七つの星
「ええい、離せ!」
バナナイカ国王が自身の股間をまさぐる左手を、長身の男は達する直前でなんとか引きはがす。
「き、貴様はなんなのだ!?突然、人の部屋に入ってきて自分の股間を揉ませるとは!?さてはヘンタイだな!?」
「我こそは大魔王。貴様がニンゲンどもの王と聞いて宣戦布告に来た。」
「はあ?」
「貴様らが倒したと浮かれている魔王は魔界に666人いる魔王の内で最弱。ステータス1000の壁を超えることができなかったクズなのだ。」
「な、なんだと……。」
あの魔王より強い者が665人いるという言葉に驚きを隠せないバナナイカ国王。
「我は序列665位にして全ステータス1001!前回の魔王と同じレベルと思うなよ!」
(全然同じレベルだー!!)
目の前の大魔王を名乗る男が666位と見下している前回の魔王のステータスは999.999と言われていた。
序列で1、ステータスも1.001しか違わない。
(なるほど、コイツ自身の序列が低いせいで前回の魔王しか見下す相手がいない分、こうやって比較してはイキっているのか。)
とはいえ、人類にとっては大きな脅威である。
「誰かおらんのか!?黒騎士は!?勇者は!?」
「他の者ならここに来るまでに全員眠らせておいた。安心しろ、殺してはいない。今日はあくまで宣戦布告だからな。ただでさえ脆弱な戦力を削ってしまってはつまらんだろう?」
大魔王の言葉に自分の身の安全を確信し、安堵するバナナイカ国王。
その瞬間、大魔王の目が怪しく光る。
「呪印『七つの大罪』」
「ぐはっ!!」
愛人と追いかけっこをするために上半身裸だったバナナイカ国王の胸に7つの痣が浮かび上がる。
ひとつの痣だけが黒く染まっており、残りはほとんど肌に溶け込んでいる。
「6つの痣はまだ肌の色と区別がつきにくいが、その7つが完全に黒く染まる時に貴様は死ぬ。」
「呪いか。」
「制限時間があった方がゲームは面白い。そうは思わんか?」
「ゲームだと?」
「ああ、これは戦争ではない。魔王軍による一方的な虐殺ゲームだ。せいぜい、道化として我らを楽しませるがよい。」
確かに、目の前の大魔王を名乗る者が前回の魔王と同等の力があり、その配下も同様だとすれば人類に抵抗する術はほとんど残っていない。
「我々には勇者がいる。人類は決して負けんぞ!」
「ふっ、楽しみだ。我は前回の魔王と同じ場所に居城を作る。いつでも訪ねてくるよう勇者に伝えよ。」
そういうと大魔王は王の部屋から消えるように出て行った。
「魔王、再び……か。さて、どうする。」
いつになく真剣な顔をするバナナイカ国王。
「……とりあえず、メアリーちゃん。一発やってから考えるかのう。」
そして、翌日。
バナナイカ王国は世界に対して新たな魔王が誕生したことを発表した。
「それでは、行ってまいります。」
聖剣を腰にぶら下げた勇者ルートヴィッヒが謁見の間でバナナイカ国王に挨拶をする。
「勇者殿、頼んだぞ。」
「はい、王様。必ずや魔王を倒し、世界に再び光を取り戻しましょう。」
「勇者様、どうかご無事で。」
「ええ、帰ってきたら今度こそふたりでダイエットをしましょうね。」
「もう!」
昨日は一晩中、魔王対策会議をしていたため結局ルートヴィッヒはローザ姫とイチャイチャすることができなかった。
バナナイカ国王だけがやけに肌がツヤツヤしている。
「それでは、行ってまいります。」
もう一度、勇者は挨拶をし、城をあとにしたのだった。
「さて、どうしようか。」
勇者ルートヴィッヒが呟く。
自分は有名になりすぎた。
もうラルクには頼れない。
今度こそ自分で魔王を倒すしかない。
「とりあえず前回のパーティーメンバーの聖女と大魔導士に会いに行くか。」
こうして、勇者ルートヴィッヒの2度目の魔王討伐の旅が始まったのだった。




