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【第137話】魔力の数値化




「僕、ウキウキしてきましたよ! 全知のモノクルは魔量や魔力も調べられるんですね。よかったら5人全員の数値を見てみませんか?」


 リリスとサーシャは順位付けが出来てしまいそうで嫌だと反対したが、目をキラキラさせたグラッジの圧に押されて渋々了解していた。


 男2人を弁護する訳ではないが、男という生き物は力比べや力の数値化が大好きな奴が多い。俺もその手の人間だから反対はしなかった。


 ただ、全知のモノクルは質量もとい体重などのプライバシーな情報も少し表記されてしまう。その点を考慮して数値の読み上げはサーシャが、数値の確認はリリスとサーシャだけで行う事になった。


「それじゃあまずはお兄ちゃんとサーシャとリリスちゃんを纏めて調べるね、えい、えい、えい」


 サーシャは律儀に声を出して全知のモノクルの光を当てた。そして、レンズに表示された数値を読み上げる。


「まずお兄ちゃんが魔力3000 魔量2000……だね、これってグラッジ君の魔量が凄すぎるのかな? それともお兄ちゃんが弱いのかな?」


「嘘だろおい! 俺はグラッジの10分の1しか魔量がないのか? サーシャとリリスの数値も早く教えてくれよぉ!」


 シルバーは過去1番に情けない声で他の人間の情報を求めた。その結果俺達はグラッジの凄さを改めて実感する事になる。


「えーと、リリスちゃんは魔力2800 魔量2500みたい。それとサーシャはリリスちゃんとは真逆になってて魔力2500 魔量2800みたい。やったねリリスちゃん! 総量がお揃いだよ!」


「えへへ、私達は数値も仲良しさんですね! それに最下位がシルバーさんになってホッとしました」


「ちょっと待て、まだ最下位とは決まってないぞ、ガラルドの鑑定が終わってないだろう!」


 シルバーは先読みしていたのかと思うぐらい素早く勢いのあるツッコミをいれた。しかし、リリスは肩をすくめて否定の言葉を返す。


「鬼の様に強いガラルドさんが最下位のはずないじゃないですか、きっと両方10万ぐらいありますよ。さぁ、早くダーリンの数値を読み上げてくださいサーシャちゃん」


 それだけ強かったらソルから逃げるわけがないだろう……とツッコミを入れたくなる気持ちを抑えて、サーシャの読み上げを待った。すると、サーシャは首を傾げながら数値を答えた。


「それじゃあダーリン君の数値も調べるね、えい! あれ? もっと高いと思ったけど意外と低いね。魔力3300 魔量3000だよ」


 サーシャの読み上げに俺は驚いた。もちろんダーリン君という弄りに驚いたのではない、数値の低さにだ。魔量はともかく魔力はグラッジに迫る数値が見られると思っていただけに残念だ。


 俺はシルバーの肩に手を置き、落ち込んでいる同志として声を掛ける。


「お互い辛い結果だったな。シルバーは最下位だし、戦闘しか能の無い俺は意外と低い数値だったし」


「ガラルド……お前まで最下位弄りをするのか……。俺は技術者兼冒険家だから戦闘が本職じゃないんだよ! それにガラルドの数値は多分本当の数値じゃないぞ」


「本当の数値じゃないってどういうことだ?」


「ガラルドには無纏(むてん)・緋纏(ひてん)・双纏(そうてん)の3つの型があるだろ? 今のリラックス状態は通常の魔力だから恐らく無纏(むてん)の数値が出ているだけだと思うぞ。ソルとの戦いの後で疲れているだろうが、他の2つの型でも試してみたらどうだ?」


「そうかもしれないな、それじゃあ試してみるか。サーシャ鑑定を頼む」


 そして、俺は緋纏(ひてん)と双纏(そうてん)の型でも鑑定してみる事にした。レンズに浮かぶ数値を見たサーシャは俺に親指を立てたあと、数値を教えてくれた。


「凄いよガラルド君、一気に数値が上がったよ。緋纏(ひてん)は魔力5000 魔量4500もあるし、双纏(そうてん)は魔力6600 魔量6000もあるよ。とんでもない上昇量だね」


 よかった……。これで一応ガーランド団のトップとして面目を保つことが出来た。5人の数値を調べてみて特に印象深かったのがグラッジの魔量だ。流石は五英雄の血族と言ったところか。


 今後強敵と遭遇した際は全知のモノクルで数値を調べる事は有効かもしれない。とは言ってもあくまで確定で分かるのは魔量・魔力の値だけであり、肉体の強さは分からない。スキル鑑定も読めない文字が出てくる可能性があるから不安定さもある。


 それにしても全知のモノクルを使った数字遊び……ではなく、能力値調査は面白い。いつか、シン、ストレング、レック辺りも調べたいものだ。個人的に1番調べたいのは激闘を繰り広げたローブマンなのだが。


 そういえば、ローブマンの一言がきっかけでこうして死の海を越えてイグノーラに辿り着き、グラッジと出会う事が出来たのだから縁とは不思議なものだ。


 ローブマンと話したのはコロシアムのたった1日だけだが、色々な事を思い出してしまう。ローブマンがいたからこそ九十魔日(きゅうじゅうまじつ)や八十魔日(はちじゅうまじつ)の事を知ることが出来たし、魔獣の大群がどこを襲いやすいのかも知ることができた。


 シンバードから見て南の街や海洋国家が襲われやすいと言っていたけれど大陸の南半分に属するイグノーラやカリギュラもローブマンが言うように襲われやすい地域に該当するのだろうか?


 昔の事を思い出しているうちに俺は1つ違和感を覚えた。シンバードやヘカトンケイルなどが魔獣の大群に襲われたタイミングはグラハム王が言う『魔獣寄せが強くなってきた時期』に重なるのではないかと。


 俺とリリスが出会ってからまだ1年も経っていないが出会う少し前から各国で魔獣の活性化に対する困窮の声は聞こえていた。


 グラッジの魔獣寄せの範囲が大陸の北方にまで届くとは思えないし、もしかしたら魔獣寄せが強くなったのではなく大陸全体に異変が起きているのかもしれない。


 そう考えると大陸の中心にある死の山が異変の核になっていそうな気がする。シンバードから見て南方、そしてイグノーラから見て北方に死の山があるという位置関係に加え、グラドが魔獣の総本山である死の山に異変調査へ行ったことからも全ての鍵は死の山にあるような気がする。


「皆、俺の仮説を聞いてくれ。もしかしたらグラッジたちの魔獣寄せが強くなったんじゃなくて本当は――――」


 俺は自分なりの考えを4人に伝えた。大陸の北側を旅してきたシルバー、リリス、サーシャは俺の仮説がピンときたようで納得してくれた。そして、グラッジは魔獣寄せが強くなっていない可能性に一瞬喜んだものの、大陸の危機かもしれないと考えてすぐに笑顔を消していた。


 調べたいことは山ほどあるけれど今は出来る事を1つ1つやるしかない。1回手を叩いて視線を集めた俺はここにいる全員に考えすぎないように伝えることにした。


「分からないことだらけだが、まだ道が閉ざされたわけではないし、少なくとも仮説を立てられるぐらいには進めている。だから、真剣になるのはいいが深刻にはならないよう旅を続けよう。とりあえず今はカリギュラという目的地があるんだ。数日間は穏やかな船上暮らしになるから今のうちにしっかり休んでおこうぜ」


 俺の言葉に4人は頷きを返す。危険な町カリギュラでどこまでの情報を掴めるのか、どこまで打開策を得られるのか……緊張感と待ち遠しさを乗せた船は着々とカリギュラへ進んでいく。





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