142、クーガーの事
転移した先は直接闘技場の空き部屋にしたはずだったんだけど……どうやら印象が強かったからか、ネシアの門の前に出ちゃったよ。
おかげで門番さんがめっちゃ驚いてる。ごめん、門番さん!
「……君たちは昨日の?それになんだか人が増えてないかね?」
「はい、あれから闘技場でいろいろあり、成り行きでなんでか次の大会に参加することになってしまったんですよ。」
俺がそう言って苦笑いをすると、門番さんも同じ顔をした。
「そっか、それは災難だったな。確か決勝戦だったんだろ、昨日?」
「ええ、そうですね。観戦したのはヒューザさんとクーガーさんの戦いでした。」
「そっか、あいつらの……。あいつら、兄弟が国外に行っていて連絡がつかないって言っていたんた。でもどうやら昨日、君たちが連れてきた中にヒューザの弟がいたようでな。たぶん大会後のヒューザなんだろうが、焦ったように走って迎えに来ていたな。神聖法国から獣人を連れてきたって知らせたのは君たちなんだろう?」
「はい、彼は試合後に俺達の所にきて少し話をしたんですが、どうやら俺と弟の髪色から例の国の関係者だと勘違いしていたようでした。」
俺がそう言うと、受け答えしてくれていた門番さんは大きなため息を1つつく。
「やっぱりか……。ってことは、クーガーも?」
「はい、彼とは闘技場を出たところで声をかけられました。そこでなんだかいちゃもんつけられて、しょうがなく大会に出ることになったんです。」
「なるほどな。今回君たちが連れてきた中にクーガーの兄はいなかったが……彼もかなり強い獣人だったから、もしかしたら例の国にいないで他の国に行っていた可能性もあるんだが、それでもやっぱり……な?許してやってくれないか?」
そっか、やっぱりそんな事が……。
かなり強いなら、もしかして難を逃れているかもしれないけど……楽観視はできないもんね。
それから俺たちは門番さんにまたもや追加の3人の事情を話し、中に入れてもらう。
あ、セバスとユーリの身分証はもちろん見せたよ。
ユーリがめちゃくちゃ嬉しそうに自分の身分証を両手で持って見せていたのが、とても可愛かったなぁ!
街の中に揃って入ると、レッカさん達3人は初めての人族の街だからか、めちゃくちゃ興奮していた。
見るもの全てが真新しいものなので、次々質問をグリーさんに浴びせかける。
そう、『浴びせかける』様に止めどなく聞いているんだよね。
ちょっと……かなり?グリーさんが大変そうだった。
でも3人のキラキラした瞳を見ていると、連れてきて良かったなと思える。……グリーさん大変だけど。
「なぁ、あんさん達、ちょいと落ち着き〜な!そんな次々と聞かんと、ゆっくり観光しながらでええんやで?」
グリーさんが呆れた顔をして3人にそう言う。
すると目を輝かせながらも拗ねた顔をしたレッカさんがグリーさんに言った。
「何よぉ〜、自分ばっかり他の国に遊びに行ったりして!こんなワクワクするなら誘ってくれても良かったじゃない!」
「いや、誘うのはええんやけど、レッカは寒ないか?ここは比較的暑い地方やからまだ過ごせると思うんやけどな?他の国はもっと寒いんでっせ?」
それを聞いてレッカさんは少し尻込みしたようで、迷っているような表情をした。
えっ、この気温で肌寒いの?
この熱帯雨林みたいな蒸しっとした、何もしてなくてもうっすら汗をかきそうな気温なのに!?
俺はその事に驚いたよ!
他の2人は俺たちと同じ体感らしく「少し暑いよな?」と言い合っていた。うん、2人は普通の感覚だね!
「とりあえずこのくらいならなんとか許容範囲よ!寒ければ火口に戻れば良いのよ、シエルさんに送ってもらって!」
「いや、そこはコソッと街を出て、夜の闇に紛れて帰れば良いじゃない?自前の翼あるんだし?」
グリーさんに答えたレッカさんに、アクアさんが呆れた顔でそう言った。
「それはそうなんだけど、夜だと夜更かしはお肌に大敵なのよ?お子ちゃまには分からないことかしら〜?」
フフンッ!と笑ってレッカさんがアクアさんに言った。
いやいや、こんな所で喧嘩しないでよ!?
俺が不安に思ったように皆も思ったらしく、グリーさんが「喧嘩は駄目やで?」と注意を促す。
レッカさんとアクアさんはハッとして、慌てて「私達は喧嘩してないわよ!」と言って、肩を組んで仲良しアピールをする。
それからは2人も仲良く屋台などを見ては互いに違う物を買い、シェアしたりして『仲良しアピール』をしていた。
それを見て皆は呆れつつも、楽しく街を回れているので一時的だとしてもありだなと思うようにしたようだ。
まぁ、仲良きことは良いよね!




