303、まぁ……驚くよね!
ギルドマスターと一緒にギルドの奥にある解体場へと向かった俺達。
一旦はギルドの奥にあるドアを開けて外に出て、その奥にかなり大きめの体育館並みの建物があるのが見えた。
その建物は日本の体育館みたいに大きな開口部があり、現在はそのスライド式の扉は開けられたままになっている。
中では巨大なキッチン台みたいなテーブルがいくつもあり、そのいつくかは現在職員が解体している最中のようだ。
俺達はその横を壁沿いに通り、広くスペースの設けられている一角へと向かった。
「じゃあここにそのドロップ品を出してくれるか?」
ギルドマスターはそう言ってその広いスペースを指差す。
だが、そこに置けるのはせいぜいフォレストアントの外殻と熊の爪くらいのものだ。
熊の皮は大きすぎて畳んでも無理じゃないかな?
「ギルマス、このくらいのスペースじゃフォレストアントの外殻の一部ぐらいは置けるが、熊の皮は無理なんじゃないかな?」
リッキーが苦笑いして、俺の代わりにそう言った。
するとギルドマスターは訝しげな顔で口を開く。
「えっ?熊だろ?そんなでかい熊なんてあのダンジョンにいたか?」
「あのダンジョンの『変換期』に出てきたやつだから、通常とは異なった魔物ばかりだったぜ?まぁ……数も半端なかったがな。」
そんなリッキーの返答に首を傾げながらも「まぁ、ここに出してみろや」と言うギルドマスター。
俺は言われた通りに、まずはフォレストアントの外殻を次々と鞄から取り出して積んでいく。
まずは余裕で見ていたギルドマスターの顔が徐々に驚きの顔になり、途中から開いた口が塞がらなくなった。
「……ちょっ、待てよっ!なんだ、この数っ!?一体あのダンジョンでは何があったんだ!?」
ハッとした顔で意識の戻ってきたギルドマスターがリッキーとスコットさんにそんな事を言う。
「何があったも何も、『変換期』だったって言ったろ?ものすごい大量の魔物が出たんだよ。で、これは5階層のボス部屋で手に入ったものだ。この他にもクイーンの体全体がドロップ品だった物もある。まぁ……それはちょっと事情があって腹の部分は見せられないんだけどな。」
「なんだって!?この数の普通のアントの他にクイーンまでいたのか!?俺はこれで2度目の『変換期』だが、1度目はこんな事はなかったんだがなぁ……。」
ギルドマスターは眉間にしわを寄せながら目を瞑って考え出した。
「まぁ俺たちも相当びびったがな、最初見た時。一瞬途方に暮れちまったくらいだ。まぁ、新しい仲間が魔法が得意だったから助かったが、元々の俺達だけじゃ帰還するのも厳しかったんじゃないかって思わせるようなことばかりだったぜ。」
リッキーが肩をすくめてそう言う。
……確かに、あの量の魔物は一瞬途方に暮れるよね。
「ところでその熊の魔物の皮ってのはどれだ?まだ出してないのか?」
ギルドマスターがそんな事を言いながらフォレストアントの外殻を持ち上げたりしている。……いや、まだ出してないって。
俺はそんな彼の近くに行き、熊の皮を鞄から引っ張り出していった。
「おっ、これがお前達の言う『熊の皮』なんだな……って……えっ?まだ出し切らないのか?……はぁ!?なんだそりゃっ!?」
ギルドマスターは俺がどんどん鞄から引っ張り出していくのを見て、フォレストアントの外殻の数以上に驚いたようだ。
そして場所が狭すぎて半分も出せないでストップしたところ、驚きで声が出なくなってしまったらしい。
「な?確かに熊の皮だろ?」
するとそのリッキーの声に、ギルドマスターはグリンと音がしそうな勢いで顔を向ける。
「何が『なっ?』だよっ!なんだ、あの大きさ!?あれでまだ全体が出てきてないんだろ!?一体どんなでかい熊だったんだ!?」
「えっとぉ……あの建物くらい?」
ギルドマスターの問いかけに答えたのはユーリだ。
しかも指をさしているのは先ほどまでいた冒険者ギルドの建物。
……確かにでかかったけど、あそこまでは……いや、あるな。
するとそれを聞いたギルドマスターはぽかんとした顔で建物を見ている。たぶん想像が追いつかないんだろう。
そんなギルドマスターの肩をスコットさんがポンポンと叩くと、ハッとした顔でそっちを見た。
そして困惑した顔で「……本当か?」と聞き、頷かれると今度は絶望した顔になる。……え?どういう心境?
「……なぁ、このボスでこれから定着するなんてことにほならない……よな?」
ギルドマスターは恐る恐るそんな事を俺達に向かって言う。……ああ、そういう事?
「いや、それはちょっとわからないな。いま軍がその事を調査しているんだろう?もうすぐその結果が出るって聞いたが?」
「ああそうだったな。まだ調査中だった。いや、びっくりしすぎてすっかり頭から抜けちまったぜ。ところでさっき『熊の爪』も出すって言ってたけど、見ても良いか?さすがに熊の皮は全部は買い取れそうにないんだが……ハサミでは切れるのか?」
ちょっと心配そうにそう聞いてくるギルドマスター。
あ……それはちょっとよくわからないな。
やっぱり魔力コーティングしてないと切れなかったりして?
もしだったら魔力コーティングのやり方を教えておく?
俺がそんなことを考えていると、リッキーから「大丈夫だって、気にするな」と言われた。
あ、爪出してなかったね!
俺は慌てて熊の爪を取り出す。
……改めて見るとでかいな。
俺はギルドマスターに短剣とショートソードの間ぐらいの長さがある熊の爪を渡した。
「……おい、これは一体何だ?」
顔を引き攣らせたギルドマスターがリッキーに問う。
もちろんリッキーは「ん?熊の爪だ」と言った。
その瞬間、ギルドマスターはその爪を手に持って自分の手と見比べ、目を瞑ってしまった。
「……まぁ、言いたいことは分かる。つまりそれだけの巨大な熊だった、ってだけだ。リーシェさんに言わせると『魔法で倒す』って言っていたから、それなら楽勝なのかもな?」
リッキーは慰め?の言葉をギルドマスターに伝え、肩をポンポンと叩く。
そうだよね、皮だけじゃなく爪も相当な大きさがある。
どれくらいの大きさなのか分かるってものだ。
俺達はよくあの魔物を魔法ではなく物理攻撃で倒せたよね。
さすがに魔力コーティングがなければ無理だったんだろうけど、凄いことなんだろうね!




