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3話
「置き去りにされたのね、可哀想に」
むつが手を伸ばすと、祐斗から離れた管狐はむつの腕を伝って肩に上った。すりすりと小さな顔をむつの頬の押し付けて、颯介に牙をむいた。
「酷いね」
くすっと笑い、頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細めた。颯介は、管狐に手を伸ばそうとはせず見守っていた。
「で、どうかな?あの洞窟」
頭を撫でていた指を顎の下に入れ、かくように撫でつつ管狐の様子を伺う。
むつの言葉をしっかり理解してるのか、管狐は首をもたげて洞窟の方を見た。鼻をひくひくと動かし、きょろきょろと辺りを見ている。そして持ち上げた顔を背ける事なく、洞窟の方を向いた。
「何か興味あるものが、あるみたいね」
管狐を颯介に返す事なく、肩に乗せたまま、むつはゆっくりと砂浜を歩き洞窟に近付く。