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侵略者  作者: 京衛武百十
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治療

「プリン、分かる? 虫歯よ! この穴が開いてる歯を食べちゃってほしいの。それで新しい歯を作って!」


口を大きく開けて痛む歯を指差しながら、シルフィはプリンに向かってそう言った。しかしプリンは戸惑うように体をフルフルと震わせる。


「お願い! プリン!」


ぐいぐいと迫るシルフィに、やがて根負けしたかのようにプリンが触手を伸ばし、シルフィの口の中に触れた。


普通ならブロブはここまで人間の言うことに従ったりしない。そもそも人間が何を望んでいるのか、感覚が違いすぎるブロブには理解できないのだ。だから特定の歯だけを食べて代わりを作るなどという細かい指示は伝わらない。


だが、今回は事情が違った。相手がプリンだからこそそれが通じてしまった。シルフィの両親を取り込んだプリンだからこそ。


『仕方ない……確かに今の状態では歯医者には行けないからね……』


プリンの中でシルフィの両親の思考が働いていた。故にしっかりとシルフィの指示通りに虫歯になった歯とその神経を食べた。


しかし、その痛みはシルフィの想像以上だった。とは言え、歯と神経を消化されるのだから当然と言えば当然だろう。


「あ……が、あぁああぁぁーっっ!!」


口を大きく開けてプリンの触手を受け入れたまま、シルフィは悲鳴を上げた。痛みが奔ったのはほんの数秒だっただろうが、その激痛は大人でも泣き出すほどだった筈である。


さりとて途中で止める訳にもいかず、彼女にとっては長い長い数秒間を経て、痛みは突然、嘘のように消え失せてしまった。


「え……あ、痛くない…」


痛みが治まったことに気付き、シルフィは「は~…」と長い溜息を吐いた。すると、寄り添っていたプリンから何とも言えない感覚が伝わってくる。


「あ、うん。もう大丈夫。痛くないよ」


と応える。言葉ではなかったが、プリンが自分を労わってくれているのが分かったのだ。それに気付いて彼女の顔がパアッと明るくなる。


「すごい! プリンの気持ちが分かるよ!! ありがとう、心配してくれたんだね。シフォンも!」


そうだった。プリンが歯の神経と同化したことで、シルフィとの回路が繋がったのである。完全に消化してしまった歯は、プリンの一部で再生した。なので、歯の一本が透明になってしまっていた。


無茶な思い付きではあったが、完全な成功だった。


ただし、全身を同化されかけたマリーベルとは違い、肉体的には殆ど強化はされていない。精々、口のあたりの免疫や再生力が高まり、口内炎や歯周病や虫歯にならないようになった程度だろう。


それでも、これでいつでも両親と会えるようになったのもまた事実であった。



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