3話
肩に乗っている管狐を撫でようとして、両手が塞がっている事に気付いた。手にしていた日本刀を、ズボンとベルトの間に差し込み、右手が自由になると管狐を撫でた。すると、管狐の毛が逆立っていた。
むつは立ち止まり、左手を少しだけ上げて辺りを照らした。
「祐斗、何か視える?」
「さっぱりです、むつさんは?」
「あたしにも全く。けど管狐が緊張してる」
颯介は、ペンライトで洞窟内の壁をゆっくりと照らして、ライトを天井に向けた。だが、視界に入るのはごつごつとした岩ばかりだった。
「これ以上は入りたくないね」
「仕事、ですよね?」
祐斗に言われ、むつはしぶしぶといった様子で足を踏み出そうとして止まった。
「なっ」
突然、奧からごおぉっと音をたてて風が吹いてきた。三人は腕を顔の前に持ってきて、突然の風に堪えた。目を開けていられない程の風だった。
「壁際に‼」
颯介に肩を抱かれるようにして、むつと祐斗は壁際に押しやられた。颯介が先頭に立ってくれているおかげで、少しだけ風が当たらなくなりしっかりと目を開けられるようにはなったが、明かりがなかった。
ペンライトの光は壁に向いていたし、むつの陰火は風が強すぎて消されてしまっていた。




