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【完結】夜風コーヒー  作者: 夜風セト
第2章 高校2年生編(2024年)

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第39話:生まれてはじめて美容院に入ったけど千円カット派

「――今、言うのも何だけどさ」


 と、るかちゃんはもえに近付き、髪に指をさすと、


「もしかして毎回、髪切る時、千円カットに行ってる?」


 これにもえはひどく驚く。一度も髪型に関しては何も言ってない。何故、わかったのだろうか? もえは段々と顔が赤くなってくる。


「せ、千円カットで何が悪いんですか?」

「わかるんだよ。美容院とか行ったことなさそうだなって」

「千円カットでも十分、綺麗にかわいく切ってくれるんですけど? 十五回行ったらスタンプカードが溜まって、百円引きになるんですけど?」

「そこまで訊いてない」

「あと千円カットって言いますけどね。値上げで千百円になりましたし、スタンプカードも終了しましたし、シャンプーしたら千百円どころじゃないですからね?」

「いや当たり前だろ。いいから今度、美容院行くぞ」


 るかちゃんはスマホを取り出すと、何か検索している。もえは横から覗き込むと、


「ちなみに美容院って幾らするんですか?」

「えー、八千円ぐらい?」

「え、たっかっ。あと二千円か三千円ぐらいあれば、アニメの円盤一枚買えるじゃないですか」

「何だよその言い方。マジでオタクだわ。じゃあ四千か五千円ぐらいのとこにすっか?」

「それだとゲームのサントラが買えるぐらいじゃないですか」

「知らねぇよ。もういいでしょ、四千円のとこで。明日、ここに電話予約しなさいよ? 日にち決まったらあたしに連絡してさ、一緒に行くから」


 彼女はその美容院のサイトのリンクをパインで送る。もえは自分の緑色のスマホで見る。とても煌びやかなインテリアで、オタクは絶対に入り辛そうな雰囲気だ。――もえは手がぶるぶると震えながら、


「何言ってんですか。一人で行けますよ」

「いや、美容師さんに変なこと言いそうで、嫌だから監視するわ」

「では絶対、ついて来てくださいよ? いいですか? 待ち合わせに遅刻したらわたし帰りますからね?」

「ちょっと何だよその偉そうな感じ。もういいわ、一人で行けば?」

「申し訳ございません。お願いいたします。一人で入るのとても勇気いります。一緒に入ってください。どうかお願いします」

「引っ張るな、服が伸びる」


 と、るかちゃんは突き放す。もえが彼女の服を強く掴み、深く頭を下げるけれど容赦なく。


「るか、ホンマにはじめてっぽいし、優しくあれこれ教えてあげんさいよ? 頑張ってね、もえちゃん」

「頑張れ、もえちゃん」


 えまちゃんとさなちゃんに応援されて、もえはお礼を言う。数日後、生まれてはじめて美容院にるかちゃんと入ったけれど、まず店内の匂いが違う。とても良い匂いで、ずっと居たい空間だった。それが恐らくシャンプーからだと彼女は思った。なので、美容師さんに何を使ってるか訊くと、優しく教えてくださった。髪のカットもとても時間をかけてする感じだ。千円カットが何故あんなにも早くて安いのかがよくわかった。カットが終わると、眉毛と服の時と同じく鏡に映った自分が、誰だかわからなかった。


「良いじゃん、良いじゃん。かわいくなった。もう千円カットに行きたくなくなったでしょ?」


 もえとるかちゃんの二人は店内を出て歩く。るかちゃんにそう訊かれたのでもえは、髪をいじりながら目を細める。


「とても良かったんですがね。ですが、千円カットの方がわたしは良いですね。美容師さんって何であんなにも個人情報、訊いてくるんでしょうか? 千円カットのおじさんは、何も訊いてこないから気楽なんですが?」


「……オタクくんさぁ」


 と、彼女に鼻で笑われ呆れられた。それでも祖母への借金返済とバイト代。それで残った貯金を考えると、千円カット愛が勝った。

最後までご覧いただき、

ありがとうございました

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