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侵略者  作者: 京衛武百十
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親子

「これは驚きだ……」


イレーナを前にしたカール・ベリザルトンが呟く。


皆でリビングに集まり、明るいところでよく見ると、『顔については私のファンデーションで肌の色を再現してます』とのマリアンの言葉通り、ファンデーションを使えない目については、確かに透明だった。


けれど、


「心配させてごめんなさい」


と話し掛ける彼女の声も話し方もイントネーションも、まぎれもなく娘のイレーナのものだった。ブロブが娘の真似をしているとか、そんなレベルではない。体が透明なことを除けば完全にイレーナなのだ。


それは夫人のレベカ・ベリザルトンの実感でもあった。彼女を抱き締めたその感触も、忘れもしない愛しい娘のそれだった。


「イレーナ……ああ、イレーナ……!」


改めてレベカは感極まって何度も娘の名を呼びながら泣いた。するとイレーナも、


「お母さん、お母さん…!」


と、母に縋りついて泣いた。ブロブと融合したことで薄れかけていた人間としての感情が、母に抱き締められたことで蘇ってきたようだった。


そんな様子を、マリアンとベルカ、そしてキリアとイリオが見詰めていた。


マリアンは、予想以上の素晴らしい結果に静かに興奮していた。まさかここまでベリザルトン夫妻の器が大きいとは。自らの見る目がまだまだ甘いと痛感もさせられた。


ベルカは、自分の不安が杞憂に終わったことを素直に喜んでいた。この素晴らしい人達が救われたことで胸がいっぱいになって、涙が抑えられなかった。


キリアは、ブロブという生き物が、自分が聞かされていたものとはまったく違っていたことに改めて強い関心を寄せずにはいられなかった。しかもこんな身近で見られるなんて。


イリオは、さすがにまだ幼いだけあってこの状況をあまりよく理解していなかった。ブロブが人間にとって優しい生き物だというのも彼にとっては当たり前すぎて、何をそんなに驚いてるのかがピンとこないというのもあるだろう。


とは言え、ベリザルトン夫妻はこうしてブロブと和解できたかもしれないが、人間のブロブへの恐怖感や嫌悪感や憎悪はそれほど簡単なものではない。目の前の光景にむせび泣きながらも、ベルカの胸の中には次の心配が頭をもたげてきていた。


『村の人達が全員、ブロブを受け入れられるんだろうか』という不安だ。


だがそれは、さほど心配要らないだろう。何故なら、ブロブが大量発生した際には、ベルカと、皮肉なことにエクスキューショナーの活躍によって危機を脱したことで、フォーレナの住人にはベリザルトン夫妻以外にブロブによって家族を喪った者はおらず、また、ブロブを含めたファバロフの環境そのものを受け入れようというベリザルトン夫妻の理念に賛同して開拓に参加した者達ばかりだからだ。


当然、一部には恐れる者もいるだろうが、しかしそれはあくまで危険な猛獣を恐れるそれであり、決してブロブへの憎しみではないのである。



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