568、真夜中の襲撃 5
しばらく上空を飛んでいる小鳥を追いかけて進むと、その先にある少し広場になっている場所の方から、剣を振るう音や魔法で戦っているような音が聞こえてきた。
どうやら小鳥がそこ目掛けて降下するのが見えたので、そこの広場で戦っているのはスコットさん達なのだろう。
俺はすぐにその広場へと向かい、加勢しようと戦闘態勢を整えた。
案の定、広場ではスコットさんと、ユーリ、セバスが戦っていた。
他のメンバーは今のところ見当たらない。
多分他の場所へと向かったのだろう。
3人と魔物の戦闘における優劣をみると、あまりの魔物の数に、若干だが仲間の方が劣勢な感じだ。
俺は3人に「手伝うよ!」と声をかけると同時に、結界を張る。
流石にユーリは回復魔法も使えるから多少の劣勢でも持ちこたえていたのだろうが、この数の魔物では攻撃の手も緩められないはずだ。
すかさず俺も広場に溢れている魔物を討伐し始める。
4人でしばらく討伐をしていると徐々にだが、辺りの魔物の数は減っていき、とうとうこの周りには魔物の姿が見られなくなった。
俺達は肩で息をして呼吸を整える。
「セバス、俺がクレインの王都に行っている間に、一体何があったんだ?」
俺はセバスにそう声をかけると、素早く息を整えたセバスは俺がいなくなってからの話をし始めた。
彼の話を要約すると、俺が出かけてからしばらくは何もなく平和に夜が更けていっていたらしい。
だが、ちょうど俺が『隷属の魔法』を無効化する魔道具を探しに宝物庫へと辿り着いた頃。
縦長に長いこの街の中央付近方面から何かが爆発するような音が聞こえてきたらしい。
耳の良いのですぐにその音に気づいたセバスは、部屋に残っていたユーリとグリーさんを叩き起こし、同じフロアにいるスコットさん達とエミリーさん達の部屋にも知らせに向かった。
そうこうしている間にも、外では魔物の咆哮や家が崩れるような音があちこちから聞こえるようになり、スコットさんたちは皆でこの街の防衛へと向かった。
宿を出た途端、街の中央付近の家から逃げてきた人々が大勢やってきたのがよく見えた。
彼らは時折後ろを振り返りながら、とても怯えた表情で宿屋まで到着した。
そして彼らには宿の中でゆっくり体を休めて待機をするよう言い聞かせた。
それから広場までやってきて、宿屋の方まで魔物が行かないようにそこで防衛戦を繰り広げていたんだそうだ。
「なるほど……それで、リッキー達の方はどこへ向かったの?」
俺はセバスの話を聞き終わると、気になっていたことを口にした。
「他の皆さんは多分、私たちとは反対側の広場で同じ事を繰り返しているはずです。我々がこの広場で食い止めさてすれば、それより先の街への被害は食い止められますからね。」
セバスはそう言うと、またチラホラと現れ出した魔物を見やる。
……なるほど、これは元を断たないといつまでも消耗戦を繰り広げなければならなくなるね。
「じゃあここまで数が減ったなら、スコットさんとセバスだけで任せてもいい?俺とユーリは『元凶』を何とかしに行ってくる。」
「かしこまりました。どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ。」
俺は2人に体力を回復する様に回復魔法を使うと、ユーリと一緒に広場の先、南と北の境界線まで向かった。
俺達は向かいながら魔物をどんどん討伐していく。
元凶はまだ見えないが、徐々に胸を圧迫するような気配が辺りに漂い始めた。
俺は眉間に皺を寄せると、隣で魔法を使って魔物を討伐しているユーリを見た。
「ユーリ、何だか先に進むにつれて周囲の空気が変になっていかないか?」
俺がそう聞くと、ユーリも頷き、「そうだね、何だか息がしづらい感覚がする」と言った。
そうだね、俺もそんな感じはしている。
とりあえず俺達2人は更に前へ進むと、目の先にいつぞや見たことのあるものが目に入った。
「……なあ、魔物が出てくるのはやっぱり『あれ』、だよな?」
俺はそれをチラッと見ながら、その周囲の魔物を風魔法で切り刻みながらユーリに話しかけた。
俺の使った魔法で一気に周囲の形勢が逆転し、束の間の静寂が訪れる。
「そうだね、にぃに。あのスノービークで見たのと同じ『黒い穴』だね。」
そう、それはあのスノービークで無数の魔物が出現していたあの『黒い穴』だった。
まさかとは思ったが、この騒動はやはり神聖法国の残党の仕業だったんだな。
俺はギリッと奥歯を噛み締めると、更に前へと進んだ。




