318、ロックさんとのお茶会
「そういえば俺達がダンジョンから去った後、このダンジョンの『変換期』はすぐに終息しました?」
俺はもう一つ気になっていたことを聞いてみた。
冒険者ギルドでの話が気になっていたのだ。
「ん?そうだね、君たちが帰ってからは比較的早く終息して、軍人たちもみんな引き上げていったよ。……あ、一部の人はそれぞれの階層がどう変わったか調べるのに残ったけど、それも大体が強い人の選抜チームみたいな感じの集まりだったから、宝箱なんかの部屋は見ずに1つ1つの階層を駆け足で通り過ぎていったねぇ。」
リーシェさんは俺の問いに少し考えた後、そう答えてくれた。
なるほど、やっぱり7日ほどで調査も終わっていたのか。
なら、何故にギルドへのドロップ品の納品が遅れているんだろう?
やっぱりリーシェさんの言う通り、ミラー騎士団長のところで止まっているんだろうか?
それにしてもミラー騎士団長、ロックさんの話も合わせて考えるとなんだかおかしな方向に話が行くなぁ。
何で彼はそんな怪しまれるようなことをするんだろう?
そんなにお金に困っているような感じはなかったんだけど……?
「そういえば先ほど『出現する魔物の種類はこの前の時と変わらない』っていう感じに言ってましたけど、フロアボスもですよね?」
「うん、そうだね。種類は変わらないよ。」
「……種類は?」
「そう、種類は。大きさや数は普通の冒険者でも討伐できるように僕が調整を加えておいたから、大丈夫!……あっ、そうそう!『変換期』が終わったからまた僕が管理できるようになったんだよ。これで『安心、安全』なダンジョンに戻せるよ。僕の望みは『沢山の人に来てもらって魔物を討伐してもらった時に発生する魔力や滞在してもらう時に少しずつ魔力をもらう』事だから、別に死んでもらいたいわけじゃないんだよね。」
俺の質問に答えたロックさんはニコニコしている。
「……そういえば気になっていたんですけど、ダンジョンの魔物ってどうやって発生してるんですか?ロックさんが出現させてるんですか?」
俺は前々から気になっていた事を聞いてみた。
なんかロックさんの話しぶりだと彼が出現の管理をしているって感じだから、もしかすると彼が出しているのかもしれないと思ったのだ。
するとロックさんはあっさりと「半分は当たっているけど、半分は間違っているかな」と言った。
「このダンジョンに出る魔物はね、僕では場所の指定とかは全くできないんだけど、さっきも言ったように出てくる数と大きさだけは調整できるんだよ。ただ『はい、少なくしました』『はい、小さくしました』となっても反映されるまでに少し時間かかるし、それまでに出ている魔物は消えていなくなるわけでもない。だから頑張って冒険者が討伐してくれないと困るんだよね。」
ロックさんは苦笑いをしながらそんな事を言う。
……なるほど、ダンジョンコアといっても万能ではないんだね?
すると急にロックさんはニヤリと笑い、俺に教えてくれた。
「実はね、僕はまだまだ若いダンジョンコアだからここまでの権限しかないけど、最古のダンジョンのダンジョンコアは魔物の出る場所や数、大きさだけではなく、多少の種類の変化もすることができるらしいよ?それも僕みたいに時間がかかるわけではなく、即座に切り替わるらしい。あとは地形の変化も直ぐにできるから、中にいる冒険者たちを迷わせたりすることもできるんだって。僕は冒険者と仲良くしたいからそんな事しないけど、彼はそんなに冒険者は好きじゃないらしいよ?だから最古のダンジョンに入る時は気をつけなね?」
ロックさんはそう言うと、俺に向かってウインクをした。
なるほど……最古のダンジョンは危険なんだね?
……あれ?
最古のダンジョンってどこにあるって言ってたっけ?
確かこの国とネシアの間の森って聞いたような……?
名前、確か『ブレイズ』だっけ?
「ロックさん、そのダンジョンの名前って『ブレイズ』って言いません?」
「ブレイズ?いや、僕はわからないな。君たちが勝手につけて呼んでいる名前に関しては、僕たちダンジョンコアは全く知らないんだよ。」
ロックさんはそう言って肩をすくめた。
なるほど、確かにね。
誰かから教えてもらわなければ俺も知らないしね。
……あれ?
さっきから別のダンジョンコアと話をしたことがあるような口ぶりだったけど、外に出られるの?
「ちょっと聞きたいんですけど、ロックさんはこのダンジョンから出たことあります?」
俺の言葉に首を横に振るロックさん。
どうやら外には出られないのかもしれない。
「じゃあさっきから最古のダンジョンのダンジョンコアと話したことがあるっぽい言い方していたのはどういうことですか?」
俺がそう言うと、合点がいったらしいロックさんは手をポンと打つ。
すると思いもしないことを告げた。
「なるほど、そこが気になったのか。そうだね、僕たちダンジョンコアはダンジョンから外に出ることは叶わないけど、連絡を取ることはできるよ?」
えっ!?連絡取れるの?どうやって???
俺の顔にそんな疑問が浮かんでいたのか、ロックさんは苦笑いだ。
「教えてあげたいところだけど、もっと仲良くなったらね?でも……なんで『最古のダンジョン』の事を聞いてくるの?」
今度はロックさんがこっちの事情を気になったらしい。
「実は俺の学校生活が終わったら、もしかするとそのダンジョンに行くことになりそうで……。ロックさんから聞いたことでちょっと怖くなったんですよ。」
「なるほど、それじゃあ気になるよね。分かった、僕の方からあまり変化をしないでくれるように頼んでみるよ。特に君はダンジョン初心者だからね。そこら辺もしっかり良い含めておくからね。」
そういったロックさんはニコニコ顔だ。
……ちゃんとお願いしておいてね、ロックさん?
そうじゃないと、ダンジョン初心者なのに連続で異常事態のダンジョンになっちゃうからね!?
俺は心の底からの願いとしてしっかりとお願いしておく。
ロックさんも俺の真剣さが伝わったのか、何度も頷いてくれた。ホント、頼みますよ?
それから俺たちはもう少しお茶会を楽しみ、ダンジョンをあとにする。
帰り際にロックさんが『お土産』としてそのフロアにあった鉱石や宝石をたくさんくれた。
お礼に俺からも『手作りごはん』を渡し、お互いにホクホク顔だ。
ダンジョンを出ると、俺たちはダンジョンを振り返る。
またね、ロックさん。
今度はまた別なお土産を用意していくね!




