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侵略者  作者: 京衛武百十
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結末

マリーベル、フィニス、シェリル、バレトらが一堂に介したその戦いは、人間とブロブのトラブルの中では非常に些細な出来事だったかもしれない。殆ど誰にも知られず、記録にも残らず、ただ歴史の闇に消えていくだけのものだった。


だが、それが人間とブロブの関係性が変わっていく一つの転機となったこともまた、事実なのだろう。


機能停止したパワードスーツからバレトやネドルにより救出されたカルシオン・ボーレは、その場で詳細な事情を聞かされ、大きなショックを受けていた。自身がどれほどの大きな犠牲を生んだかということもそうだが、ブロブという生物の真実に彼は大きな感銘を受けたらしい。


皮膚が透明になってしまったが為に醜い怪物のようになってしまったフィニスとシェリルの為に、彼が経営する会社の一つが持つ美容技術を応用し、その姿を普通に近付けることを、<ある条件>と引き換えに提案してくれた。


その方法は、生物の皮膚に任意の色素を半永久的に定着させる技術で、それを用いれば透明な肌が普通の人間の肌のようになるとの話だった。


人間の肌とブロブの組織では勝手が違った為にすぐには上手くいかなかったが、約半年の研究の後、見事それは成功したのだった。


「…これが、私……?」


十二歳の頃の彼女の写真を基に再現された肌の色に戻った自分の姿を鏡で見て、フィニスは涙を浮かべながらそう呟いた。髪も、本来の彼女の髪色を再現している。


髪の生え際や爪などはさすがに不自然さも残ったが、それはヘアカラーやマニキュアなどを使うことでカバーできた。


もちろんシェリルも同様である。


ただ、マリーベルは、『私はこのままでいい』と断った。


なお、これらの処置の対価としてカルシオン・ボーレが要求した<条件>とは、パワードスーツの暴走が自分の責任ではなくブロブに乗っ取られたからだというのを証言して欲しいというものだった。ただそれも、単に自らの責任を逃れたい為ではなく、あの惨劇を正しく評価してもらう為のものであった。


結局、十七名の死者、二十三名の重軽傷者を出した荷電粒子砲の暴発事故に関する過失責任を問われたカルシオン・ボーレは、執行猶予付きの有罪判決を受け、彼が代表を務めていた企業を整理して資金を確保し、亡くなった者達や負傷した者達への補償に充てられた。


彼は表舞台から姿を消したが、それでも再起を目指して今は雌伏の時を過ごしているそうである。


そしてあの事件から七ヶ月が過ぎた頃、フォーレナの村長、カール・ベリザルトンの家の前に、一人の女性が現れたのだった。



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