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第100話 残された三人の魔術兵士! 揺れる魔術師たち

第100話 残された三人の魔術兵士! 揺れる魔術師たち


◆◆◆アレクの緊急招集


宮殿へ戻ったアレクは、馬車から降りるとすぐに側近を呼び止めた。


「今すぐ、ガル、アルセリア、セレスを呼んでくれ。それから、魔術兵士の隊長たちも全員だ!」


「かしこまりました!」


側近は急いで部屋を出ていった。


アレクは執務室に入ると、落ち着かない様子で歩き回った。


「もし、あの預言者の言うことが本当なら……」


船には、まだ三人の魔術兵士が残っている。


しかも、数日以内に動き出すという。


本当にそんなことがあるのだろうか。


アルセリアたちは、敵の魔術兵士を完全に封じ込めたと報告していた。計画は成功したはずだ。


だが、アレクの胸には不安が残っていた。


ヴェルザーク帝国は、強大な軍事力と魔術を持つ国だ。


アーリー帝国を一夜で滅ぼし、さらにオルガノス帝国まで陥落させた。


その力を考えれば、こちらの予想を超える魔術兵士がいても不思議ではない。


「確認するだけだ。何もなければ、それでいい……」


アレクは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


やがて、扉がノックされた。


「陛下、お呼びでしょうか」


ガル、アルセリア、セレス、そして魔術兵士の隊長たちが部屋に入ってきた。


全員がそろったのを確認すると、アレクはゆっくりと深呼吸した。


「急に呼び出してすまない。話しておきたいことがある」


一同は静かに陛下を見つめた。


◆◆◆預言者からの警告


「ある預言者から、重要な情報を聞いた」


アレクは慎重に言葉を選びながら話し始めた。


「敵国の魔術兵士は、全員が封じ込められたわけではない。敵の船には、まだ三名の魔術兵士が残っているというのだ」


その言葉に、アルセリアがすぐに反応した。


「陛下、それは本当でしょうか?」


「ああ。だから確認したい。アルセリア、君に聞こう。確かに敵の魔術兵士は全員、封じ込めたのか?」


アルセリアは迷いなく答えた。


「はい! 封じ込めに成功しました。あの魔術は完璧でした。敵の魔術兵士たちは、幻影王都から出られないはずです」


そして、少し不満そうに付け加えた。


「その預言者は、インチキ預言者ですよ、陛下」


ガルは腕を組んで考え込んだ。


「しかし、もし封じ込めができていないのなら、なぜ敵は今まで襲ってこなかったのでしょうか?」


「その預言者は、三名の魔術兵士が攻撃するタイミングを見ていると言っていた。数日中には動き出すともな」


アレクが答えると、セレスは何も言わず、静かに話を聞いていた。


そのとき、隊長の一人が不安そうに口を開いた。


「陛下、我々の部下は優秀です。あの作戦も、綿密な計画のもとで実行されました。預言者の言葉を信じるのですか?」


ほかの隊長たちも、互いに顔を見合わせてざわつき始めた。


アレクは手を上げ、彼らを静かにさせた。


「私は、君たちを信じていないわけではない」


そして、窓の外へ視線を向けた。


「だが、ヴェルザーク帝国は、あの大国を一夜にして滅ぼした。さらに、近隣の大国も次々と滅ぼしている。そのような国を相手にしているのだ。私は心配している」


アレクは隊長たち一人ひとりを見つめた。


「もし封じ込めが成功していなければ、戦闘態勢を解除するわけにはいかない。民を守るため、この国を守るためにも、その三名が本当に船に残っているのか確認してほしいのだ」


「陛下……」


「君たちの働きを疑っているのではない。万が一に備えたいだけだ」


隊長たちは姿勢を正した。


「かしこまりました。急いで確認し、ご報告いたします!」


「頼んだぞ」


隊長たちは一礼し、部屋を出ていった。


アレクは彼らの背中を見送りながら、まだ不安を拭いきれずにいた。



◆◆」アルセリアの怒り


部屋を出たガル、アルセリア、セレスの三人。


アルセリアは、納得できないという表情で足を止めた。


「まったく……陛下は、私たちを信じていらっしゃらないのね」


ガルが振り返る。


「どういう意味だ?」


「インチキ預言者の言うことを信じて、私たちの仕事を疑っているということよ! 私は確実に封じ込めたわ!」


アルセリアの声には怒りがにじんでいた。


ガルは落ち着いた声で答えた。


「確かに封じ込めは成功した。だが、全員を封じ込めたかどうかは、正直なところ分からないのも事実だ」


「何ですって?」


アルセリアの眉がぴくりと動いた。


「ガル、あなたまで私を信じていないのね!」


「そういうことじゃない」


ガルはため息をついた。


「ヴェルザーク帝国の魔術兵士は、数えきれないほどいたんだぞ。それに、一夜にして大国を滅ぼすことができるほどの力を持っている。相当な腕の魔術兵士がいるのは間違いない」


「だから何よ!」


「こちらの作戦に気づいて、隠れていた者がいたかもしれないということだ」


ガルは真剣な表情で続けた。


「アルセリア、お前に自信があるのは良いことだ。だが、自信過剰は自分を破滅させてしまうぞ」


「……!」


アルセリアは悔しそうに唇をかんだ。


そこへ、セレスがおどおどしながら二人の間に入った。


「あ、あの……」


二人がセレスを見る。


「ここで喧嘩して解決するなら、喧嘩したらいいと思うけど……でも、喧嘩しても三人の魔術兵士がいるかどうかは分からないよね?」


「セレス……」


「だから、今は本当に三名が船に残っているのか確認するのが先だと思うの」


セレスは遠慮がちにそう言った。


ところが、アルセリアはさらに顔を険しくした。


「あんたも私を信じていないのね!」


「えっ? そ、そういう意味じゃ……」


「確認なんか必要ないわ! 確認するなら、二人でしたら!」


アルセリアはそう言い残すと、足早に自分の部屋へ戻ってしまった。


セレスは困ったように、その後ろ姿を見つめた。


「アルセリア、大丈夫かな……」


ガルは肩をすくめた。


「やれやれ。仕方ない。セレス、昼食を済ませたら、俺たちで確認しに行くぞ」


「うん、分かった。でも、アルセリアが心配だよ……」


「あいつは、ほっといて大丈夫だよ。今は敵のことを考えるのが先だ」


ガルはそう言って歩き始めた。


セレスも小さくうなずき、その後を追った。


◆◆◆天界から見守る神々


その様子を、天界の水晶の鏡から神々が見ていた。


「ふむ……アルセリアは、ずいぶん自分の魔術に自信があるようだな」


ゼノが腕を組んだ。


アテナは心配そうに鏡を見つめる。


「自信を持つことは大切だけれど、確認を怠ってはいけないわ。敵の三人は、これまでの魔術兵士とは違う可能性があるもの」


「ガルとセレスが確認に向かうようだな。だが、敵がすでに動き始めている可能性もある」


オルフェの言葉に、フィオナもうなずいた。


「リリアのいる場所も、もっと注意して見守らなければならないわね」


神々の視線は、王国の別荘へと移った。


◆◆◆リリアが感じた異変


そのころ、別荘では――。


リリアがアリア王女と一緒に遊んでいた。


「ありあちゃーん! こっち、きてぇ!」


「りりちゃーん! まってぇ!」


二人は楽しそうに笑いながら、部屋の中を歩き回っていた。


けれど、突然リリアの動きが止まった。


「……?」


小さな手で胸元に触れ、周囲をきょろきょろと見回す。


何かがおかしい。


理由は分からない。


けれど、いつもの別荘とは違う、嫌な気配を感じたのだ。


「……ぱぱぁ?」


リリアは小さくつぶやいた。


その直後だった。


「いたい、いたい……」


リリアの目に涙が浮かんだ。


「いたいたい、いやぁ……」


アリア王女も、リリアの様子につられるように泣き始めた。


「ままぁ……こわいよぉ……」


その場にいた四匹は、すぐに顔を見合わせた。


ポポ、ピピ、リュリュ、ノクス。


彼らには分かっていた。


リリアが何かの異変を感じ始めている。


そして、戦いが再び始まろうとしていることも。


「ポポ、リリちゃんを守るのだ……!」


「うん。絶対に怖い思いをさせないよ」


「リュリュも、結界をもっと強くするのだ」


「……敵が動く前に、こちらも備える必要がある」


四匹は、それぞれの力を使えるよう警戒を強めた。


人間たちの前では、いつもどおりぬいぐるみと黒い子猫の姿を保ちながら。


リリアとアリア王女のそばを離れず、何が起きても二人を守れるように。


リリアは涙を浮かべたまま、小さな手をぎゅっと握った。


「……ままぁ……ぱぱぁ……」


まだ二歳のリリアには、これから何が起きるのか分からない。


しかし、王国を守るための戦いは、再び動き始めようとしていた。


そして、敵の船に残された三人の魔術兵士もまた、静かにその時を待っていた。


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