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侵略者  作者: 京衛武百十
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リビング

「イレーナ、イレーナ、イレーナ……!」


何度も娘の名を呼び抱き締めて頬を寄せるベリザルトン夫妻とは対照的に、知った名前を耳にしたイリオが家の中から出てきて、


「あ、イレーナ」


と、まるで友達でも見かけたかのように何気ない感じでその名を口にした。


「知ってるの…?」


横に並んだキリアが思わずそう問い掛けると、


「うん、おねえちゃんのともだち。あのこ、ブロブなんだよ」


と平然と答えた。


「ブロブ…!? あの子が!?」


普段はあまり他人に関心を持たない筈のキリアの口からそんな言葉が漏れる。キリアもブロブに対しては興味を抱いていたから。


その時、カール・ベリザルトンがハッとした表情を見せた。イレーナの背後に現れたものに気付いたからだ。


「ブロブ…」


夫の声に気付いて夫人もブロブに気付く。その顔には怯えの表情も浮かんだが、そんな母にイレーナが静かに語った。


「お母さん、大丈夫だよ。私、お父さんのこともお母さんのことも大好き。もう、お父さんやお母さんを悲しませることしない」


それは、ブロブと融合し、ブロブの感覚も身に付けたイレーナとしての言葉だった。そんなイレーナの言葉を補足するように、マリアンが語り掛ける。


「ブロブは、他の生物と融合することができるんです。これまで捕食だと思われていた行為は、単なる栄養補給ではありませんでした。他の生物の遺伝子をはじめとしたすべての情報を取り込むことこそがブロブの生態だったんです。イレーナは<食べられた>のではなく、ブロブと<一つになった>だけなのです」


マリアンの言葉に、カールは戸惑う表情を見せながらも冷静だった。


「何と言うか、すぐには信じられないというのが正直なところだけれど、この子は確かに私達の娘だと感じます。そして、今、この子がブロブと繋がっていることも事実のようだ。もっと詳しい話を聞かせてほしい。とにかく家に入ろう」


そして皆で、リビングに集まり、改めて状況を整理することになった。


マリアンがイレーナに声を掛ける。


「イレーナ、服を少しまくって、あなたの体を見せてあげて」


そう言われてもイレーナは躊躇うことなく、彼女には少し大きかった服の裾をまくってみせた。そこにあったのは、まるで透明な氷の彫刻のように透き通った体だった。それを目の当たりにし、夫妻が改めて息を呑む。


「御覧の通りです。顔については私のファンデーションで肌の色を再現してますが、体の方は私の服を着てもらっているだけです。今のイレーナは間違いなくブロブでもあります。でも同時に、お二人の娘さんのイレーナでもあるのです」



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