10.2:至極当然の決着
「姫君、しばしお待ちくださいザンス」
決闘の幕を切るべく振り下ろされようとした、フィナンシェお嬢様の手。それを寸でのところで止めたのはベルゼブブだった。
水を差された格好になったが、お嬢様は不満そうな様子もなく、ただ目だけを向ける。
「何かしらベルゼブブ? 決闘のルールは1対1、互いが全力を発揮して望むこと。決着は一方が死ぬか負けを認めるまで。まさか悪魔王ともあろうものが、その確認をしたかったなどとは言わないわね?」
ベルゼブブは、聞く耳貸してくれたことをひとまず良しとするように、ニヤっと笑った。俺は何か嫌な予感がする。
スカトロ貴公子は芝居がったように大仰に頷いた。
「ベンダシタイナー。他ならぬ魔王の姫君が用意なされた決闘、もちろん無礼のないよう、ルールはきちんと弁えているザンス」
いや、そもそも決闘開始を妨げたことが無礼だろうと、俺が小さく呟いておいた。
もちろんそんな小声は聞こえていないベルゼブブは、話を続ける。
これまた、芝居がかったふうに両手を広げて
「しかしながら姫君。この決闘、このベルゼブブにとってはともかく、バルバドスにとっては意味が無いのではないザンショか?」
問うように言った。
ベルゼブブの言葉に、周囲がにわかにザワめいた。その反応にまた、蝿の王はニヤリと笑い、自らのヒゲを指でいじりながら続ける。
「もし万が一、この決闘にバルバドスが勝利して国王の座を守ったとするザンス。さすればもちろん、姫君の用意された決闘ザンスから、その約束に従ってこのベルゼブブは、その決定を粛々と受け入れ、バルバドスを国王と認めるザンス」
フィナンシェお嬢様が目を細める。
「それがバルバドスにとって無意味だと、そう考えた理由はなにかしら?」
「ひょっひょっひょっひょ。はい。もし万一、このベルゼブブが決闘で敗れ、バルバドスを国王と認めることになった場合ザンスが、その場合はすぐにこのベルゼブブ――」
ベルゼブブはヒゲを触っていた指を離し、
「戦争形式でネクロポリスに宣戦布告するザンス」
バルバドスを指さした。
ざわめきがどよめきに変わった。
その声を心地よしとするように、ベルゼブブは続ける。
「ヘーデルトベンデル。まぁ要するに、チンがまともにバルバドスと闘って負ける要素など万に一つもないザンスが、それでもバルバドスが、それを奇跡に等しい確率で手にした場合、チンはその奇跡をヌカ喜びに帰るべく大軍をもって攻めこむ。そういうことザンス。ヒョッヒョッヒョ」
俺は、昨日に見た『ステータス画面』の、ある一文を思い出した。
『身体から放たれる耐え難い臭気と、伝染力の凄まじい雑菌で神々を戦わずして退却させた経歴がある。この状態異常範囲攻撃が持ち味』
そう、そもそもベルゼブブは、決闘向きではなく戦争向きなのだ。
辛うじて決闘で勝利しても。
その後は戦争が始まる。
バルバドスは昨日に言っていた。
――もしも戦いがこの決闘形式ではなく、戦争形式だったならば、多くの国民を巻き添えにするようなことになったと思いますベイベー。だからバルバドスは、フィナンシェ様には感謝しても、責める気など毛頭ありませんベイベー。
バルバドスは、国民を巻き込みたくない。
だからベルゼブブの言葉には、最も折れてはならないバルバドスでさえ、大きな口を歪めて渋面している。
俺は舌打ちする。
嫌な予感の正体はこれだったのかと。
決闘のことばかりを考えていて、他の危険性や決闘の先についてまでは頭が回っていなかった。
――――くそ。
決闘に敗れて潔く引き下がるようなヤツかどうか、そんなもの、ハナからわかってたじゃないか。
「えらいのぼせとるな、ベルゼブブ」
声を発したのは、腕を組んだティラミスだった。視線が彼女に集まる。
「決闘に負けても戦争でネクロポリスに宣戦布告やって? ナマいいなや」
彼女は鋭い眼光で、リング上のベルゼブブを見据えた。
「本気のバルバドスはんと闘って負けて、それでまだ戦争できるような体力がある思っとんか? そんな浮かれとったら、腕一本なくすぐらいですまんで?」
敵対心むき出しに、ティラミスはそう言った。
しかしベルゼブブは、その暴言に近いような啖呵をきられても、怒りよりも驚きの目を剥いていた。
そして、信じられぬものを目の当たりにしたようにプルプルと指差しつつ
「そ、その声はスカリンざんすか!?!?!?!?!?」
「それは確かにその通りねベルゼブブ」
フィナンシェお嬢様の声。
まるでティラミスから注意をそらすように、お嬢様は言った。
ベルゼブブがすぐに目線を戻す。
お嬢様は、さも困ったと言わんばかりに眉根を寄せ、目を閉じ、ハァっと悩ましげにため息を吐いた。
「確かに。この決闘がバルバドスの勝利に終わったとしても、だからといってその後に、貴方がネクロポリスに宣戦布告してはならない理由にはならないわね」
と。
その言葉に、いよいよ観衆は静まり返った。
自分の意見が肯定されて機嫌をよくしたのか、ベルゼブブだけ、「ひょっひょっひょっひょ」と耳障りな笑い声を立てた。
彼女は続ける。
「そしてバルバドスとベルゼブブの実力差を考慮した場合、貴方がこの決闘に勝利するのは目に見えているのだけれど、そのうえバルバドスが万一勝利しても国王安泰ではないだなんて、それではあまりにも一方的過ぎて、この催し物がつまらなくなってしまうわね」
フィナンシェお嬢様があまりにも決定的なことをいったせいか、エカエリーナがよろめいて倒れてしまった。
ケロンが「ママ!」と彼女に飛びつく。
バルバドスも気が気でない様子で、そしてティラミスは握りこぶしを作って震えていた。
そしてそれがさも愉快だと言わんばかりに、ベルゼブブはいっそう高笑いの声を大きくした。ひょっひょっひょっひょワーデルと。
「さすがは姫君ザンス。このベルゼブブが言おうとしたことを、完璧に先読みしておられる。フンバルトモレール。いやはやもう、流石という他ないザンスね。ひょっひょっひょっひょ」
「そこで提案なのだけれどベルゼブブ」
お嬢様が言う。
ベルゼブブは笑いながら頷く。
「ひょっひょっひょ、ワーデルモーデル。なんでございますかザンス、姫君。まさか提案というのは、この決闘をこの土壇場で中止して、無条件にバルバドスへネクロポリスを渡せ、などと今更仰るのではないザンスよね? いやいやこれは、大変失敬したザンス。そんな魔族の風上にもおけないようなことを、よもや魔王の姫君たるフィナンシェ様がおっしゃるわけなかったザンスね。ひょっひょっひょ」
ベルゼブブは、『Arcadia戦姫ニュース』のカメラに視線を送りつつ、痛いところを突いてやったと言わんばかりの顔で言った。これは全国放送であることを強調するように、だ。
フィナンシェお嬢様は肩をすくめる。
「いいえまさか。この決闘は予定通り、このフィナンシェ・エルヒガンテの名において執行するわ。ネクロポリスの王権を賭けてね。しかしけれども、このまま決闘を行ってもつまらないのは、貴方の指摘した通りね」
スカトロ貴公子の顔がこの時、我が意を得たり、というような表情になった。
「ひょっひょっひょ。そこでこのベルゼブブから提案――」
「さて~」
お嬢様が、ベルゼブブが『提案ザンス』とでも言おうとしたかのようなセリフを、ごく自然に、しかしキッパリと遮った。
そしてまるで、小さな歯痛でも患っているように頬に手を当て、困ったような様子でこう言った。
「さてさて、これはたいそう困ったわ。一体全体どうしたものかしら。ちなみに私からの提案というのは、もしも万一この決闘にバルバドスが勝った場合、貴方が二度とネクロポリスに手を出さないとそう誓うのなら、私が貴方の妻になってあげるとでも言おうと思ったのだけれど、やはりそれもいまいちかしらね。さてさて、果たして。何かこの決闘を面白くする名案でもないものかしらね?」
空気が再び、一変した。
観衆が息を忘れるほど凍りつき。
ティラミスは手からグリモアを落とし。
バルバドスも槍を落とし。
エカエリーナはケロンとセットでカエルの置物のようになり。
そして俺は、あまりにもありえないことを聞いた自分の耳をひっぱていた。
――もしも万一この決闘にバルバドスが勝った場合、
――貴方が二度とネクロポリスに手を出さないとそう誓うのなら、
――私が貴方の妻になってあげるとでも言おうと思ったのだけれど、
だって?
感情を殺して冷静な思考で詰めてみる。
フィナンシェ・エルヒガンテは魔王エルヒガンテの一人娘。
その彼女を妻にするとは、実質的に次期魔王の地位を確約されるに等しい。
すなわちそれは、世界を治める未来を保証されたも同然である。
それはネクロポリスの王権などという、そんな次元ではない。
――何を言っているのだお嬢様そんなことしたら世界が、いや。そうじゃなくて。
そうじゃなくて!!!
あんなの夫にするとか、
冗談でも言ったらダメでしょう
寒気の伴う発汗を催している俺だが、ここは自分をさておき。おき。
いまベルゼブブの前に、無造作に放られた提案が、そんなトンデモないものである。
そしてそのトンデモナイものを得るために要求されたのが、
たったの、『バルバドスが勝った場合、ネクロポリスにはもう手を出さない』
たったの、それだけ。
――さてここで。
そもそもこの決闘開始を止めたのはベルゼブブであり、バルバドス勝利後の『もしも話』を持ちだしてきたのもベルゼブブである。
その点から推察するに、ベルゼブブ自身、『バルバドスが勝ったらネクロポリスに手を出さない』ことを条件に、何かふっかけてくるつもりだったと考えられる。
現にあのスカトロ貴公子は、『そこでこのベルゼブブから提案――』と言いかけていたのだ。
――しかしそれが、いかなる要求であれ、
次期魔王ほどのものではあるまい。
「そ、そ、そ、そ、そ、そ」
ベルゼブブの声が、震えている。
のみならず、全身が震えている。
やはり、この次期魔王という絶対的な権力の前には――
「姫君が奥さんとかホントざんすかーー!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
いや違った。
目がハート型。
鼻息出しまくり。
足はタップダンス。
「フィフィフィフィフィフィフィフィフィフィフィフィフィ、フィナンシェ様が!!!!!!!!! ち、ちんの!!!!! お、お、お、奥さんってホントざんすかーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
この反応は、世界とか魔王の座とかそんなんじゃなくて、
フィナンシェお嬢様を妻に迎えるという、
そのトンデモによって、頭の中が面白くなっている様子だ。
いや、こういう反応になるのは正直俺は理解できるし、共感もできる。
同性の俺でさえ、トキメイてしまうほどの彼女なのだ。
いわんや異性。
あるいは人によって、『世界の支配権【風情】』では、フィナンシェお嬢様の魅力の足元にも及ばない。
そう言い切る手合いもいることだろうと思う。
暴走興奮タップダンス状態になっているベルゼブブなのだが、
しかしお嬢様はさもアッサリとこう言う。
「そう思っていたのだけれど、こんな願いはつまらないわよね。やめたわ」
そしてサラリっと血色の髪を手の甲で流した。
ベルゼブブのタップダンスが終了。
鼻息が栓をしたように収束。
ハート型の目は豆粒みたいに極小化。
なんていうか、
分かりやすいぐらい、
『宝くじ一等の当選番号ゲット、ただし一日期限切れ』
みたいな顔になっていた。
そんな急転直下変貌にも、一切合切構わぬ様子で、フィナンシェお嬢様は小首をかしげてみせる。
「ところでベルゼブブ、貴方にも何かこの件で提案があるような様子だったけれど、何かしら?」
その瞬間、ベルゼブブの頭の中は間違いなく『チャンス到来!!』と書かれていたに違いない。
再び生気を取り戻したスカトロ貴公子は、否、取り戻し過ぎて目が血走って、顔がヒクついて耳から湯気出しまくって、なんかヤバイ感じのベルゼブブは
「ち、チンの! い、い、いえ! こ、こ、こ、このベルゼブブの提案というのは!!」
声を途切れ途切れながらにさっきの要望を
「ば、ば、バルボッサが!」
「誰それ?」
「ワーデル! し、失礼したザンス! ば、ば、バルバドスが万一! こ、この決闘に勝利した際は! 潔くネクロポリスから! ひ、ひ、引き下がる代わり!」
さっきのお嬢様がチラつかせた要望を
「ふぃ、ふぃ、ふぃ、ふぃ」
どうやら言おうとしているようで
「フィナンシェ様を妻に迎えたく存じますザンス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
言い切った。
今にも死にそうな勢いで、言い切った。
息はゼーゼー。
肩は激しく上下。
なんだかこの状態なら、バルバドスが危なげなく倒しそうだった。
周囲はもう、何がなんだか分からないといった様子で、ただ硬直して事態を見守るに終始している。エカリーナとか置物から銅像に変わっていた。
フィナンシェお嬢様は、たとえそれが自分からチラつかせたものとはいえ、しかしそれを差し引いてもトンデモないこの提案に対し、まるで親友から「来週どこか遊びに行こ」とでも言われたかのような気軽な表情で
「私は構わないわよ?」
アッサリと返答した。
瞬間、
「ケツカラデルドー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ベルゼブブの鼻血がジェット噴射された。
目が再びハート型になって耳から湯気が蒸気機関ばりに飛び出した。
このままだとカツラまで吹っ飛ぶんじゃないかと俺は思った。
そしてそのままタップダンスを始めながら
「とととっととととととととととととということは! ふぃふぃふぃふぃふぃふぃフィナンシェ様がチンの奥様ということは!!!!!」
俺は察した。
やはりフィナンシェお嬢様を妻にした暁には、自分は次期魔王になれるのかと、そこに目が眩んだのだろうと。
ギリっと奥歯を噛んでしまう。
観衆も意図を察し、危機感を表情に出していた。
スカトロ貴公子による世界支配など、
そんなの、
考えるまでもなくクソだろうと。
そしてその絶望を、ベルゼブブは興奮全開に言った。
「 チ ン の 夢 に ま で み た ス カ ○ ロ プ レ イ に 付 き 合 っ て 頂 け る ザ ン ス か ! ? 」
静まり返るどころか、空気が死んだ。
ここに著しいク○を聞いた。
観衆が地蔵になった。
たぶん、同じ『生き物』だと思いたくないという、そういう気持ちが働きまくったのだろう。この、筋金入りの変態とは。
空気。
うん、空気がやばい。
よりによって、
魔王の一人娘フィナンシェお嬢様に、
レッツプレイ スカ○ロ?
『ステータス画面』の多角的にクソの意味が理解できすぎて、
俺は地蔵さえやめてしまいたかった。
なにこのク○ゲー。
ティラミスとかショックのあまり、ローブの能力使わずにガイコツ化してるし。
「スカ○ロプレイね……」
フィナンシェお嬢様の、歌うような声。
その抑揚豊かな声で、美しい声音で、まさに歌うような声で、彼女がスカ○ロなどと言ったものだから、それだけでベルゼブブは死にそうな表情で悶えていた。そのまま死ねよ。
お嬢様は妖しく目を細めて、こう言った。
「私はまだそれを試したことはないのだけれど、そうなった暁には手解きねがえるかしら?」
ベルゼブブは鼻血を撒き散らしつつ宙を舞った。
グルグルグル、回転しながら宙を舞った。
「イッヒフンバルトモレールケツカラデルドベンダシタイナー!!!!!!!!」
天上から光のカーテンが降り注いでベルゼブブを照らし、どこからか教会の鐘の音と天使のハバタキ音が鳴った。おまえ悪魔ちゃうんかと。
しばしそのスカトロ演舞を見せられた後、ベルゼブブは鼻血を出したままリングに着地し、
「聞いていた通りザンス。バルバドス・ゲロッパーズ」
もうこの急展開に戦闘意欲をかっさらわれて、槍を杖代わりにしてるバルバドスに向き
「このベルゼブブ・ベベンベ・ベルナディス、もしもこの決闘に敗れることがあったなら、そのときはこのネクロポリスには一切手出ししないことを約束するザンス」
そうキッパリと言った。
その言葉を耳にした途端、バルバドスのギョロ目に再び炎が灯った。
その炎に込められた意味は、万一にも安泰した王座を得られる可能性が得られたからなのか
「勝手なこと言ってんじゃないぜベイベー」
違った。
バルバドスはぎゅっと槍を握り直し
「バルバドスは絶対に負けないし、フィナンシェ様は断じてお前なんかが寄り添ってもいいようなお方でないベイベー」
ギリギリっと柄を握りつぶすばかりの力で握った。そう、込められた意味は怒りだった。今頃になって腹が立ってきたのだ。
王が守るべき国民、その犠牲など気にもしないような宣戦布告や、
ベルゼブブ勝利の前提で進められていたこれまでの話に。
こうして話しかけられ、改めて当事者だと再認識した途端、怒りが沸き上がってきたのだ。
ヒュンヒュンヒュンと、槍が回される。
「この決闘では、ベルゼブブ。お前が『ネクロポリス』という名を聞いただけでも震え上がるほど、ゲッコゲコに叩き潰してやるベイベー!」
彼の熱は本物だった。
そしてその熱が、再び国民に熱気をもたらした。
再び歓声がわき、Arcadia戦姫ニュースのレポーターも、再び実況中継を始めた。
でもやっぱり、俺にはさっぱり、もう何がなんだか、分からない。
フィナンシェお嬢様は、昨日、この決闘は絶対にベルゼブブが勝つといった。
そして今、何を考えているのか。バルバドスが決闘に勝利しないと、彼女はベルゼブブの妻になってしまう、そんな取り決めをしたのだ。
このふたつを組み合わせれば、当たり前の結論が出てくる。
それは言うまでもなく、
フィナンシェお嬢様は、絶対にベルゼブブと結婚する。
そして、ベルゼブブが次期魔王になる。
――――悪夢だ。
俺はリング下からお嬢様を絶望的な眼差しで見つめていたら、彼女はそれとわからぬほど些細なウィンクで、心配ないわ、と合図した。
そしてそれから
「では改めて仕切りなおしね。今度は待ったなしで」
フィナンシェお嬢様はパーティーグローブに飾られた手をあげた。
ベルゼブブは腰からフェンシング――禁・刺突剣『ヘクソカズラ』を抜き払って構え
バルバドスはミツマタの愛槍『オジャマタクシ』を中段に構え
「はじめ!」
パーティーグローブの手が振り下ろされ、決闘が開始した。
ヴン、という羽音一つ。
ベルゼブブの姿が消失した。
次の瞬間、微動だにしていないバルバドスの眼前に、切っ先があった。
「万に一つもなかったザンスね」
ベルゼブブの醜悪な笑み。
呆然と自失気味に、ただそれを見ているバルバドス。
刺突剣がまっすぐ差し込まれた。




