206、ただいま!
あの後、俺はラーシェさんに世界樹の葉と雫から作られた薬のお礼を言って、スノービークにある俺の部屋へと転移した。
スノービークの俺の部屋に転移すると部屋にはまだ誰もおらず、耳鳴りがするんじゃないかと思うくらいしーんと静まり返っている。
なんだかその状態がとても寂しくて俯いてしまったが、その時胸元にいるゼフィアと目が合った。
俺と目が合うと、ゼフィアは尻尾をブンブンと振りつつ顔を舐めてくる。
「お前を俺のチームメンバーやユーリとセバスに会わせたら、みんな、どんな顔するんだろうなぁ〜。」
俺はそんな事を考えながら思わず呟いた。
するとそれを聞いていたゼフィアは不思議そうな顔で首を傾げると「くぅ〜ん」と鳴いた。
「ますたーのなかまはそんなにいるんですか?」
「ああ、後で紹介するが、俺は『スノーホワイト』っていう冒険者チームに所属していて、そのメンバーは俺を含めて5……いや、7人か?ユーリとセバスは正式にチームメンバーに入ったんだったっけ?」
「そんなにいるんですか!それはにぎやかそうで、たのしみです。」
そう言うと、ゼフィアは嬉しそうに尻尾を振りまくった。
……犬系の魔物とかってよく感情が尻尾に現れるよな。
あ、犬系だけじゃなくて猫系も、確か獣人は感情現れやすかったかも?
とりあえず俺とゼフィアは一緒にベッドに倒れ込むと、いろいろあったことの疲れからかあっという間に夢の国へと旅立った。
ふと何かに顔をしきりに舐められている感じがして目を覚ますと、尻尾を振って俺の顔を舐めているゼフィアのどアップが目に入る。
「いつの間にか眠っていたようだな。ゼフィアはずっと起きていたのか?」
ゼフィアは俺の問いに、横に首を振る。
「いえ、ちょっとまえにおきたところです。」
「そっか、少しは休めたようで良かったよ。」
俺はそう言うと、部屋の中を見回す。
……うん、やっぱりまだ帰ってきてないね。
帰ってきてなくて少し残念な気持ちとゼフィアを見た時のユーリの反応が心配な気持ちがせめぎ合っているが、いつかは会うことになるんだからこればかりはしょうがない。
俺は床にゼフィアを下ろすと、ゼフィアは部屋の中を探検するようにあちこち歩き回っては匂いを嗅いでいる。
ここには俺以外にも色々な人が出入りしているから、いろんな匂いがするんだろう。
一通り匂いを嗅いで戻ってきたゼフィアを両手で抱き上げた時、部屋のドアが開いた。
「おっ、帰って……って、そいつはどうしたんだ?どこで拾ってきた?エルフの里に行ってきたんじゃないのか?」
ゼフィアを見つめながらリッキーがそう言った。
「ただいま、リッキー。夕方になる前にこっちに帰ってきていたんだけど、疲れ果てて寝てしまっていたようでね。あ、この子はゼフィアっていう名前で、俺の新しい契約獣だよ。」
「マジか?その真っ白い子犬、いったい何の魔物なんだ?」
契約獣と聞いてリッキーは首を傾げた。
そりゃあそうだろう、見た目まんま手乗り子犬くらいだもんな。マジで小さい。
そんな小さくて白い犬、フェンリルには見えないよ。
とりあえず俺はエルフの里に行った後の出来事をリッキーに話して聞かせた。
その間、ゼフィアはリッキーのところに行って匂いを嗅ぎ回っている。
俺と仲が良さそうだと判断したので、匂いを覚えようと思っているのかもしれない。
「なるほどなぁ……でも流石にコイツがフェンリルの子供だなんて考えも及ばなかったぜ。俺の中でフェンリルって相当デカい狼って認識だからな。こんな手乗りの狼なんて誰もフェンリルだなんて思わねぇよな。」
「まぁね。だから暫くはうちのメンバーのマスコット的な感じでも良いかなって思ってる。ただ、2年で大人並みの大きさになるらしいから、超大型犬より大きくなってきたら正式発表するとして、それまではルーシェさんだけわかる感じにしておいたほうが良いと思うんだけど……どう思う?」
「確かにな。こんな小さいうちにフェンリルだって正式発表すると誘拐される可能性が高いもんな。俺はシエルの案で良いと思うぞ。」
そう言って、リッキーは俺の案に賛成してくれた。
他のメンバーにも近々会わせに行こうと思うが……姉さんは好きそうだな、この手の生き物。
可愛いの大好きだもんね。
もしかしたら自分に懐くかもってずっと抱っこしていたりして?……ありえそうだ。
なにはともあれ、リッキー達4人には大歓迎されそうでよかったよ。
……問題は、ユーリたちの方かな。
気持ちよく受け入れてくれればいいけれども……。
俺はそんな気持ちを抱えながら、夕飯だからと呼びに来ていたリッキーと一緒に食堂へと向かった。




