通話
マリーベルが一緒に暮らしているヌラッカ以外のブロブを見るのは久しぶりだった。それほど、今ではブロブの方が人間を避けているのである。
久々の野生のブロブとの遭遇に、マリアンは興奮さえ覚えていた。しかしそれは決して敵意や害意ではない。それが伝わるのか、ブロブの方も逃げようとはしなかった。大きな獲物を抱えて動くのが面倒だというのもあったのかもしれないが。
そしてマリアンは、この機会を活かし、一つ試してみたいことがあった。
「ねえ、マリーベルに連絡は取れない?」
まるで人間に話しかけるように彼女はブロブに話しかけた。
「マリーベルよ。分かる? マリーベルに連絡を取りたいの」
なるべく穏やかに、柔らかく声を掛ける。しかし、ブロブの方からは特に反応はない。
『さすがにそれは……』
マリアンの意図を察したものの、いくらなんでもそれは無理だろうとベルカが思っていると、不意にブロブがフルフルと体を震わせ始めた。
「!!」
万が一に備えて、ベルカが麻酔弾を装填したハンドガンを構える。だがその彼女の耳に届いてきたのは、聞き覚えのある声だった。
「もう、ブロブに敵意を向けるなって言ってるじゃん。説得するの大変なんだよ」
「…え!?」
唖然とした顔になるベルカに対し、マリアンの表情はぱあっと明るくなる。
「マリーベル! マリーベルなのね!?」
そう。二人の耳に届いたのは、マリーベルの声だった。見ると、ブロブの体の一部が変化して、唇の形になっている。それが動いて声を発しているのだ、しかも、目と思しきものも見える。ブロブの体に目と口を再現してそれで見、口で言葉を話していたのだった。
「マジかよ……」
これにはベルカも驚くというか呆れるというか。
「まったく、でたらめな生き物だな……」
それが正直な印象だった。まさかこんなことまでできるとか。しかしマリアンもよくこんなことを思い付くものだとも感じた。と言うか、普通は思い付いても試そうとまでは思わないだろう。突拍子もなさ過ぎて。言い方を変えれば発想が子供っぽいのだ。
だがマリアンの発想は、ベルカの想像のはるか先を行っていた。
「ねえ、マリーベル。この子にイレーナを呼び出すことってできる?」
「…は……?」
マリアンの意図が理解できずにベルカが呆然としてる前で、マリーベルと繋がったブロブが応える。
「…まあ、できなくはない、と思うけど。なんで?」
怪訝そうな声色で問い掛けるマリーベルに、マリアンはとんでもないことを言い出したのだった。
「イレーナを、ベリザルトン夫妻に会わせたいの」




