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侵略者  作者: 京衛武百十
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過去

「私の父もね、ロクでもない人間だったんだ……」


イリオを連れてベリザルトン夫妻の下に向かう車内で、マリアンが不意にそんなことを口にした。


「……」


ベルカは応えなかったが、それは彼女も何となく察していたことだった。キリアの件の時に、『この手の修羅場には慣れている』というようなことを言っていたのを考えると、身近でそういうのを目の当たりにしてきたのだろうなとは思ったからだ。


マリアンは続ける。


「父は科学者だったけど、どちらかと言えば自分の研究に心を奪われたマッドサイエンティストって感じだった。自分の研究の為の実験台に、私と母を使ったりしたのよ。


私のこの体も、父の実験の所為なの……」


「…!?」


『父親の実験の所為でこの体になった』というマリアンの告白には、さすがにベルカもギョッとした表情になった。単なる発育不全の類かと思っていたのだが、そうではなかったのか。


「父の研究は、まあ手っ取り早く言えば不老不死の実現なのよね。その為に父はまず、老化を抑制する研究を始めたみたい。で、その為の実験台として、父は私と母を使った。遺伝子操作によって老化を抑える実験だった。


私のこの姿は、その実験が行われた時から殆ど変わってないの。そういう意味では成功だったんでしょうね。その代り、私は子供を生めない体になったみたいだけど……


初潮がね、まだ来ないんだ……」


「……」


言葉もなく耳を傾けるベルカに対し、マリアンはなおも続けた。


「この姿になってもまだ来てなかったくらいだから元々遅れてたんでしょうね。そういう意味では父の実験の影響なのかどうかははっきりしないけど、この年齢になっても来てないのは事実なの。病院で検査も受けたけど、原因は不明。健康なのは健康だから、単に肉体の成長がまだそこまでいってないってことなのかもね。検査した医師も驚いてたわ。『これが老化抑制の為に行われた結果だとしたら、成功なのかもしれない』ってね。


でも、父は違法な人体実験による殺人の罪で逮捕された」


「!?」


「父の名はガリオン・クレイセット。私が今名乗ってるルーザリア姓は母の姓」


「……それ、ニュースで似た覚えがある……子供だった私でも覚えてるくらいだから、結構な騒ぎになった事件だよね」


辛うじてそれだけを口にしたベルカに、マリアンが苦々しく笑った。


「でしょうね。違法な人体実験で自分の妻を怪物に変えた上に死なせたんだから……」


それは、当時、狂った科学者による狂気の実験として世間を震撼させたものであった。



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