1章 1
ifルートフレッド編になります。
すみません。
あくまでifルートですので、本編のイメージを壊したくない方はそっと閉じてください。
分岐は本編、最終章 ランバラルドからの封書 ですので、それ以降のお話になります。
昨日の即位式パーティーの後、眠れなかったボナールの女王シャーロットは、宿泊をしている離宮の調理場で夜中に趣味のお菓子を作り、仲良しだった王弟子息のギルバートと、王子、いえもう国王となったライリー陛下とその側近の方々にも焼いたクッキーを渡そうとしました。
朝早くの訪問で、起きていたギルバートには直接クッキーを渡せましたが、即位したばかりの国王ライリーはまだ眠っており、側近のディリオンにクッキーを預けたのでした。
ライリーの執務室で、ディリオンは手にしたクッキーを眺めていた。
ライリーが好きだったシャーロットのクッキー。
ディリオンはこれをライリーに渡していいものか、悩んでいたのだ。
せっかく、数年経ち忘れかけていたものを呼び起こすのではないか。
仕事の上で、ボナール女王シャーロットの存在は邪魔になる。
ボナールの女王とライリーが結婚し、国が統合されればランバラルドは帝国に次ぐ大国となる。
ランバラルドの軍事力とボナールの豊かな食料事情は、帝国を刺激するのに充分な事柄だ。
目の上のコブとなったランバラルドへ、帝国は戦争を仕掛けるだろう。
目障りなものは叩き潰すのが、帝国ジルベール陛下のこれまでのやり方だ。
帝国に次ぐ大国になったとしても、ランバラルドに勝ち目はないだろう。
ランバラルドの次期宰相として、ディリオンはライリーの想いを止めることしかできなかった。
ディリオンが考え込んでいると、そこに、国王となったライリーが入ってきた。
「ふぁ~。ディリオンおはよう。早いな。お前も昨夜は遅かっただろうに」
「ああ、王子。おはよう」
「ははっ、もう王子じゃないって」
ライリーは笑いながらディリオンに目を向けたが、机の上を見て笑みが消える。
「それは、シャーロットの?」
ディリオンは言おうか誤魔化そうか一瞬だけ悩み、肯定した。
「……そうか。じゃ、侍女に紅茶でも入れてもらうか」
ライリーは穏やかに微笑んでそう言った。
「シャーロットはいつまで滞在だっけ? またケーキも焼いてくれないかな」
「王…、陛下。シャーロット陛下は今日ランバラルドを発つ予定だ」
「えっ」
ライリーは慌てて席を立ち、執務室を出て行こうとする。
「陛下! 追ってなんになる? 彼女はもう他国の王なのだ。追いかけて呼び止めたところで、もうこの国にずっといられる訳ではない」
ライリーはドアの前に佇み、一度だけ呟いた。
「シャーロット……」
ライリーもまた、後を追わなかったことで、シャーロットへの想いに区切りをつけるのだった。
そして、想い出はセピア色に染まっていく。
カタコトと揺れる帰国の為の馬車の中で、シャーロットの頭は左に右に揺れていた。
昨夜、パーティーに出席して疲れているのに眠れずに、ほぼ寝ないでクッキーを焼いたので、居眠りするのも無理ない状態だった。
ゴンっ!
馬車の窓に頭をぶつけたのに、シャーロットは覚醒せず、まだ前後左右に頭をフラフラさせたまま。
「姫様、それ以上頭をぶつけると、バカになっちゃいますよ?」
馬車に乗っていたジュディが声を掛けるも、シャーロットはまだ目を覚まさず。
隣に座っていたフレッドがシャーロットの頭を自分の方へと引き寄せた。
「肩貸してあげるから、ここに頭を置いて少し寝なよ」
「……むにゃ、はい。フレッド様」
寝ぼけながらもフレッドに返事をし、シャーロットはフレッドにもたれて、スースーと安らかな寝息を立て始めた。
フレッドは肩に乗るささやかな重みに幸せを感じるように、笑みを浮かべる。
それをマリーとジュディは微笑ましく見ていた。
「フレッド様になら、姫様を任せられるのに」
ジュディはポロっと言葉をこぼす。
「これ、ジュディ」
「だって母さん、ちゃんと姫様に何も言ってくれないライなんかより、黙って姫様を支えてくれるフレッド様の方が、どれだけ頼りになるか」
そう言われて、マリーは黙る。
シャーロットがライリーの言葉を待ちわびて、悲しげにしていたのを知っているから。
「オレなんかじゃ、シャーロットちゃんは相手にしてくれないよ。こんなに真面目で一途なシャーロットちゃんと、今までフラフラしていて遊んでたオレじゃ、釣り合いが取れないからね」
フレッドは自嘲気味にふたりにそう言った。
わたしの妄想にお付き合いいただき、ありがとうございます。
物語で結ばれるのはたった1人です。
なので、本編の枠に入れることはできませんでした。
あくまで、本編のヒーローはライリーです。
でも、健気なフレッドが報われるパラレルワールドがあってもいいんじゃないかなと、番外編として書かせていただきました。
普通、小説に分岐ルートはありません。
なんだこの書き方は! と思われる方もいらっしゃると思います。
できれば、広い心でお読みいただけたら嬉しいです。
更新は不定期となり、30話前後の予定です。
今日は続けてもう1話アップしますを
どうぞよろしくお願いします。