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【第143話】死の山調査に向けて




――――魔獣寄せには先の段階がある――――


 ゼロの意味深な言葉が気になった俺はすぐさま聞き返す。


「魔獣寄せは、ただ魔獣を呼び寄せるだけのスキルじゃないってことか?」


「一応そういうことにはなるけど……ごめん、僕が言えるのはここまでだ。グラドさんは魔獣寄せの真の力については極力自分自身で伝えたいと言っていたんだ。だから続きはグラドさんから聞いて欲しい。もしグラドさんが死の山でも見つからなかったら、その時は僕から伝えるよ」


 気になるところだがグラド本人からそう言われているのなら仕方がない。ただ、俺はゼロの言葉をきっかけにある事を思い出していた。それは全知のモノクルでグラッジを照射した際に出てきた『読めない古代語』だ。


 もし、ゼロの言う『魔獣寄せの先の段階』というのが、この部分に該当するなら早めに理解しておきたい。俺は全知のモノクルを取り出してグラッジを照射してみせた。


「ゼロ、これが昨日俺達の経歴を話していた時に名前を出した全知のモノクルだ。レンズに出てくるグラッジの情報を確認してほしい。ここにサーシャでも読めない程に難解な古代語があるんだが、ゼロなら読めるか?」


「お~! これが噂の全知のモノクルなんだね。あとでじっくり触らせて欲しいところだけど、ひとまずレンズに浮き出た文字を確認するね。ふ~む、これは僕達でも読めない古代語だね、もっと古代語の見識が広がる書物でもあれば解読できる部分が増えるだろうけれど古代語自体まだまだ未発達な学問だからね」


 ゼロの言葉を受けてサーシャがうんうんと激しく頷いている。時間があったら2人でじっくり古代語について語り合わせてあげたいところだ。


 ただ、ゼロでも読めない古代語だという事実から判明したことがある。それはグラドとグラッジの先天スキルが微妙に違うということだ。


 基本的な部分である『魔獣を寄せ付ける』という性質は同じ表記でも、その後に綴られている表記が解読可能だったグラドに対し、グラッジは読むことが出来ない。その点からもグラッジならではの進化がきっとあるのだろう。それが俺達にとってメリットとなる進化ならいいのだが。


 パラディア・ブルーが欲しいという話題からグラドのスキル話に逸れてしまったが、ひとまず俺達の目的は定まった。ゼロは話題をパラディア・ブルーの入手方法に戻し、話を続ける。


「それじゃあパラディア・ブルーの入手方法を教えようか。入手方法は至ってシンプルでね、アビスロード60層以降なら割と頻繁に見つかるよ。だが、当然環境も劣悪だし魔獣も強い上に数も多い。君たち5人じゃちょっと厳しいかもね。他に仲間はいるかな、ガラルドさん?」


「ああ、一応カリギュラの外で待機してくれている仲間が大勢いる。だが、ぞろぞろと大人数で降りてきても迷惑にはならないか?」


「それなら問題ないよ。ここ40層にあるウィッチズケトルの管轄部屋はガラルドさん達に貸した部屋以外にも沢山あるから自由に使ってくれていい。ただし、うちの方針は働かざるもの食うべからずだから、素材集めとか魔獣討伐とか色々頑張ってもらうことになるけど構わないかな?」


「ああ、もちろんだ。それじゃあ早速外にいるガーランド団を呼びに行くか。ただ呼びにいくだけならリリスがアイ・テレポートを使って俺が護衛すればいいから2人で充分だな」


「いや、ちょっと待ってくれガラルドさん」


 ゼロは俺を制止すると手招きして部屋の外へ出て行った。ゼロのあとをついて研究所内を5分ほど歩くと、そこには直径10メード程の円柱状の建造物があった。


 材質は鉄っぽくて高さは途中から土に埋もれていて分からないが塔の様にとんでもなく高そうだ。ゼロは建造物の扉を開くと円柱が何かを説明してくれた。


「これはウィッチズケトルと地上を垂直に繋ぐ螺旋階段だよ。ウィッチズケトルは表層を含む10層単位で支部があってね。これを使えば危険なエリアも安全に進むことができるし、移動も比較にならない程早いよ。外への連絡はここを使えばいい。今は最大でも40層までしか進めないけど将来的には拡張していくつもりだよ」


 正直これはかなりありがたい。俺達ガーランド団は数の強みがあると同時に集団移動における機動力の無さがネックだった。全員がハンターや兵士あがりではなく技術者も多いガーランド団は当然、徒歩での移動は1番遅い人に合わせる必要があるからだ。


 しかし、安全に素早く移動できる螺旋階段があれば話は別だ。この螺旋階段によってガーランド団の技術者が40層のウィッチズケトルの学者と接することによって得られるものも多いかもしれない。今からもうワクワクが止まらない。


 俺達は話し合った結果、外の空気を吸いに行きたいというシルバーとリリスに連絡係を任せる事にした。その間に他3人はゼロからパラディア・ブルーのより詳しい説明を聞く事になった。


「パラディア・ブルーの説明を続けるよ。パラディア・ブルーは普通のパラディア同様、光にとても弱い性質がある。だからこそカリギュラの地中深くに沢山あるのかもしれないね。で、前にも言った通りパラディア・ブルーを使う時は消滅覚悟で光や水を与えることになる。ここまではいいかな?」


 俺とサーシャとグラッジはゼロの言葉に頷いた。


「つまりパラディア・ブルーは使い捨てとも言えるわけだ。だから君達には死の山を長時間探索できるぐらいに大量のパラディア・ブルーを用意してもらわなきゃいけない。60層にいったらよく育ったパラディア・ブルーもあれば、いまいち質のよくないパラディア・ブルーもあるだろう。そんな低質なパラディア・ブルーを見つけたとしても君達は一応持って帰ってほしい」


「ん? 低質なパラディア・ブルーじゃ魔獣を退ける力はないんじゃないか? 大丈夫なのか?」


「低質なパラディア・ブルーも人が大量に魔力を与えれば立派なものに育つよ。パラディア系は水と光の代わりに魔力を吸って育つからね。それに低質なパラディア・ブルーにはもう1つ重要な使い道があるんだ、それはきっとガーランド団にとって大きく役立つことになるだろうね」


 ゼロは意味ありげに含み笑いをしながら呟いた。何となく嫌な予感がした俺はドキドキしながら内容を尋ねる。


「なんだか、含んだ言い方をしていて恐いな。もったいぶらずに早く教えてくれよ」


「ふふふ、恐れるのはある意味正解かな。そう、低質なパラディア・ブルーのもう1つの使い道、それは修行用の道具になるという事さ。君たちにはこれから五英雄も愛用していた秘密の特訓と必殺技を伝授しよう。それで君達は益々強くなれる」





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