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侵略者  作者: 京衛武百十
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検討

「それでは、よろしくお願いします」


ベリザルトン夫妻にイリオを預けたマリアンとベルカは、その足でマリーベルのところへと引き返していた。ベルカが語ったアイデアを再度検討する為だ。


ブロブに関する事件の発端となった、開拓団の代表であるウォレド氏を呼び出し、人間に語り掛けてもらうというアイデアを。


正直な印象としては上手くいく予感はない。しかし、自分よりは一般人の感覚に近いであろうベルカの感性を無視するのも必ずしも合理的とは思えなかった。結果としてはやはり無理という結論にはなるかもしれないが、検討もせずに決め付けてしまうのも好ましくないだろう。


今はとにかくあらゆる方策を探りたい。


走りづめではあったが、ベルカも殆ど疲れは感じていなかった。今は自分にできることをしたいと思っていたからだろう。


とは言え、考えてみればブロブハンターだった自分がこうしてブロブの為に奔走するというのも皮肉な話ではある。しかし、事実を知ったことで翻意するということは決して恥ずかしいことではない。むしろ事実を知ってもなお妄執に囚われることの方が恥ずべきことなのだろう。


もうすっかり日も暮れて、舗装もされていない林の中の仮設の道路をワゴンを走らせていたベルカが突然、ハッとした表情をした。そしていきなりブレーキを踏む。


「な、何!? どうしたの!?」


急なことにつんのめったマリアンが驚いて声を上げる。ベルカに運転してもらっておいて助手席で寝るのは申し訳ないと思って何とか眠らないようにはしていたものの殆ど意識が飛んだ状態だったのが一気に覚醒した。


「ブロブがいる……」


ベルカの言葉に「え?」と正面に向き直ったマリアンの目にも、道路の脇でうねうねと蠢くものの姿が見えた。間違いない、確かにブロブだ。最近ではブロブの方が人間を避けるようになっているので、道路などの人間の痕跡を感じさせるようなところには自主的には現れなかった筈だが……


よく見ると、透明な体の中に何かの影が見える。動物だ。人間ではない。マリアンの頭によぎるものがあった。この辺りは鹿に似た大型の動物の生息地でもある。おそらくこのブロブはそれを追ってここに現れたのだろう。


マリアンは躊躇うことなくワゴンを降り、ブロブへと近付いていった。ベルカもそれについていこうとするが、マリアンは手の平をかざしてそれを制した。


「大丈夫。私に任せて」


以前よりはブロブに対する敵意も薄れたとはいえ、ベルカはまだ完全には警戒を解けていない。それに反応されて逃げられるかもしれないと思い、マリアンは敢えてベルカに近付かないように指示したのだった。



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