いて、磨くことですわ! メイドの剛力――『ダスト・クラッシュ』!!」


 リゼの拳がナッツを粉砕し、同時にゼロがその飛散する粒子を絶対零度の冷却で空中に固定。ピノが送るエンジンの爆熱と、ゼロの精密制御が激突し、食材の中で魔力の融解が始まった。


「ハンス、火力の暴走を止めろ! エルナ、お前の祈りでハーブの毒性を『旨味』に変換しろ!」

「了解ですよ! ああ、私の胃が、今まさに魔力爆発を起こしそうです……っ!」


 ハンスが胃を抱えながら、端末を狂ったように叩いて熱量を均衡させる。エルナがそっと手をかざすと、激しく放電していた雷光ハーブが、芳醇なスパイスの香りと共に黄金色に輝き始めた。


「……今だ! 始祖鳥の卵を……投下する!」


 カイが伝説の卵を手に取る。その殻が割れた瞬間、祭壇全体が天界のような眩い光に包まれた。


 カイのフライパンの上で、伝説の卵が踊る。


 ヴァネッサが削り、リゼが砕き、ピノが熱し、ゼロが整え、ハンスが耐え、エルナが清めた。その全ての工程を、カイの論理眼が一本の「味の線」へと収束させていく。


 ジュワッ、という音と共に、秘境の空気に究極の香りが充満した。

 

「……。……マスター。卵の凝固率、98.2パーセント。……最高の『ふわとろ』状態を検知。盛り付けを推奨します」

「……ああ。完成だ」


 黄金の皿に盛られたのは、それ自体が自転する恒星のように光を放つ、生命の輝きの結晶。


 ライスは、一粒一粒が琥珀色に輝き、秘境のスパイスの芳醇な香りを纏って宝石のように鎮座している。その上を覆うのは、シルクよりも滑らかで、オーロラのような光沢を放つ黄金の卵。表面は鏡のように艶やかでありながら、内側からは熱を帯びた「ふわとろ」の魔力が、呼吸するかのように波打っている。


 仕上げにかけられた『虚無の湧き水』のソースは、全ての食材の旨味を透明に透かし、見る者の唾液を限界まで溢れさせる、官能的なまでに深い輝きを湛えていた。


『――人の子よ。お前たちの絆の正体を見せてみよ。なぜ、そこまでしてこの卵を欲する?』


 ガルダの問いに、リゼが鼻息荒く一歩前に出た。


「決まっておりますわ! ご主人様への執着心、現在2000パーセント(当社比)突破! この卵で究極のオムライスを作り、ご主人様を胃袋から永久拘束するためですわ!!」


『…………は?』


 始祖鳥が本気で引いた声を漏らした。だが、エルナがすかさず涙ながらに故郷の窮状を訴え、カイが静かに皿を差し出す。


「あ、あわわっ! 違います、違うんですガルダ様!」


 エルナが慌ててリゼの前に飛び出し、地面に膝を突いて必死に訴えた。

「リゼさんは少し……いえ、かなり変ですけど、私たちの旅は、ゼノンさんが汚してしまった私の故郷を、世界を救うためのものなんです! この卵があれば、死にかけた大地がまた芽吹きます。どうか、里のみんなを助けるために、お力を貸してください!」


 エルナの瞳からこぼれ落ちた一筋の涙が、料理の上に落ちる。

 その瞬間、カイが静かにフライパンを煽り、卵を最高の状態でまとめ上げた。


『……ふむ。狂気、祈り、戦術。歪だが、これほど強固な「むすび」は見たことがない。……よかろう、食してやろう』


 ガルダが一節を啄んだ瞬間。その巨大な体が黄金の光に包まれ、静かに震えた。


『……っ。……懐かしい。この温かさは、世界が生まれた時の陽光か……。汚れきった下界で、これほどの純粋な「味」を紡げるとはな……』


◇◆◇◆◇


「お待たせ。……『星を穿つ黄金のオムライス』だ」


 ガルダから認められ、手に入れた一粒の卵を皆で分かち合う。


 スプーンを入れた瞬間、完璧な張力を保っていた卵の表面が震え、中から星屑のような魔力粒子が溢れ出した。半熟の層が、琥珀色のライスとソースに絡み合い、マーブル状の美しいコントラストを描く。


 それを一口に含んだ瞬間、脳を突き抜けるようなスパイスの香気が鼻に抜け、続いて卵の圧倒的なコクが舌の上で熱く溶けていく。まるで、太陽そのものを口に含んだかのような力強い滋味と、雪解け水のように清らかな後味。


「……あ。……あぁぁ。ご主人様の味が……宇宙の広さで迫ってきますわ……」


 リゼが恍惚とした表情で、そのまま砂の上をごろごろと転がり始めた。


「……。……多幸感、限界突破。……マスター。この味を分析しようとしましたが、データ化不能。脳内の全中枢が『幸せ』というログで埋め尽くされています」

「……美味しい。これなら、里の土も、みんなの心も、きっと元に戻せます」


 エルナの瞳からこぼれた涙は、もはや悲しみではなく、明日への希望だった。


「決まりね! この味こそ、私たちの祝言に相応しいわ! カイ、おかわり頂戴!」

「……卵は一つしかないと言っただろう。残りは里へ持ち帰るぞ」

「……やれやれ。お掃除の旅も、いよいよ大詰めだな」


 カイは、喧嘩を始めたリゼとヴァネッサを横目に、ワゴナー号のエンジンをかけた。伝説の味を胸に、彼らは最後の目的地へと走り出す。


(第24話に続く)


ぜひご感想をお寄せください。

また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の姫たちと世界を変える戦いへ!
《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は、六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~(代表作)
《ダークファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン外伝~断罪のプレリュード :黄金の残光と偽りの誓約〜
(あらすじ)
元・天才軍師候補のヒカルは、仇敵カインの謀略と人類の憎悪により「裏切り者」の濡れ衣を着せられ、処刑寸前にまで追い込まれる。人間社会に絶望した彼の前に炎の竜姫レヴィアが降臨し、救われた彼は、六人の竜姫(六龍姫)の感情をリアルタイムで把握する「絆の共感者」の異能に目覚めさせられる。
ヒカルの義務は、レヴィアの激情的な愛や、アクアの理性的な愛といった、制御不能な竜姫たちの愛の感情を音楽の和音(ユニゾン)として調律し、軍団の戦闘力へと変えること 。彼は裏切りのトラウマを抱えながら、まず古王軍(闇の竜族)との絶望的な劣勢を覆す内戦に勝利し、六龍盟約軍を完成させ、竜の世界の新たな王になることを誓うのだった。

その他の作品もぜひ!

《冒険者ギルドのお仕事ファンタジー》鉄の受付嬢リリアンのプロの流儀 ~冒険は、窓口から始まります~
《純SFハイファンタジー》星を穿つ槍と、黄金のオムライス――放浪の戦術師とポンコツ戦闘メイド――
メゾン・ド・バレット~戦う乙女と秘密の護衛生活~
軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする
スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討子、愛しき仲間たちと世界を救う~
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
【ライトミステリー?】没落お嬢様の路地裏探偵事務所~「お嬢様、危険です!」過保護なメイドと学者と妖精に囲まれて、共感力と絆で紡ぐ、ほのぼの事件簿
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ