空に大きな虹が掛かった
「シ、シャーロット様が、破水されました……!」
破水!
……が、何かよくわからないライリーとディリオンだったが、ジュディの様子から何か大変なことが起こったとわかり、ディリオンはすぐに医師の手配をする。
ライリーは二階の窓から飛び降り、シャーロットの側へと駆けつけた。
「ライリー陛下、二階から飛んでくるなんて、危ないですわ」
ライリーはゆっくり慎重にシャーロットを横抱きに抱える。
「何言ってんだ。シャーロットに大変なことが起こったら、三階からだってやってくるさ」
いやいや、さすがに三階から飛び降りたら骨折しちゃうからやめてください。
ジュディはそう言いたいのを我慢して、ライリーを先導してシャーロットのベッドまで連れて行った。
マリーもやってきて、大量の清潔なタオルとお湯を用意する。
すぐに女医のノーラ医師がシャーロットのベッドへとやってきた。
心配そうに様子を見ていたライリーとディリオンだったが、診察をするので部屋の外に出されてしまった。
心配で心配でたまらないライリーは、ドアに耳をくっつけて、中の様子を窺う。
ボソボソとはしているが、なんとかノーラの声がライリーの耳に届いた。
「シャーロット様、この様子では結構前から陣痛が来ていたのではないですか?」
「えー? 少しお腹が張っている気はしましたけど、あまり痛くはありませんでしたわ」
「……痛かったはずです。その、お腹が張っていたのが陣痛です」
「まあっ! 全然気が付きませんでしたわ!」
あまりののほほん振りに、ライリーは扉の前でヘナヘナと座り込んだ。
ディリオンはライリーに少し同情して、ポンと肩を叩いた。
「ライリー陛下。初産とは時間がかかるものだ。あれを聞いてしまっては心配する気持ちもわかるが、一旦ここから移動しよう」
「だって、ディリオン。ちゃんと産めるか心配で……」
「産める! 母とはそういうものだ。貴様がここで座り込んでいても、なんの役にも立たん。それよりは、出産後にゆっくり親子三人で過ごせるように、少しでも執務を終わらせておけ」
確かに、自分はここで祈ることしかできないと思ったライリーは、納得はしていなかったがいて、仕方なく頷いて執務室へと戻って行った。
そして、三時間ほど執務をこなし、目処がたったところで、休憩時間もかねて、シャーロットの部屋へと足を運んだ。
もちろん、ディリオンとフレッド、ギルバートもシャーロットの部屋へと集まって来た。
扉の中からは、シャーロットの苦しそうな声が漏れ聞こえる。
「まだ産まれないのか」
「初産は時間がかかるとは言うが、どれくらいかかるものなんだ?」
「オレが産まれた時は、8時間かかったと、母上がおっしゃっていた」
「そんなにかかるのか……」
男が4人集まって、なんやかやと話をしていると、急に扉の中がザワザワとし始める。
言い知れぬ雰囲気をライリーが感じた時、可愛らしい声で、おぎゃーおぎゃーと鳴くのが聞こえた。
ライリーは、まだ信じられない思いで、しかし、この泣き声は我が子のものと確信し、つぶやく。
「う、産まれた……」
早く扉を開けたいが、中がどうなっているのかわからず、男どもは扉の前で立ち尽くす。
しばらくの後、やっと、扉が開かれた。
マリーに促されて部屋の中に入ると、汗を額に光らせたシャーロットが、ベッドの上で小さなものを、大事そうに抱えていた。
部屋に入ってきたライリーに気付き、体をずらして腕の中をライリーに見せる。
「ライリー陛下、見てくださいませ。元気な赤ちゃんですわ」
輝くばかりの妻の笑顔と、その腕の中にいる我が子を見て、ライリーはホロリと感動の涙を落とした。
シャーロットの側まで行き、赤ちゃんごとシャーロットを優しく抱きしめる。
「ありがとう。オレの奥さん。こんなにたくさんの幸せを、ありがとう」
そしてゆっくりと体を起こすと、赤ちゃんの顔を見る。
我が子はライリーと同じ黒髪に、小さくつぶらなすみれ色の瞳で、しっかりライリーの顔を見ていた。
ライリーがおそるおそる手を差し伸べると、赤ちゃんはふにゃっと笑った。
もう、それを見たライリーは、胸がいっぱいになったのだった。
その日は、空に大きな虹がかかった日だった。
その虹は今まで見たこともないような大きな虹で、ランドールから遠くの空、海の向こうにも繋がり掛かるような見事な虹だったという。
おしまい☆
これにて出産編は終わりです。
お読みいただきありがとうございます。
生まれた赤ちゃんは男の子か女の子か。
みなさまのご想像にお任せいたします。
今後、まだこの番外編が続くかどうかは…そちらも、みなさまのご想像にお任せいたします^_^
やはり、初めて書いた作品なので、何かあるとこちらに戻ってきてしまうのです。
なので、また機会があれば書きたいと思っています。
完結マークをつけるのは、まだ先にいたしますね。
ブックマークや評価いただき、ありがとうございます。
大変励みになりました。
こちらのサイトでも、他のお話も書いていたりしますので、もし、お時間あればそちらもお立ち寄りいただけたら嬉しいです。
それでは、みなさま。
こんな時期ですので、お身体お気をつけてお過ごしくださいませ。。。
雪野結莉




