対面
『私、なんでOKしたんだっけ…?』
突然現れて、自分を雇ってほしいと言い出したシェリルと名乗る女性とテーブルを挟み、フィはそんなことを考えていた。
食事を奢るから話を聞かせてほしいと言われてついOKしてしまったが、何故OKしてしまったのか自分でもよく分からなかったのだ。
ただ、必死になっている彼女の姿を見た時、何だかすごく幼く見えてしまった気がした。その所為かもしれない。
『最近の私はどうかしている……』
そんなことも思う。
彼女の頭の中には、二人の少女の姿がよぎっていた。
一人は、廃プレハブでヘビやトカゲを飼育していた、両親に愛されずに育ったキリアという少女。
もう一人は、自分と同じく人間をはるかに超越した身体能力を持ち、しかしブロブと行動を共にしているらしく自分が狙いをつけたブロブを庇って右手を失い瀕死の重傷を負いながらも『<これ>は私のものだ。誰にもやらない!』と立ち塞がった名前も知らない少女だった。
どちらも、自分が今の体になった頃とさほど変わらない年頃の少女だったことで、ある種の親近感を感じてしまったのかもしれない。
しかも、キリアはこんな自分を『キレイ』とまで言ってくれた。
こんな醜い姿の自分を……
シェリルを前にして、フィは自分の体を隠そうとさらにフードを目深に被り、コートの襟を立てて顔を隠した。目は、大型で最も色の濃いサングラスをかけているからこれで見えない筈である。さらには小さなレストランの奥の隅の席で他の席に背を向けた状態で座ってもいる。それでもどこか不安になってしまい、居心地が悪い。
やはり一緒に食事などOKするべきではなかったと思うが、後の祭りである。
そんなフィに対し、山盛りのスパゲティを食べながらシェリルが問い掛けた。
「それで、フィさんはブロブが嫌いで駆除業者とかしてるんですか?」
殆ど前置きらしい前置きもない、ストレートな質問だった。そういうところがまた子供っぽくて幼く感じる。
「そうね……嫌い、と言うか憎い。私の両親を殺して、私をこんな体にしたブロブが憎い……」
彼女を相手に変に持って回った言い方をしても無駄だと感じ、フィは素直に気持ちを吐露した。キリアの時と同じだった。
すると、自分を見詰めるシェリルの目に涙が一杯に溢れてきてるのが見えた。それがまたあまりに一瞬のことだったので、フィは思わずギョッとなってしまった。
「ですよね…! 分かります……!! 私も同じです!」
フォークを握り締め、シェリルは涙声でそう言ったのだった。




