ChapterⅤ:バラと家族と親友と ①
【Volume1―ChapterⅤ:バラと家族と親友と】
わたしは気がついた時には一人だった。
赤いの土の上でただ一人。
わたしの名前がなんなのか、
どうしてわたしは一人なのか分からない。
わからないことだらけ。
でもわからないことを考えてばかりいるわけにはいかなかった。
名前もない、誰も側にいないわたしでも、
お腹は空くし、喉は渇く。
最初はどうして良いかわからなかった。
どうやって食べ物を手に入れれば良いか、わからなかった。
でもお腹は空く、喉も渇く。
そんな気持ちだと、もう食べられればなんでもよかった。
お店やお家の近くには時々色んな食べ物があった。
お腹が空いてばかりのばかりのわたしはソレを拾って食べた。
ほとんど酸っぱかったし、臭かった。
何回もお腹が痛くなって、何日も眠れないことがあった。
だから、だんだんとお店やお家の横から食べ物を探すのが怖くなって、止めた。
でもお腹は空くし、喉は渇く。
でも酸っぱくて臭い食べものは怖い。
でもお腹は空くし、喉は渇く。
だけどナイフがわたしを助けてくれた。
わたしは牧場でおじさんがナイフで動物を殺しているのをみた。
おじさんは殺した動物をナイフでバラバラにした。
バラバラになった動物は火で焼かれて美味しそうな食べ物に変わった。
わたしも動物が食べたくなった。
おじさんが使っていたナイフが欲しくなった。
だから夜中におじさんの家からナイフを盗んだ。
ナイフの薄いところをなでたら指が痛くなって血が出た。
わたしは初めてナイフのここを使えば、ものが切れるとわかった。
ナイフのここで動物を切れば、
ご飯が食べられると思ったわたしは嬉しくなった。
それからわたしは色んな牧場に忍び込むようになった。
牧場にはたくさんの牛や馬がいる。
最初はたくさん食べたいと思って大人の動物を狙った。
でも大人の動物は私よりも強くて、全然食べられなかった。
だけど小さい動物は大丈夫だった。
わたしの背でも首にナイフが刺せた。
小さいから小さい私でもなんとかできた。
最初に食べた子馬のお肉の味は今でも忘れられない。
生暖かくて、柔らかいお肉は酸っぱくて臭い食べ物と全然違った。
初めて子馬を食べたとき、子馬は変な目をしていた。
目が真っ赤に染まって、細くなって、
わたしのことをずっと見ていた。
不思議だったけど、わたしは気にせず食べた。
牛や馬はいつもそんな目をしていた。
なんでそんな目をするのか、わたしはわからなかった。
でも分かる日が来た。
ある日、いつものように馬を食べていると、
牧場のおじさんが銃をもってやってきた。
わたしは急いで逃げたけど、お腹を銃で撃たれた。
とても痛かった。
気持ち悪かった。
真っ赤な血がいっぱい出た。
なんとかおじさんから逃げたわたしは川に映った自分の目を見て
、これまで食べてきた馬や牛の気持ちがわかった。
きっと馬や牛はわたしにお腹を切り裂かれて、
痛い思いをしていたんだとその時わかった。
かわいそうなことをしてきたとわたしは思った。
いけないことをしていたのだと思った。
悲しくなった。
辛くなった。
悪いことをたくさんしてきたと思った。
だからもう、このままで良いや、と思った。
馬や牛もこんな目をしたあとは動かなくなっていた。
起き上がることもなかった。
ずっと寝ているみたいだった。
同じような目をしているわたしも、
きっとこれまで食べてきた馬や牛と同じようになる。
なんだか疲れたわたしはそのまま寝転がった。
だんだんと気持ち悪さがなくなって、眠くなってきた。
そんなわたしを白いお面を付けた大人が見ていた。
でも疲れたわたしは目を閉じた。




