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悪の華に口づけ~正義の味方が女幹部に恋をした~  作者: 依馬 亜連


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14:正義の味方の誤算と言葉攻め

 戦闘中にこっそり撮影した、ベルフラワーの写真をホーム画面にして早一年。

 あまりにもそれに見慣れ過ぎてしまった結果、油断したのが命取り。

 本人に知られてしまったのだ。最悪の事態である。


 蛍は泣き出しそうな声で、

「私のことを、どう思っているのですか?」

と問い詰めて来た。当然であろう。


 しかし疚しい気持ちが多分にある樹は、その真っ直ぐな目を見られなかった。


 結局楽しみにしていた買い物は、そこでご破算。険しい表情を浮かべる蛍は、無言でエスカレーターを下り、そのまま帰って行った。

 いや、彼女は自分の真意を問い続けてくれたのだ。無言を強いたのは、樹の弱さが原因である。

 気まずさを残したまま週末を終えた樹は、その後、打撲した左腕の治療も無事終了した。


 そして蛍へ謝罪も出来ぬまま悶々と過ごしている内に、とうとう「職場」で、彼女と出くわしてしまったのだ。最悪の流れである。


 予期せぬ再会は、樹を負傷させた、例の武器商人とつながりのある、某企業の社長宅を訪問した時のことであった。


 先んじて、社長に仕置きをせんとするキング一味が乗り込んでいたのだ。

 キング一味のロボット兵──今回は、マシンガンを装備している。なんという物騒さであろうか──と、デューク・ハイドランジアが臨戦態勢に入る。


 樹と蛍の関係を知り、二人が現在険悪だということも薄々感付いているジュエルレッドとホワイトは、武器を構えつつも遠慮があった。


 そしてグリーンとプリンセス・ベルフラワーの間に、異様に殺伐とした空気が漂う。

 自身の得物であるダガーをファセット・ブレスに戻し、あまつさえ両手を挙げ、グリーンは戦意がないことを示す。


「あー、ベルフラワーさん? 僕らも、そこで簀巻きになってる社長さんを、逮捕しに来たんよ」

「……」

「お仕置きしたい君らの言い分も分かるけど、今回は僕らに預けてくれへん? ちゃんと裁判所でお仕置きしてもらうか──」

「うるさい」


 淡々としたいつもの口調とは異なり、怒気をはらんだ声が、グリーンの提案を強引に切り捨てた。

 菫色の瞳も、怒りで爛々と輝いている。


「ペチャクチャうるさいのよ、緑膿菌。あなたたちと馴れ合うつもりはありません」


 一瞬で場が凍り付く。

 初めて聞く言葉攻めに、ジュエルナイツだけでなく、ハイドランジアも絶句した。仮面越しにも、青ざめているのがよく分かる。


「ベ、ベルフラワー殿? いかがされた?」

「どうもしていません」

「そんなわけないでしょ……ないでござろう! どこでそのような悪口を覚えたのだ!」


 戦闘中ということも忘れ、ハイドランジアががくがくと、ベルフラワーの肩を揺する。

 よほどショックだったらしい。


 一方の、緑膿菌呼ばわりされたグリーンは呆然と、固まっていた。その彼へ、レッドがこっそり耳打ち。

「これは、新しいファンが付きそうっすね」


 労わっているようで、面白がっている口調だ。そんな彼を、ホワイトが無言で殴った。


「ホワイトひどい!」

「酷いのは、あんたの方だ!」


 簀巻きの社長を忘れ、あっちでもこっちでも口論が飛び交う中、グリーンは囁き声で呟いた。


「……嫌や。好きな子がS嬢になるとか、嫌や……」

 それも、自分がうっかりホーム画面をさらしてしまったばっかりに。


 キング一味の謎の科学力で、タイムマシンを作ってはもらえないだろうか、と現実逃避しながら考えた。

 そうすればホーム画面を、蛍の次に好きな、メインクーンの写真とすげ替えることが出来るのに。

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