ゴブリンパーティーにようこそ
門扉に攻撃をするゴブリンを踏み潰す勢いで落下する。
ゴブリン達は俺に気づくと蜘蛛の子を散らすように落下地点から逃げる。
草地に着地すると胸を張り威風堂々と立ち周囲を見回す。
唐突に強風が吹き、正十芒星の紋章が刺繍された白いマントが風になびいた。
風が緩やかに、そして風が収まると円を描くように囲んでいるゴブリン達の殺気が一気に膨れ上がった。
「いくぞ!【帯電】」
白虎のスキル【帯電】を使う。
『バチッバチッ』と青白い雷光が発生し、みるみる身体全体を包み込む。
「「「「「ギョオォォォ」」」」」
周囲にいたゴブリン共が俺の異変を察知し驚愕の声を上げた。
囲んでいたゴブリン共が手に持った武器を一斉に挙げ俺を襲撃しようと迫る。
「続いては【放電】(ディスチャージ)だ!」
俺の身体を守護するように覆っていた電光が一瞬にして周囲へ広がる。
球上に広がった雷光の波が一斉に迫るゴブリンをのみ込むと『バチッ‼︎』と大きな音を発した。
「「「「「「ギャッ‼︎」」」」」」
ゴブリン達の身体は仰け反り草地に倒れた。
倒れたゴブリンの身体からは薄っすら煙が見え、痙攣するように震え立ち上がってこない。
「ちょっと強すぎたか……。魔力をもう少し抑えないとな」
「主人殿、雷属性魔法を使うとはよく考えたの〜」
何時も呆れるか馬鹿にすることしか言わないノエルが珍しく褒めた。
ノエルには分からないだろうが、スパイ映画とかでよく見るスタンガンを模倣しただけだ。
身体に目立った外傷も付かず、対象者を気絶させることができる。
今回のミッションには【放電】スキルがベストだろう。
「白虎が丁度いいスキルを覚えてくれたおかげだな」
『ボクえらいでしょ‼︎イッパイほめて〜』
白虎の幼女のように可愛らしい声が響く。
ーーこの戦闘が終わったら甘え上手な白虎をこれでもかというくらい可愛がってやろう。
一瞬で20匹余りを行動不能にされたゴブリン達は躊躇い足が止まる。
「俺は全知全能の神ゼイスの使徒レイだ!無益な殺生はしたくないんだ。今すぐ撤退するなら見逃してやる!」
怯んだゴブリンに声を大にして言い放つ。
周囲のゴブリンは強敵を前にどう動くべきか隣の仲間と見合っている。
「やはりゴブリンには実力差を図ることは出来ないのか……」
「そんなことはないぞ。その辺は強者より弱者の方がわかるものだ。ただ妾が思うにあのゴブリン達は何か変じゃな……」
「何が変なん……」
『ギャオオオオオオオオオ‼︎』
俺がノエルに質問する途中で獣のような咆哮が森に響いた。
声は敵陣の本体と言うべき後方から聞こえた。
声を聞いたゴブリンは小さな頭を振り俺を睨む。
「「「「「「ギョオォォォ」」」」」」
ゴブリンの瞳は赤々と輝き唸り声をあげ次々と攻め込んでくる。
「クソッ。やはり引かなかったか!」
独り言ちると【放電】でゴブリンを攻撃する。
放電範囲にいるゴブリンがバタバタと膝から崩れ落ちた。
後ろにいたゴブリンは今度は恐ること無く倒れた同朋を踏みつけ俺に迫る。
先程より鬼気迫る攻撃をするゴブリンに軽く恐怖を覚える。
「こいつら玉砕覚悟かよ!恐怖心とかないのか……」
「主人殿、此奴ら狂人化しておるぞ。もう何を言っても意味がないの」
ーー少し実力差を見せつけたら退散すると思っていたが面倒なことになった。
三度目の【放電】でゴブリンを倒すと、身体を纏う雷光が消えた。
切れ間なく襲撃してくるゴブリンを回避しつつ、続けて【帯電】し【放電】をお見舞いすると敵陣奥へ攻め入った。
◇
櫓門の上からゼイス神の使徒レイさんの姿を無意識に目で追っていた。
雷属性の魔法をあんなに器用に使うなんて、レイさんの実力と機転は素晴らしい。
自分の魔法だとあの数のゴブリンを無力化するのは難しいだろう。
いっそ殲滅させる方が簡単だと言うものだ。
「凄い……」
私の口から自然と賛辞が出た。
「器用に魔法を使っているな。神の使徒というのもあながち嘘ではないのかも知れないな」
長老が同族以外を褒めるのは珍しい。
ーー同族でもあまり褒めるることは無いのに……。
「長老、防御魔法を外してもいいでしょうか?倒れているゴブリンを拘束しておきたいのです」
「うむ。使徒殿がせっかく身動き出来なくしてくれたのを無駄にはできないな」
長老は門前で防御魔法を紡いでいるエルフ達に解除させ、手の空いている者にゴブリンの拘束を指示した。
「長老、私も行きます!」
「わかった。それでは皆の者気をつけて行くのだぞ」
長老は長杖を振って私たちに魔法をかける。
「【空中浮遊】」
長老の魔法を付与された門上にいるエルフ達は次々と門外へ飛び出す。
5mはある高さの門上から飛び降りた者達は魔法の効果でゆっくりと地面へ降下する。
エルフ達は倒れたゴブリンを注意深く集め、ロープで次々縛って拘束していく。
「レイさん、私もゼイス教の信者。貴方と一緒に戦います!」
私は倒れたゴブリンの処置を仲間に任せレイさんのいる敵陣に向かった。
◇
大半のゴブリンを倒し、残りは眼前のゴブリンだけ。
普通のゴブリンよりふた回りは大きい4匹のゴブリンとそれよりも大きいゴブリン。
4匹のゴブリンの手には大きい両刃直剣を握り、金属製の胸当を装備している。
もう1匹のゴブリンは頭に輝く兜を被りマントを纏い、直剣と装飾された胸当を付けている。
「主人殿。あのセンスの悪い兜を被っているのがゴブリンキングだの。あやつがこのゴブリン共を操っておるのだろ」
「じゃあ、あれを倒したら終了か……」
青白い雷光を帯びた俺と一定の距離を取って近づかないゴブリン。
ーー俺の【放電】する範囲内に入らないように距離を取っているか。意外と賢い……。
ゴブリンは手にしている剣を俺に向け、言葉を紡ぐ。
剣先に火球が現れ、火球が高速で俺を襲う。
俺は横に躱すと前方に駆け出し範囲内に入ると【放電】を試みる。
側面から【放電】しようと立ち止まった俺に別なゴブリンが火球を放つ。
それを難なく上に飛んで躱す。
「一気に倒すのは諦めよう……」
敵の位置を確認すると、空中で右手に魔力をためスキルを行使する。
「【雷球】」
ゴブリンと自身の間の草地に向かって放つ。
草地に【雷球】が直撃し地面を抉れると一面砂埃が舞い視界が悪くなった。
地面に着地すると同時に最後に火球を放った敵の位置に向かって高速で走ってゴブリンの懐まで迫った。
俺はゴブリンの胸当に手を当てると【放電】をして気絶させ、同様な遣り方で次々とゴブリンとゴブリンキングに接近し気絶させた。
暫くして土埃が晴れると、草地には全てのゴブリンが倒れていた。
ゴブリンキングが帯剣していた青い透明な刀身の剣は見た目が格好が良いので有難く頂いた。
「レイさんお怪我はありませんか〜」
後ろからエリスさんの弾んだ声がする。
振り返るとエリスさんは駆け足で向かって来る。
エリスさんはたわわな胸を上下に揺らして走る。
彼女は草に足をとられ盛大に躓いて、その勢いで俺の胸に飛び込んだ。
彼女の豊満な胸が当たり俺の心拍数が跳ね上がる。
「ちょ、ちょっとエリスさん大丈夫ですか」
「は、はい。レイさんにはいつも助けて頂いて……。
でも、これで終わったんですね」
エリスさんは離れること無く朱色に染めた顔を上げ、俺の顔を見つめる。
まるで仲のいい恋人同士の様に密着している。
ーー近い、顔が近いって!それに胸が凄く柔らかいんですけどぉぉぉぉ。
内心ではエリスさんをこのまま抱き締めたい衝動にかられるのを脆弱な理性でどうにか押さえつけると、彼女の肩に触れゆっくりと身体を離した。
「そうだね。これで全て終わっ……」
「ってないぞ。主人殿‼︎上をみるのだ」
ノエルが急に俺の会話に割って入り、今まで聞いたことがないくらいの大声で叫んだ。
空を仰ぐと晴天の空には巨大な魔法陣が浮かんでいた。




