第45話:ドラムが上手く叩けるようになった
「ちょっと待て、ちょっと待って」
「何何? 何だよ?」
自主練中、えまちゃんがそう叫ぶ。なので、るかちゃんは彼女の方を見る。もえもベースを弾くのを止める。
「上手く叩けるようなったんよ」
えまちゃんはドラムスティックを持ちながら笑顔で万歳する。
「え、マジで?」
と、るかちゃんは言う。
「ねぇ、聞いて聞いて」
えまちゃんは今まで演奏してきた、ドラムパートを叩いてみる。確かに彼女の言う通り、リズムにズレが生じていない。叩き方も無駄が無く、とても洗練されている。
「すげぇ。めっちゃ上手くなったじゃん」
るかちゃんは彼女を褒める。ドラムセットに回り、彼女の肩を抱く。二人とも、とびっきりの笑顔だ。
「えまちゃんの裏切り者っ、へたくそ同盟を結んだ同志でしたのにっ」
もえは、涙目で彼女に指をさす。
「そんな同盟、結んだ憶えないよ?」
と、えまちゃんは叫ぶ。
「無いのかよ」
と、るかちゃんはツッコむ。えまちゃんの肩を抱くのをやめると、もえに近付き、
「それでもまぁ……もえちゃんはさらにベース、上手くなってるわ」
「うん、なってる」
と、さなちゃんはうなずく。
「うんうん」
と、えまちゃんは、笑顔で二回うなずく。
「……なってるんですかね。みんなに言われると嬉しいですが、やっぱりまだまだ、へたくそですよ……」
もえはうつむく。灰色のベースを抱きしめて、ネックを頬に当てる。
「そんなことないよ。ほら、今まで撮ったこの動画を見て。一日目はこんな感じだったんだよ? えまのも撮ってあるよ」
さなちゃんは、スマートフォンをもえたちに見せる。
「え、いつの間に?」
「撮ってくれとったんじゃ」
もえとえまちゃんは、体をくっつける。動画がよく見えるように、顔を前に出す。
「もえちゃんは集中すると、周りが見えなくなるからね。何度も呼びかけても気付かない。従ってこうして私が間近で、動画を撮っていても、やはり気付かない。ほら、一週間後、一ヵ月後、半年後と」
「……確かにわたし、上手くなってます……。動画で見るとよくわかりました」
もえは両手で握り拳を作る。
「そう。録音したり、動画を撮って客観的に見た方が、自分の成長具合がよくわかるの。もえちゃんも家で練習する時は、その習慣をはじめたら良いよ」
さなちゃんは、えまちゃんのドラムの動画に切り替える。えまちゃんも自分の成長具合に目を輝かせ、感動している。
「うん、そうしてみます。ありがとうございます、さなちゃん。……よーし……えまちゃんにへたくそ同盟を破棄されたので、新しい人を見つけて結ばなくちゃっ」
もえはスマホを素早く操作して、ツブヤイターで探す。すると「いや、結ぶな」と、るかちゃんはツッコんだ。
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