二章2-7 味方最強の敵(3)
コルネリウスの剣を捌くウルは遠くアンジェリカの方を見ていた。だがアンジェリカを見ていない。姿の見えないもう一人の王子を探している。
戦闘能力はないが戦闘を見える位置に必ず来ているはずのドミニクだ。いるとすればアンジェリカの近くにいるはずだが、見た感じいない。とすればこの場にはいないだろう。
ならばどこにいる、ウルは牽制の剣を振りつつ考える。
ドミニクの脅威は交友関係の広さだ。本人は意識して行っているようではあるが、彼の本質はすでに出来上がっているグループに抵抗されることなく入れることにある。強固に作られた他を排斥する集団ですら容易に溶け込むことができる力を持つ。
自由に動かれると厄介なことこの上ないが、しかしウルには好都合だった。
「何をするつもりですか?」
答えを期待せず問いかける。分かるものにしか分からないいだが、コルネリウスは答えた。
「知らん! 一つ言えることは、私も奴もアンジェリカのために動いているということだ! 私達は常にアンジェリカのために動いているのだ!」
「なるほど。ならば見逃がしましょう。聡明な方だ、間違いなど起こりますまい」
「当然! 奴は俺の天敵であり、妹が関わる限り信頼できる人間だ!」
ガキンと互いの剣が交錯して止まる。一瞬前まで競り合うこともできなかったウルの剣をコルネリウスが受け止めたのだ。成長というより、意地を見せた。
しかしすぐにウルによって弾き飛ばされる。
「では、私はドミニク王子を潰してしまうとしましょうか。王子が何をするかある程度予想はつく。ここは他に任せて行くとします」
「行かせません! それにあなたがいなければ私がここを押し通ります!」
「あなたがいればここは押し通られるでしょうな。では、あなたがいなければ?」
次の一瞬、コルネリウスはウルを見失った。ウルに全神経を傾けていたにも関わらず。
「御免」
コルネリウスの背が打撃される。どういった行動をしたのか、コルネリウスの背後に回り込んだウルがなしたことだ。
「あなたにはしばらく眠っていてもらうことにします。これでこの場は簡単には通れません」
「む……ねん……!」
その場に倒れ落ちるコルネリウスを置いて、二人の足音が離れていく。
二人。アンジェリカとルナの位置からは、ウルの影にもう一人立っているのが見えた。もう一人も見覚えのある顔だ。ウルが王宮に旅立った後から姿を見せなくなっていたがウルについていたとは。
ルナは知っていたが、アンジェリカは知らなかった。
「フェザーさん!」
「御機嫌ようアンジェ、元気そうでなによりです」
ウルがコルネリウスの背後に意識の外から回りこむことができたのは、フェザーが飛んで上から回ったのだ。本来飛べないはずの人間が飛ぶことでコルネリウスの意識から外れたのだ。
フェザーは挨拶だけ言うと、ウルを抱えて飛び上がる。
「なぜフェザーがウルと一緒にいるのですか!? どうして!」
「ルナがアンジェと一緒にいる理由と変わりありませんよ」
王宮の方へ飛び去るフェザーとウルをただ見送ることしかできない。飛べるような変異を持つものがいないうえ、ウルに唯一打ち合うことのできるコルネリウスが昏倒させられているのだから。
「ルナ、兄上を頼みます! あのままだと危険です!」
「わかった。誰かついてこい! アンジェはここを動かないでくれよ?」
革のベルトから両腕を引き抜いたルナが前線に駆け向かう。この時もアンジェリカは見ていることしかできなかった。




